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家電メーカーの技術とヲタの熱意が融合――Cerevoが「PSYCHO-PASS」の「ドミネーター」製品版をお披露目、7万9800円から

 株式会社Cerevoは5日、アニメ「PSYCHO-PASS」の劇中と同様の自動変形機構を搭載した「ドミネーター」の製品版を披露した。2月18日に、CerevoStoreなどで予約受付を開始し、3月中の発送を予定している。2015年7月の開発発表時に「10万円は超えない」としていた価格は、7万9800円(税別)に抑えた。販売個数は制限していない。

「エリミネーター」状態の「ドミネーター」を構える、株式会社Cerevo代表取締役社長の岩佐琢磨氏

 PSYCHO-PASSは、人間の心理状態や性格を数値として計測できる「シビュラシステム」が導入された2112年の日本を舞台に、監視社会で発生する犯罪を抑圧するための組織「公安局」で働く「刑事課一係」のメンバーたちの姿を描いたアニメ。ドミネーターは、「携帯型心理診断鎮圧執行システム」としてシビュラシステムと接続しており、犯罪者になる可能性を数値化した「犯罪係数」の計測と、対象者の鎮圧・排除を行う特殊拳銃。刑事が治安維持活動を行うためのアイテムとして登場する。

 ドミネーターは、Cerevoが立ち上げたスマート玩具シリーズ「From screen to the real world(S2R)」の第1号機で、映画やアニメに登場するアイテムを、家電メーカーであるCerevoが持つ技術で限界まで再現して世に出すもの。Cerevo代表取締役社長の岩佐琢磨氏は、「家電メーカーの技術とヲタの熱意が融合すると、作り手からみなさんに思いが伝わる商品になる」とし、「『技術の無駄づかい』という言葉は最高の賛辞」と、高い技術力がもたらす高品質なアイテムの可能性について熱く語った。

 「パラライザー」から「エリミネーター」、またはその逆への変形機構を備えており、ドミネーターの声を担当する日髙のり子さんのボイス100種類以上を本体に収録。グリップに内蔵されたタッチセンサーにより、グリップを握るだけでボイスを再生しつつ起動する。自動変形は、引き金を半分引くことで切り替えられるほか、iOS/Android専用アプリとWi-Fi接続し、パラライザーまたはエリミネーターのみのモードに変更することもできる。

「ドミネーター」の変形シーン
「パラライザー」状態
変形機構はほぼゼロからの作り直し。先頭部に分からないようにカメラが仕込まれている

 本体銃口部分にカメラを内蔵。スマートフォンでも使用されているAllwinner製CPUを採用することで、銃口が向けられた顔を認識し、ドミネーター単体で犯罪係数を計測(独自のアルゴリズムに基づく)する。犯罪係数が100以上であればパラライザー、300以上であれば、自動でエリミネーターに変形する。また、スマートフォンアプリに、カメラのリアルタイム映像と犯罪係数の計測値を表示可能。相手の顔と計測した犯罪係数を画像としてスマートフォンに保存できる。

 また、PSYCHO-PASSに登場するキャラクターに合わせたモードを用意。コスプレなどでキャラクターになりきって使用する際に最適だ。ドミネーターが発話するボイスは、本体内のスピーカーとスマートフォンのどちらかに切り替えできるため、スマートフォンのイヤホンジャックから大型のスピーカーシステムを接続した使い方も可能だ。アプリでは、音声のみを楽しむ「SoundTest」モードも搭載している。

「ドミネーター」とWi-Fiで接続するスマートフォンアプリ。各種モードの設定から、「ドミネーター」に内蔵されたカメラで計測した犯罪係数が表示できる。なお、スマートフォンアプリ内の画面は制作中のもので、最終版ではない

 ドミネーターには、7万9800円のノーマルエディションに加えて、8万9800円(税別)の「Special Edition」も加わる。性能や機構に差はないものの、公安局エンブレムにアルミ削り出し台座と人工ルビーを施したほか、天然ローズウッドの削り出しで、オイルで磨き上げた木製グリップが組み付けてある。ノーマルエディションではすべてABS樹脂を使用している部分で、「どうしても質感にこだわりたかった。でもこれを採用して本体価格をすべて上げてしまうのも申し訳ない」と、岩佐氏個人の思いから、別のエディションとして追加した。

 なお、ドミネーターは2月7日に幕張メッセで開催される「ワンダーフェスティバル 2016」にて展示され、会場で先行予約販売を実施する。そのほか、ドミネーターを運搬するための専用プロテクターケースも提供予定。IP67の防塵防水性能、対衝撃性能を備えている。価格は1万2800円(税別)。

「ドミネーター」のパッケージ
写真上が質感にこだわった「Special Edition」、写真下がノーマルエディション

総部品点数は約1400点、変形機構はゼロから作り直し

 岩佐氏によると、ドミネーターの開発はいくつもの困難が伴ったという。総部品点数は当初の想定から数が膨らみ、約1400点。中でも機構部品は250点と、非常に高度な設計が求められた。部品点数の多さから、開発時は変形機構に使用するモーターがすぐに焼け切れたり、ギアの歯が欠けるといたトラブルに見舞われた。そのころ、岩佐氏が日本電産の副会長と面会する機会があり、モーターについて相談したところ、専用ギアモーターの開発が決まり、無事に耐久試験をクリアできるようになったという。

 また、複雑な機構を搭載しつつスリムなデザインに仕上げるのもハードルが高く、開発発表時の試作品は、パラライザー状態でもエラの部分が本体から離れたままで、これを良く思わないコメントもたくさん寄せられたという。ただし、機構的にスリムにするのは非常に難しく、製品版完成直前に金型を作り直し、パラライザー時にマグネットで両脇を閉じる機構を追加して解決した。なお、変形機構は開発発表時からほぼすべてに手が加えられており、実質ゼロからの設計になっているという。

「ドミネーター」の総部品点数は約1400点。一般的なスマートフォンが約1000点で、機構部品も数十点なのと比較すると高度な設計が必要
日本電産がカスタムモーターの開発に協力したことで、耐久試験として5000回の稼働を突破することができた

(山川 晶之)