イベントレポート

第20回東京国際ブックフェア

リットーミュージック、雑誌「サンレコ」のiPad版を発行、9月より紙と同時に

 株式会社リットーミュージックは、レコーディング機器やシンセサイザー、楽曲制作ソフトなどの情報を扱う月刊誌「サウンド&レコーディング・マガジン(サンレコ)」のiPad版を発行する。9月発売の号より、既存の紙版雑誌と並行して同時発売していく。東京ビッグサイトで開催中の「第20回東京国際ブックフェア」で公開した。

 iPad版制作をサポートしている大日本印刷株式会社のブースにおいて、ダフト・パンクが表紙になっている最新号(6月15日発売の7月号)から一部記事を抜粋したデモバージョンを展示している。音楽制作者向けの情報を提供している同誌の性格から、これまで付録CDやインターネットを通じて紙面と連動する音声コンテンツを提供していたが、iPad版では記事に関連する音声コンテンツや動画を、画面をタップすることでその場で再生できる。

 CDあるいはウェブでは、雑誌とは別にプレーヤーや端末などを操作する必要があり、読者が記事を読むスピードと関係なく音声が再生されていたが、次の記事ページに進むと再生が自動的に止まるなど手間もかからない。

トラックごとに音声データを再生できる
シンセサイザーの写真の部分が、ピンチ操作でズーム可能

 また、紙の誌面ではスペースの関係から点数が限られていたビジュアル情報も充実している。小さな製品写真だけでは細かい部分まで認識できなかったシンセサイザーの各ツマミや楽曲制作に使うDAWソフトの画面は、ピンチ操作で拡大して細部まで閲覧可能だ。さらに、ライブハウスを訪問レポートする連載記事では、ホール内を360度見渡せるパノラマ写真を追加するなど、iPad版でなければ提供できない写真も掲載している。

 こうしたインタラクティブな機能は記事だけでなく、広告ページでも導入される。こちらも紙の広告では小さく掲載するだけだった音響機器などの製品写真も、タップすることで拡大表示されるようになっている。さらにその製品を愛用するプロのコメント動画を埋め込むことができるなど、広告の訴求効果を高められるという。

広告ページの例。中段にある写真をタップで拡大できるほか、右下に写っている人のコメント映像が再生できる

 リットーミュージックによると、国内でもすでに多くの電子雑誌が販売されているが、その多くは紙の誌面のイメージをそのまま1枚の画像として貼ったようなものだったという。これに対してサンレコでは、対応端末をiPadに絞り、アドビシステムズ株式会社の電子出版ソリューション「Adobe Digital Publishing Suite(ADPS)」を使うことで、インタラクティブ機能を多数盛り込んだものになっている。

 また、制作作業の面では、同じくアドビシステムズが提供し、現在、誌面レイアウトのために広く用いられているDTPソフト「InDesign」のデータを活用するようになっている。誌面データにインタラクティブ機能を付加したり、自動スクロールなどの設定をしたiPad版を同じワークフローで制作できるため、紙版との同時出版への効率化が図れるという。

 ADPSを使ったiPad向け電子雑誌としては、リットーミュージックと同じインプレスグループの出版社である山と溪谷社の「ヒュッテ」ですでに実績があったため、インタラクティブ機能の有用性が高いコンテンツを掲載するサンレコでも、その事例を参考に導入を検討していた模様だ。

「サウンド&レコーディング・マガジン」の編集長の國崎晋氏

 東京国際ブックフェアの大日本印刷のブースでは3日、サンレコ編集長の國崎晋氏がADPSの導入事例を紹介するセミナーに登場。iPad版発行に至った背景などを語った。

 國崎氏によると、サンレコはテクノロジーに強い人が読者層であるため、なぜ電子化しないのかという声がそもそも多かったという。また、月刊誌とはいえ、音楽制作のノウハウ記事などは内容が「古くならない」。最新号の情報でなくとも役立つことから、読者がバックナンバーを捨てずに保管していくため、「じゃまだ」「自炊している」といった声もあり、読者ニーズに応えるために「早く電子化しなければ」と感じていたと語る。また、雑誌制作者としての立場からも、紙の誌面では掲載を「あきらめていた写真のカット」も掲載できるとし、iPad版では、プロのプライベートスタジオの訪問レポートでは内部の360度パノラマ写真も掲載してきたいとした。

 このほか、読者の地理分布や、各記事の閲覧状況、広告効果などを詳細に測定できる「Adobe Site Catalyst」ツールを利用できるのも、ADPSによる電子雑誌のメリットでもあるとした。

「Adobe Site Catalyst」の画面例(アドビシステムズが発行している自社のPR誌のもの)

(永沢 茂)