"ここ"がイチ押し! 旬モノ実験室
Wi-Fi中継機がわずか8mm!? 目立たないからこそ電波も広がるTP-Link「Archer Air R5/E5」
2023年9月21日 11:30
TP-Linkから、見た目のインパクトがすごいWi-Fiルーターと中継機が発売された。
一見、ただの白い板やタイルのように見えるが、その実態は2402Mbps(5GHz)+574Mbps(2.4Gbps)対応のWi-Fi 6ルーター(Archer Air R5)と中継機(Archer Air E5)だ。IPv6 IPoE対応、EasyMesh準拠、セキュリティ機能搭載と機能も充実しているが、何と言っても薄く、シンプルに背景に溶け込むデザインが魅力的な製品となっている。
何かと押しの強い海外メーカー製らしからぬ製品に仕上がっているが、このデザインは意外に「実用性」を高めることにもつながっている。今回はこの点に注目する。
◆Archer Air R5/E5のイチ押し!
「目立たない美しさ」によって生まれる良好な電波環境
デザインがいいから、電波がよく届く場所に置きやすい
TP-LinkのArcher Air R5/E5の最大のポイントは、その薄さだ。Wi-FiルーターのArcher Air R5は最厚部が10.8mm、中継機のArcher Air E5は厚さ8mmとなっている。
従来の一般的な製品では、比較的コンパクトなものであっても、その厚さはWi-Fiルーターで40mmほど、中継機で30mmほどというのが常識だった。しかし、本製品は、これらの1/4、1/3ほどの薄さしかない。
実際に手に持つと重量も軽く、つまんだときにはあまりにも厚さが感じられないため、本当にWi-Fiルーター/中継機を持っているのか? と違和感さえ起こるほどだ。
内部の基盤とチップ、ヒートシンクだけ考えても、それなりの厚さはありそうなので、一体、どういう構造してんの? と興味が湧いてくるが、とにかく、このプレートタイプのWi-Fiデバイスは、従来のWi-Fiルーターとはまったく違った発想で設計された製品となっている。
特に感心させられるのはルータータイプの「Archer Air R5」のインターフェースだ。ルーターなので、回線に接続するためにLANケーブルをつなげなければならないが、そのポートは、本体下方にある2つの切り欠きを開くことで現れるしくみになっている。
LANポートのコネクタは、それ自体が突起部などを合わせても10mm前後あるので、本体にポートを固定するとなると、少なくとも厚さは12~13mm前後になってしまう。しかし、LANポートのためだけに全体の厚さを増やすという安易な選択をしなかったのが、この製品の美点だ。
実際にポートを開き、ケーブルを接続すると、フルフラットだった表面に一部とはいえ突起が生まれ、その均衡が崩れる印象がある。しかしながら、それでも全体の厚さが増して、ぼってりした印象になるよりはマシだと感じられる。
もちろん、電源もコネクターをコンパクトにできるUSB Type-Cを採用しており、アダプターも小型なうえ、同梱されるLANケーブルもフラット化されていて、こだわりは細部まで徹底している。
しかしながら、このデザイン。その見た目だけが取り柄というわけではない。目立たないからこそ、置き場所が自由になり、電波も広がりやすくなるという副次的な効果が期待できる。
Wi-Fiルーターは、本来、デバイスを使う少し上の高さ、つまり人の目線より少し高い場所で、しかも周囲に遮蔽物がない開けた場所に設置するのが理想だ。
しかし、そうなると目立つので、大抵は家族から反対され、目立たない場所に隠されることも多い。その結果、電波の広がりが悪くなり、Wi-Fiの快適さが失われるという悪循環が生まれるわけだ。
本製品は、こうした設置場所と電波環境のジレンマを、デザインで解決している。
薄いからどこにでも設置でき、目につきやすい場所に置いても気にならないから、電波が届きやすい開けた場所に設置しておける。設置場所がよければ、結果的にWi-Fiの電波環境を改善しやすくなる効果が期待できる。デザインが生む実用性の好例と言えるだろう。
ちなみに、壁への設置は、通常、ねじ留めが必要でハードルが高いが、本製品はネジ留めが必要なブラケットによる固定に加えて、付属のスリーエム(3M)製のシールによって手軽に貼り付けることもできるようになっている。
実際に壁に貼り付けてみると、壁に一体化したかのような印象がある。欲を言えば、中央のロゴとLEDもなくして、より純粋な「フラット」を目指して欲しかったが、このあたりが妥協のしどころだろう。
なお、壁掛けの場合の欠点は、ケーブルが、だらしなくぶら下がることだ。ケーブル部分のみ家具や置物でうまく隠すようにするか、市販のはがせるテープなどでケーブルもピッタリと貼り付けたりすれば、ケーブルの見た目の問題は解決できるだろう。
気になる性能だが、木造3階建ての筆者宅にてiPerf3を使って計測した結果が以下の通りとなる。Archer Air R5とArcher Air E5を組み合わせたメッシュ構成で検証した。3階の端でも下りで400Mbpsほど確保できているので、速度は優秀だ。
1F | 2F | 3F入り口 | 3F窓際 | |
2台メッシュ(上り) | 880Mbps | 554Mbps | 405Mbps | 343Mbps |
2台メッシュ(下り) | 847Mbps | 689Mbps | 438Mbps | 403Mbps |
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro
※クライアント:Core i5-8365/RAM8GB/1TB NVMeSSD/Intel AX200
メッシュの場合、環境によっては、バックホールに意図せず2.4GHz帯が使われたり、2階→3階→1階という意図せぬルートで接続されたりするケースも珍しくないが、今回は、こうしたメッシュや中継機ならではの現象は見られなかった。
薄型のため、電波状況やスループットに関しては、正直あまり期待していなかったのだが、デザインだけでなく、実力もしっかりと兼ね備えた製品と言える。既存のWi-Fiルーターのデザインに不満を感じている人に、ぜひおすすめしたい製品だ。
「"ここ"がイチ押し! 旬モノ実験室」は、今気になるハードウェアやソフトウェアをピックアップして、その製品の「イチオシのポイント」に注目し、魅力をレポートします。