イベントレポート
ハードウェア
インテルがvPro活用のオンラインセミナーを開催、コロナ禍の訪問看護や自販機での活用事例を紹介
PCへの要求が多くなり管理が複雑になる中、解決策としてのvProは重要性を増す
2021年11月16日 16:26
インテルは11月12日、同社のビジネスPCと「vPro」プラットフォームをテーマにしたオンラインセミナー「IT管理は課題が山積み…先端事例から学ぶ2022年に必要な働き方とは?」を開催した。
新型コロナウィルスの感染拡大以後、ビジネスにおけるPCの重要性が高まると同時に、多様な分野でリモートワーク・働き方改革が大きくされているのは周知のとおり。こうした背景をふまえ、インテルのビジネスPCや利用できる最新テクノロジー、vProプラットフォームを活用したデバイスの管理手法やセキュリティ対策といったトピックを解説するのが今回のセミナーの狙いだ。セミナーではテーマごとに複数のセッションを用意し、同社のパートナー企業やエンドユーザーを招いての活用事例の紹介なども実施されていた。
この記事では、エンドユーザーのvPro活用事例を紹介するセッションを中心に、セミナーの概要を紹介していく。
なお、このイベントはオンデマンド配信も開催中。気になる内容があれば、公式サイトから内容を確認してみるといいだろう。
インテル株式会社の社長も登壇、「vProプラットフォームはますます重要に」
セミナー開催に先立ち、開会の挨拶にはインテル株式会社 代表取締役社長の鈴木国正氏が登壇。「新型コロナウィルスの流行もあり、IT管理者の抱える課題はさまざまなものが考えられるようになってきている。サイバー攻撃の手法が多様化や高度化する一方、扱うデータ量や価値は増大し、IT部門は少人数の管理体制というのがきつい話。こうした課題を解決するため、インテルではvProプラットフォームを提供している」と語った。
「vProプラットフォームには、先月の9月7日でまる15周年という歴史がある」と鈴木氏。「PCに求められる数多くの要求をアップデートしながら提供しており、ビジネスクラスのパフォーマンス、ハードウェアベースのセキュリティ基盤、リモート管理技術、PCの安定稼働という4つの柱は変わっていない。昨今は当たり前のようにビデオ会議があり、PCもさまざまな場所に分散配置されるなど、ユーザーのコミュニケーションは豊かになる一方で管理者にとっては複雑な状況になっている。こういった状況の中で、vProプラットフォームはますます重要になってきている」と述べ、開会の挨拶とした。
多くの人は「働き方を選択できる権利を維持したいと考えている」
冒頭の主催者講演「私たちの新しい働き方を支える、新しい時代のビジネス PC」には、インテル株式会社 インダストリー事業本部 ビジネス・クライアントテクノロジー・エバンジェリストの坂本尊志氏が登壇。近年のビジネスPCを取り巻く環境と、その環境下で求められる要素やビジネスPCの選び方について概説した。
まず坂本氏は、公益財団法人 日本生産性本部が実施した在宅勤務・テレワークに関する調査結果を引用し、「働く人の多くは、コロナ収束後も何らかの形で在宅勤務をできること、あるいは働き方を選択できる権利を維持したいと考えている」と指摘。従業員の働きやすさを考えることが、結果的には事業の継続性を担保することにつながるという考え方を示した。
そのうえで、感染症拡大後のPCに求められる要素は大きく4つに集約されるとし、「在宅勤務」「ビデオ会議」「セキュリティ対策」「ビジネス環境の変化に呼応した新サービス」の4要素を挙げた。「現在の多様な働き方を実現するためには、分散したPCの管理機能、ビデオ会議やアプリを快適に動作できるパフォーマンス、強固なセキュリティが求められる。こういったなものを半導体レベルで実現している技術の集合体がvProプラットフォーム。そしてさまざまなお客様に使っていただいたことで、vProに対応した製品やサービスが登場してきた」と、vProプラットフォームの利点をアピールした。
講演の最後に坂本氏は「PCが会社外のさまざまな場所に出ていこうとしている、さらにPCが受け持つ役割が大きくなる中で、vProの持っている最新技術が、必ず役に立つと考えている」と言及。「この後のエンドユーザー様の事例もご参考に、明日のPCを考える機会にしていただければ」と話をまとめた。
