ニコニコ動画(9)では、「一般化のために“萌え”は押し込めた」
ニワンゴは、ニコニコ動画の新バージョン「ニコニコ動画(9)」の発表会を28日に開催した。今回は「ニコニコ生放送」で中継され、視聴者数は累計3万4203人。発表会では、ドワンゴ取締役の夏野剛氏と、ニワンゴ取締役の西村博之氏が登場し、「ニコニコ動画(9)」で提供する新機能や新サービスを説明した。
ドワンゴ取締役の夏野剛氏 | ニワンゴ取締役の西村博之氏 |
●(9)の名称は「某OSにあやかった」
ニコニコ動画のユーザー数 |
現在のニコニコ動画の状況は、28日時点のID登録者数が約1457万人、プレミアム会員数が約55万人。夏野氏は、「まずはユーザーの皆様に感謝したい。登録者数は順調に伸びているが、広告収益が伸び悩んでいるので、クライアントの皆様はよろしくお願いします」と述べた。
今回、前バージョンである「ニコニコ動画(ββ)」の公開から約9カ月でのバージョンアップとなった。それまでのニコニコ動画のバージョンに比べると「ββ」の期間が長かったが、なかなかバージョンアップしなかった理由は「新しい機能を断続的に追加していたから」(西村氏)だという。
一度に多くの機能を追加する今回、「9」へとバージョンアップした。夏野氏は、「ニコニコ動画(仮)」から数えて今回が9番目のバージョンになると説明。ただし、季節名だったバージョン(夏、秋、冬)を1つとカウントしているため、厳密には9番目ではない。バージョンの順番で名前を付けたのは、「某OSにあやかった」(西村氏)。
●地方巡業で新規ユーザーを開拓
次回のニコニコ大会議 |
ニコニコ動画の新バージョン発表会は、過去2回ほどリアルイベント「ニコニコ大会議」で行っていたが、今回は「ニコニコ生放送」のみで行っている。夏野氏は、「贅沢だった。1回のイベントで7500万円使った」と振り返る。
しかし、28日の発表会では、次回の「ニコニコ大会議」開催を明らかにした。夏野氏と西村氏が地方のライブハウスをまわる「ニコニコ大会議2009-2010 ニコニコ動画(9)全国ツアー」を行う。告知VTRでは、ビジュアル系バンド風の格好をした両名と運営スタッフが登場した。
「全国をまわってユーザーと交流を深めるだけでなく、イベントごとにニコニコ動画の新しい機能を発表する。四国のようにニコ動ユーザーが少ないところへも行く。一般化のため、新しいユーザーを開拓したい」と夏野氏は語る。一方、西村氏は「夏野さんが断ってくれれば、僕も行かなくて済んだのに」と話した。
●一般化のために“萌え”は押し込めた
ニコニコ動画(9)トップページ |
続いて、「ニコニコ動画(9)」の新機能を紹介した。まずは、動画カテゴリーの追加と廃止。「トップページがごちゃごちゃしていたので、あまり必要じゃないものは廃止して、必要と思われるものを追加した」(西村氏)。
さらに、各カテゴリーをジャンル別にまとめた「カテゴリーグループ」を新設。ニコニコ動画で人気のカテゴリー(アイドルマスター、東方、VOCALOID)は、1つのグループにまとめられている。これについて西村氏は、「“萌え”は手堅いしユーザーも付くが、一般のユーザーは付かない。ニコ動の一般化のために、“萌え”は押し込めてしまうことにした」と述べた。
また、ランキングページはカテゴリーグループごとにランキングを表示するようになった。「ランキングで動画を探す場合、これまでは一部の人気ジャンルしかわからなかった。カテゴリーに分けることで、興味のある動画を見つけやすくする」(夏野氏)。加えて、総合ランキングの算出方法を変更。「ランキングを人為的に操作できないようにするため、アルゴリズムをわからなくした」(西村氏)。
●好きな“うp主”の新着動画がわかる機能
ニコニコ動画(9)マイページ |
今回、後から見たい動画を登録しておく「とりあえずマイリスト」機能を追加した。「ブラウザのブックマークも、とりあえず登録しておいて後から見ることが多い。そういった当たり前の使い方を取り入れてみた」(西村氏)。
動画を再生し終わると画面上に「とりあえずマイリスト」「もう一回再生」「この人の他の動画」などのアイコンを表示する「動画再生後メニュー」も追加した。「今までのニコ動は、ページのいろいろなところに各種機能のボタンやリンクがあるので、再生画面の中にまとめてみた。初めての人でも使いやすい」(西村氏)。
続いて、夏野氏が「これは便利な機能」として「ウオッチリスト」を紹介。任意のユーザーを登録しておくと、そのユーザーが新しい動画を公開したときにマイページで通知される。一般会員は50件、プレミアム会員は200件まで登録可能。「有名な“うp主”さんでも、動画公開後にブログなどで告知しないとファンが見に来ないので、自動で伝わるようにした」。
●面白い動画を見つけて広めるための生放送新番組
「世界の新着動画」イメージ |
動画プレーヤー上部のニコ割スペースには、参加しているニコニコミュニティのユーザー生放送が開始されたことを通知する「生放送アラート」機能を追加した。「ニコ動を見ていれば、目当ての生放送が始まることがわかって便利」(西村氏)。
「ニコニコ生放送」関連では、新しく投稿された動画を紹介する番組「世界の新着動画」を開始する。毎日午後8時から翌日の午前3時まで、カテゴリーグループごとに時間を区切って配信。夏野氏は、「面白い動画でも時間が経たないと広まらない。これをきっかけに一気に広まる」と説明する。
「世界の新着動画」では、当日に投稿された動画の中からランダムで紹介。動画は最初の30秒間だけ流し、続きを視聴するのかを「はい」「いいえ」ボタンでユーザーが投票。「いいえ」が多かった場合は、次の動画を再生する。また、紹介された動画の再生数やコメントは、元の動画にも反映される。
西村氏は「元々ニコ動は、面白くない動画にもコメントが付くことで面白くなるところがコンセプトだった。しかし、投稿者のレベルが上がりすぎて、新規の動画がピックアップされ辛くなってしまった」と話す。「面白い動画をいかにして見つけるか、そして、広めるかといった部分が上手くできていなかった。動画サイトとして当たり前の機能を作りたかった」とした。
●(ββ)に続き、(9)でも原点回帰
最後に夏野氏は、「ニコニコ動画(9)」で「本来やるべきことを一気にやった」とコメント。また、オンデマンドの動画と生放送の融合もポイントで、「ニコニコ動画とニコニコ生放送は別々にやっている感じだったが、今回追加された『生放送アラート』や『世界の新着動画』で、2つが近づいた」と述べた。
西村氏は、「(9)は原点回帰に近い」と話す。前バージョンの「ββ」も原点回帰とされていたが、今回は、「動画投稿者がファンを増やして、また動画を投稿しやすくするという基本的なところ」。また、これまでのバージョンアップで複雑になっていたユーザーインターフェイスをシンプルにしたという意味もある。
関連情報
(野津 誠)
2009/10/29 12:40
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