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日本マイクロソフト、佐賀の次世代MRコンテンツ開発事業に参画

佐賀市長「MRでの物作り拠点を目指す」

オープニングイベントの様子

 佐賀市などが進める次世代MRコンテンツ開発事業「redeco(リデコ)」に日本マイクロソフトが参画。同社の最高技術責任者である榊原 彰氏が、6月27日に行われたプロジェクトのオープニングイベントで特別講演を行った。

 この事業は、佐賀市と佐賀大学、佐賀市の次世代コンテンツ開発共同企業体(株式会社とっぺん、株式会社ウェアサーブ、株式会社ローカルメディアラボ、NPO 法人ネットコム佐賀)が実施するもの。テーマは、Mixed Reality(MR)コンテンツの開発で、佐賀大学のクリエイティブ・ラーニングセンターが開発拠点となる。

 日本マイクロソフトはフェロー企業として参画、技術やプロモーションの支援を行うとのこと。使用機材は当初はHoloLensで、将来的にはHoloLens 2も使用予定。

 佐賀市のホテルで行われたオープニングイベント「Next Generation Contents from Saga」では、佐賀および近郊のIT企業や製造事業者を中心に、100名を超える参加者が集まった。

redecoのオープニングイベントでの講演者。左から宮崎 耕治学長、秀島 敏行市長、天賀 光広氏、榊原 彰氏

佐賀市長や佐賀大学学長、日本マイクロソフトの最高技術責任者らが登壇

 イベントでは佐賀市 秀島 敏行市長、佐賀大学の宮崎 耕治学長、プロジェクトの代表幹事を務める株式会社とっぺん代表取締役の天賀 光広氏、そして、日本マイクロソフトの執行役員 最高技術責任者の榊原 彰氏が順に登壇。事業の意義などをそれぞれ語った。

佐賀市長 「MRでの物作り拠点を目指す」
佐賀市長の秀島敏行氏

 最初に登壇したのは、佐賀市の秀島 敏行市長だ。

 秀島市長は、地方都市の悩みのひとつにある人口減少に対し、「まずは働き場所を確保することが重要」とし、佐賀市内への企業誘致に努めると述べる。日本マイクロソフトとの関係も築き、2016年には西日本で初となるマイクロソフトの拠点、マイクロソフトイノベーションセンター佐賀が設立された。以後、500人を超える雇用を創出したという。

 さらに「最近ではマイクロソフトとテレワークについての話もしている。昨年は明治維新から150年。佐賀のものづくりの力を再認識した1年だった。当時そろばんの時代だったが、今日までに信じられないほどの技術革新があった。今後は、(佐賀が)MRを使った物作りの拠点となるべく努めていく。佐賀市のような地方都市でもできるのだと、関係者に対して心強く感じている。次世代コンテンツ開発企業体で新しい技術者が佐賀で生まれることを願っている」と述べた。

佐賀大学学長 「医療や建築、不動産などに注目」
佐賀大学学長の宮崎耕治氏

 次いで登壇したのは佐賀大学の学長を務める宮崎耕治氏。

 プロジェクトの開発拠点である「クリエイティブ・ラーニングセンター」は佐賀大学内に設置されているが、MRについては次のように語った。「次世代コンテンツとしてのMRの技術は社会的には周知されていないが、年齢からみても、若い人たちのほうがMRについて理解している。MRは、ゲームの世界だけでなく、さまざまな分野で使われていく。その理由は情報発信能力。MRは情報量が多く、(これまでは分かりにくかった事柄でも)多くの人たちと共通の認識を持つことができる。ところが、MRを開発する人材は不足している。コンテンツ開発だけでなく、技術者養成も課題となっている。そうした人たちを育成したい。MRが普及することで、仮想と現実の境界線がどんどんなくなっていく」。

 続いて具体的な事例として、医療や建築、不動産にも触れ、特に医療については「医療は大きく変わる。より安全に、正確に治療を行う必要のあるシーンで、MRの技術が使われるだろう」と述べたほか、建築/不動産業界の例として「マンションを購入する際、これまでは青写真を見ていた。室内がどのようになっているかを体感するにはモデルルームを見に行かなくてはならないが、MRでは中身を見ながら検討できる」と解説、他にも「職人の技をどう伝えていくか、という分野にも有効」と考えているという。

代表幹事 天賀氏「実践型地域雇用創造事業として実施」
株式会社とっぺんの天賀光広氏

 続いて、本プロジェクトの代表幹事を務める株式会社とっぺん代表取締役の天賀光広氏が、事業の概要について説明した。

 事業の名称である「redeco」は同氏が公表したほか、厚生労働省が推進する実践型地域雇用創造事業のひとつであることや、期間が2020年末までであることなども公表。ただし期間については、「厚生労働省の定める期間終了後も、さまざまな企業や行政機関との垣根を越えて研究開発ができる拠点として、redecoを運営し、新しい価値を創造していきたい」と述べた。

 事業としては、すでに5名を雇用し、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」を使って開発をはじめていることも説明。今後も佐賀大学などと連携して開発していくという。

日本MS 榊原氏が特別講演、テーマは「HoloLensとDynamics 365の連携」
執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフトディベロップメント株式会社 代表取締役 社長の榊原 彰氏
HoloLensを使った配管メンテナンスの実演も行われた

 最後は、日本マイクロソフトの執行役員 最高技術責任者である榊原 彰氏の特別講演が行われた。

 内容は、MRデバイス「HoloLens」と、営業などで活用されるビジネスアプリケーション「Dynamics 365」を連携させた活用事例を説明するもの。

 説明だけでは全容がわかりにくいMRだけに、実演も含んだものとなっており、Dynamics 365との連携で、現場の作業者がHoloLensを使って確認しながら修理する、といった流れが示された。これについては、「ファーストラインワーカーの働き方改革につながる」「保守などについて、問題がおきた現場でリアルタイムに解決できる」など、HoloLensのメリットにも触れている。

これはHoloLens2のモックアッ プ。今回、展示はなかったが、今後の開発機材として予定されている。

 その後、発売予定の「HoloLens2」も解説。「Kinectで用いられている深度センサーをHoloLens2に入れていて、指先のつまむ、まわすというアクションを認識できるようになった」といった新機能についても紹介している。

メンテナンス中のHoloLensの画面

 講演後はMRコンテンツの体験会も実施。参加者はHoloLensに映し出される解法を見ながらパズルを解いたり、バーチャルな家具を設置するといったMRコンテンツを体験できた。

体験会の様子。HoloLensを使ったパズルの体験ブース。
バーチャルな家具を配置する体験も行えた(左)。右はHoloLensに映し出された画面