続いてのセッション「エンドユーザーの事例から見るインテル vPro プラットフォーム搭載 PC の利点とは」では、主催者講演の坂本氏に加え、インテル株式会社 ビジネスクライアントテクニカルセールススペシャリスト セールス&マーケティンググループの佐近清志氏がファシリテーターとして登場。エンドユーザーのIT部門におけるvPro活用の事例が3つ紹介されると共に、坂本氏と左近氏による解説が適宜行われた。
最初の事例紹介「セブン銀行のワークスタイル改革 ~ EX重視のコーポレートOTへ 変化対応力の向上」では、株式会社セブン銀行 専務執行役員の松橋正明氏が事例の紹介を実施。セブン銀行のATMについて「2万5000台以上のATMがほぼ無停止で動いているほか、近年はスマホATMのウェイトが上がっている」と現状を説明。「さらに、都内を中心に次世代ATM『ATM+』の展開を進めている。こちらはAIやデータの活用、セキュリティについて、インテル様のお力を借りて開発を進めている」と、インテルとの協力体制についても言及した。
さらに松橋氏は「あらゆる産業はさらに再構築され、事業の垣根がなくなっていく時代が来ている。銀行業と言えど、さまざまな産業と繋がりながら再編されていく。現在はテクノロジーを使いながら自己改革を進め、従来のサービスや仕事の仕方を見直している段階」と述べる。
その後は同社のイノベーションヒストリーについて言及しながら、従業員の働き方について「フロントにあるサービスに注力するのもいいが、バックにある従業員の働き方改革、EXの改善も後押ししなければ、いいサービスは生まれていかないと考えている。従来は業務比率にける管理やオペレーションの割合が大きかったが、これを自動化などで小さくし、価値を生む時間を増やせるよう刷新している」と解説した。
vProの活用については「PCを含めたコーポレートツールは従業員のEXと生産性を左右する大事なツール。遠隔保守ではソフトウェアの更新やBIOS、ネットワーク用のドライバーの更新といった作業が今後も増えていくと思われるが、いずれにせよこの先の変化は読みにくい。従業員にお願いせずともアップデートがどんどんできるように、なるべく省力化を図りたいという意図があった」とvPro導入の効果を指摘。
「PCが正常起動しなくなった場合でも、管理者が対象PCを遠隔操作しながらトラブルの解決を図れる、夜間に従業員作業を止めず、ネットワークの圧迫を避け対応できるといったメリットもある。未来の備えを先にできることがIT部門の価値で、これを活用しながら生産性を高めていきたい」と話をまとめた。
これについて坂本氏は、「vProはもともとビジネスPC向け技術だが、使われているのはビジネスPCだけではない。ATMやPOS、サイネージや自販機のような無人端末の管理はある意味でビジネスPC以上にクリティカルなので、vProは大きな効果を発揮する」と解説を加えた。
続いて株式会社ブイシンク 代表取締役社長の井部孝也氏が「インテル vProプラットフォームの活用によるIoT自販機の安定稼働と保守体制」についての事例紹介を行った。同社のIoT自販機「AIマート」は、通常の自販機に加え、タッチパネルディスプレー、カメラセンサー、レシートプリンターなどを備える筐体が特徴。食品・衣料品・雑貨・玩具・化粧品といったさまざまな商品が販売可能であり、近隣の観光情報の多言語表示、スマートフォンへの電車の乗り換え情報の送信、ARセンサーによる記念撮影、総務省のLアラートに接続しての災害情報配信など、多彩な対応ができる点が魅力だという。
同社のIoT自販機の稼働状況について井部氏は、「多くは飲料用。8月時点で空港やショッピングモールなど、計3017台稼働が稼働している」と説明。vProの活用については「端末内には各種センサーを配置しており、モニタリングした情報を送信できる。機器障害をvPro機能搭載のCPUと内蔵センサーですばやく感知し、障害復旧が可能になっている」と述べた。
