児童ポルノ禁止法改正案、衆議院法務委員会で審議入り


 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(児童ポルノ禁止法改正案)」の審議が26日、衆議院法務委員会でスタートした。

 改正案は現在、与党案と民主党案が提出されているが、与党案では単純所持の禁止を盛り込んでいる点が特徴。一方、民主党案では、単純所持よりは範囲の狭い「取得罪」を新設するとしており、金銭のやり取りを伴う有償の取得行為と複数回(反復性)の取得行為に限定する。単純所持一般を処罰の対象にすることは、捜査機関による恣意的な捜査につながりかねないことなどを考慮している。

 26日の法務委員会では、両法案の提出者である森山眞弓議員(自民党)と吉田泉議員(民主党)から説明があったほか、アグネス・チャン氏(財団法人日本ユニセフ協会大使)ら参考人への意見聴取などが行われ、法案の相違点からもわかるように、所持の規制範囲が大きな争点となった。

 現行法では、他人への販売など目的とした所持は禁止しているが、今回の改正では、児童ポルノの拡散防止のために、何らかのかたちで所持(取得)も禁止しようというのが最大のポイント。主要8カ国(G8)の中で所持罪がないのが日本とロシアだけだとして、国際的な批判にもさらされている。

 一方で現在、拡散防止のために対処しなければならないポイントとして、インターネットが無視できない存在となっている。実際、与党案では、ISPに対して、児童ポルノの所持・提供などの行為の防止措置に関する規定を整備する必要性を指摘。ISPに対して、捜査機関への協力や、児童ポルノの送信を防止する措置を行なう努力義務を規定している点が注目される。

 なお、このような流れに対してはすでに6月2日、国内の大手ネット企業や業界団体、有識者などが「児童ポルノ流通防止協議会」を発足。児童ポルノ掲載サイトのリストを作成し、これをもとにISPがそれらサイトへのアクセスをブロッキングしていく仕組みを検討することになっている。

 このほか、与党案では今後検討する項目として、児童ポルノに類する漫画やアニメ、CGなど(いわゆる“準児童ポルノ”)について、児童虐待との関連性について政府が調査・研究することとし、改正法の施行後3年をめどに、調査結果をふまえながら、これら“準児童ポルノ”への規制について検討することとしている。


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(永沢 茂)

2009/6/29 18:45