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NTT、「超広域省電力センシングサービス」に向けた低軌道衛星でのMIMO技術の実証結果を報告

超広域センシングデータ受信と地上への大容量データ送信を確認

実証実験のイメージ。地上のLPWA無線端末を備えたIoTデバイスの信号を低軌道衛星で(異なる地点のデバイスからの同一周波数の信号を正確に)受信し、地上局に送信する

 NTTは、低軌道衛星におけるMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術の実証を行い、単一アンテナを用いた従来の通信方式に比べて、最大約2.67倍の大容量化を確認できたと発表した。また、衛星に搭載した複数のアンテナから同一周波数で複数の信号を送信し、複数の地上局で受信した信号を分離し、復調することも確認できたという。

 これらの技術の確立により、将来的には地上通信網が整備されていない海洋や山間部などにおいても、IoTデバイスの活用やセンシングサービスなどが利用できるようになり、世界中であらゆるものがつながる世界を実現する「超広域省電力センシングサービス」への応用が期待できるとしている。

 NTTアクセスサービスシステム研究所無線エントランスプロジェクト主任研究員の五藤大介氏は、「衛星MIMO技術およびIoT技術の確立によって、衛星通信の大容量化と小型端末の大規模収容の実現が可能になる。具体的には、観測衛星への適用により、より高精細な画像およびレーダー情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度の向上が可能になる。また、IoT技術により、地上局が不要となり、インフラ設備の点検や環境モニタリング、スマートメータなどで用いられるIoTサービスを、低コストで、広域に展開できるようになる。実証は、2026年3月から1年間となっており、まだ中間点である。実験を完了させ、技術の確立を目指す」と述べた。

NTTアクセスサービスシステム研究所 無線エントランスプロジェクト 主任研究員の五藤大介氏

 実用化については、低軌道衛星事業者などとの連携なども必要になることから、現時点では具体的な計画はないというが、NTTでは引き続き、「NTT C89」ブランドのもとで、衛星を活用した社会インフラ関連の問題解決を進めるという。

アンテナ数を増やすことで大容量化の効果を確認、安定した伝送容量の向上に期待

 NTTとJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)は、2026年3月から、世界初の「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」を実施。革新的衛星技術実証4号機(小型実証衛星4号機)に、低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置(LEOMI)を搭載して、軌道上での実証実験を行ってきた。

 小型実証衛星4号機は、2025年12月14日12時09分に打ち上げに成功。3月13日の定常運用開始以降、約5カ月間にわたり、低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術に関する実証実験を行ってきた。

 ひとつめの低軌道衛星MIMO技術による低軌道衛星と地上間通信の大容量化の実証については、衛星から地上局への通信であるフィーダリンクにおいて、地上局の遠隔に配置した複数の受信アンテナに向けて、衛星から複数アンテナを用いてMIMO伝送を行った。

 地上局へ受信信号を集約したあと、MIMO信号の同期およびチャネル推定を行い、信号の等化を行うことで信号の多重伝送を実現することを検証した。

 具体的には、衛星搭載機器(LEOMI)の最大3台のアンテナから、同一周波数でMIMO伝送し、最大3局の地上局で受信後、等化処理を行うことで、信号の分離を実施した。分離後の信号から、伝送容量の時系列データを算出した結果を、従来の送受信アンテナを1台ずつ用いたSISO伝送の結果と比較したという。

 2台のアンテナと2台の基地局によるMIMO実験では、伝送容量の平均値がSISOに比べて約1.94倍の大容量化を実現。また、3台のアンテナと3台の基地局によるMIMO実験では、約2.67倍の向上が見られ、アンテナ数を増やすことによる大容量化効果を確認できたという。
また、今回の実証では、NTTおよびJAXAが生成した低軌道衛星MIMOの通信路モデルを用いた衛星の軌道シミュレータを活用。今回の実験のチャネル容量のシミュレーション値を算出したところ、実測値と挙動の一致を確認できたという。

 「伝送容量の挙動を事前に把握できることを確認できた。システム構築の際に、想定する衛星の軌道情報に基づいて、衛星アンテナ数や衛星地上局アンテナ配置を設計でき、安定的な伝送容量向上を実現できることが期待できる」とした。

低軌道衛星MIMO技術の実証。地上局に配置した複数の受信アンテナに向け、衛星からMIMO伝送を行い、大容量化する
従来のSISO伝送と比べて、2×2MIMO実験では約1.94倍、3×3MIMO実験では約2.67倍の向上を確認

地上2地点からのLPWA同時送信信号を衛星で受信・復調する実証に成功

 もうひとつの衛星センシング技術の実証においては、地上の異なる2地点から、同一周波数および同一方式のIoTデバイスを通じて、信号を同時に送信し、衛星上で受信した信号の復調を行った。その結果、同一周波数で同時送信した920MHz帯LPWA(Low Power Wide Area)信号を、衛星上で受信して、2つの信号を正常に分離および復調することを確認。2地点のIoTデバイスが衛星と同一時間、同一周波数で通信できたという。

 NTT未来ねっと研究所波動伝搬研究部では、「この技術を衛星に搭載し、すぐに実用化につながるかどうかは未定だが、技術そのものは高い高度で飛行するHAPSや、気球などに搭載してデータを収集することができるだろう。その分野での活用も模索していく」としている。

衛星センシング技術の実証。地上の複数のIoTデバイスからのLPWA方式の電波を同一時間・同一周波数で受信する
2地点のIoT端末から同一時刻、同一周波数で送信した信号を受信できることを確認

 NTTでは、2019年11月に、JAXAと協力協定を締結し、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」などに向けた共同研究に取り組んできた経緯がある。また、NTTでは、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想を発表。2024年6月には、NTTグループの宇宙ビジネス向けブランド「NTT C89」を立ち上げ、日本の宇宙ビジネスの発展に貢献する姿勢を明らかにしている。なお、「NTT C89」のCはConstellation(星座)を意味し、「NTT C89」はNTTグループ各社が「新たに89個目の星座をつくっていく」という想いを込めたという。

 NTTとJAXAは、共同研究のひとつとして、衛星と地上局との間の大容量無線技術として、世界初の「低軌道衛星MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術」を提案し、地球観測データ等の大容量データの超高速伝送の実現を目指しているほか、NTT未来ねっと研究所が、LPWA端末と同じ周波数、同じ電力の端末を用い、低軌道衛星を介して小容量データを収集する920MHz帯を用いた衛星センシングプラットフォームを提案。NTTおよびJAXAは、低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術の実証に向け、軌道上実証プログラム「革新的衛星技術実証プログラム」の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに応募し、選定を受けていた。

実証実験の背景、NTTとJAXAは共同研究として、衛星と地上局との間の大容量無線技術に取り組んでいる

 今回の実証において、NTTは、MIMO/IoT衛星実験運用全般、衛星搭載機器(MIMOデジタル部、IoT部)の開発、実験系の地上局における復調機の構築および運用、データ評価を担当。JAXAは、MIMO衛星の実験運用全般、衛星搭載機器(MIMOアナログ部)の開発、実験系の地上局アンテナおよび無線周波数(RF)部の運用、データ評価を担当した。