「通常はお客様からの報告を受けて復旧の対応をすると思うが、私どもはほとんどの場合、CPU温度や衝撃、入力電圧、FAN回転数、ガス、加速度検知などのセンサーにより常時監視できる。自動復旧や遠隔のリモート操作も可能で、稼働率99.97%と非常に安定した稼働を実現できている。現地のお客様からの信頼性も非常に高い」と井部氏は自信を見せる。
自律自動保守に関しては、障害の自動報告を保守・開発など複数の関係スタッフに送信し、復旧と同時に解決策をアップデートしていくことで無停止に近づけていくアプローチを行っているという。また、継続的な筐体の温度上昇、電源の低電圧化といった見つけにくい問題でも、事前に情報を持った状態で現場に保守に向かうことが可能である点がメリットになるとした。
同社としてはvProの活用自体は2006年当初より行っているとし、「KVM機能によりOSの起動不良やフリーズ状態でも画面状態を確認したり、ATMイベントログによるOS起動前のPOSTシーケンスの正常性の確認を行ったり、多彩な機能を活用させていただき、事前に情報を収集することで保守のコストダウンに大きく役立っている」とのこと。また、「遠隔の電源オンはあらゆるサービスで簡単にできるが、問題点を把握したうえで一度電源をオフにし、オフからオンにする、といったことも柔軟にできるのが大きい」と所感を述べた。結果として、日本全国に自販機があるものの保守体制は非常にコンパクトで、効率のいい保守が実現できているそうだ。
事例紹介の最後には、一般財団法人 名古屋市療養サービス事業団 総務部 IT統括本部 主幹の篠田和紀氏が登場。感染症拡大下でさまざまな制約を受ける訪問看護の分野でのvPro活用について、「パンデミック環境下の訪問看護現場におけるデバイス運用」というテーマで、実例を交えつつ解説を行った。
同団体は、名古屋市の全市をカバーできる訪問看護ステーションを運営しており、基本的には利用者の自宅に看護師が1人で訪問して看護・診療を行う体制を敷いている。篠田氏は同団体のコロナ禍における訪問看護について、「感染拡大の第1波が始まった際、利用者がコロナに感染し、訪問診療を行った看護師も感染してしまうという事態が起きた。そうした状況下でも訪問看護は続けなければならないため、防護服を用意したり、極力事業所に行かない、訪問看護記録は公用車内で作成する、ミーティングはリモートでといった体制を整えた。加えてリモートでの講演会や看護師研修など、大きな変更を迫られた」と当時の状況を回顧した。
そうした体制の中で上がってきた問題として、「ネットワーク構成の都合で、事業所のPCの業務システム以外のインターネットはすべて本部を経由するため、Zoom会議をすると輻輳が発生してしまった。Windows Updateが一斉にかかると仕事にならない」といった事例が発生したという。結果として、「トラフィックを軽減するためのアプローチとして、圧縮率が高いAV1コーデックのハードウェアアクセラレーターを搭載する第11世代のvProプラットフォームを導入した。ビデオ会議の画質向上も可能なため、使わない手はない」とのことで、vProの導入を進めたそうだ。
また篠田氏は、「一部職種では以前からテレワークを行っていたものの、貸与したPCは1年以上セキュリティアップデートがされていない、といったことも起きており、遠隔サポートをどうするかといった問題も持ち上がっていた」と言及。ここではIntel EMAを使った遠隔電源管理とアップデート、リモートによるサポート、電源オフといった機能を利用し、セキュリティアップデートを確実に行いつつ、遠隔サポートも実施できる体制を整備したとしている。篠田氏は「コロナ禍のストレスフルな環境下でプロフェッショナルの仕事をしている看護師に、PCの運用でストレスをかけたくなかった。快適かつ安心な環境を作れるように、vProプラットフォームを活用している」と話をまとめた。
事例紹介を終えた左近氏は、「現在では全世界のビジネスPCの20%がvProプラットフォームであり、さまざまなとことで活用されている実績があると考えている。vProだと気づかずに使っているユーザーや企業の方も多いかもしれない」と所感を述べた。坂本氏は「vProを使ってください、と宣伝しているうちはまだまだで、気づいたらvProだった、知らないうちに使っていた、というところまで頑張らなければいけない」と述べ、セッションを締めくくった。