富士通、電子書籍ビジネスに参入~5月に電子書籍書店サービス開始


 富士通株式会社は3月3日記者会見を開催し、5月から電子書籍書店を開設、電子書籍ビジネスに参入すると発表した。電子書籍書店では、第一弾として大日本印刷株式会社(以下DNP)関連会社で電子出版の流通ライセンス事業を手掛ける株式会社モバイルブック・ジェーピーの電子書籍コンテンツを提供する。

左から、富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略室 室長 寺師和久氏、富士通株式会社 執行役員常務 大谷信雄氏、大日本印刷株式会社 常務取締役 北島元治氏

 5月に開始する電子書籍書店では、DNPグループの電子書籍コンテンツのほか、富士通グループ会社の株式会社ジー・サーチが持つビジネス分野の書籍・雑誌、白書・統計情報、調査レポートなど約30万点のコンテンツや、富士通エフ・オー・エム株式会社のFOM出版が提供するビジネス、IT、試験対策などの各種電子書籍も提供する。

 対応端末はパソコンのほか、Android OS搭載端末などをサポートする。具体的な利用方法については、「まだ詰めている段階」としながら、「基本的にはパソコンでご購入いただいて、パソコン以外の端末に転送するという形を考えている」(富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略室 室長 寺師和久氏)とした。

機能面では、ジャンル検索やキーワード検索のほか、DNPグループのコンテンツと富士通グループのコンテンツの横断検索、書籍や雑誌記事の横断検索など、充実した検索機能を提供するという。

 電子書籍のフォーマットは、DNPが採用するフォーマットとDRMをそのまま採用する。

 2012年以後には、富士通の電子書籍書店で購入した書籍と、他社の電子書籍書店で購入した電子書籍も一元管理できるライブラリ機能の提供を予定。また、対応端末の拡大も予定する。販売面では、実店舗の書店との電子書籍販売や相互利用可能なポイントサービスなどの連携を予定している。

電子書籍サービス展開スケジュールサービス立ち上げ時の特長2012年以後の機能・サービスの拡充

メーカーもハードだけを売る時代ではない

 富士通株式会社 執行役員常務 大谷信雄氏は、「これからはメーカーもハードウェアだけを売る時代ではなく、サービスなどと合わせて提供する時代。PCとケータイなどの枠がなくなり、ハードウェアのみのビジネスでは限界がくる。富士通では1年余り前にユビキタスビジネス戦略室を立ち上げ、2010年に『深体創工房』という健康系サービスをスタートするなど、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた生活や行動を支援するサービスの提供を始めている」として、人々の生活や行動をサポートするサービスを強化していく方針を述べた。

 富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略室 室長 寺師和久氏は、富士通が電子書籍ビジネスに参入する背景として、電子書籍市場について説明。米国では2010年に書籍販売の8.3%を電子書籍が占め、前年の3.2%から大きく伸長しており、日本国内でも市場が急速に拡大、3年後には市場規模が1000億を超えるという予想も出ていると述べた上で、「富士通は、総合ICTベンダーとして、富士通ならではの付加価値をもったサービスの提供が可能だと考えている」とした。

人を中心としたICTの時代へ富士通の「ユビキタスフロント」コンセプト富士通の強みを活かした電子書籍サービスに

 寺師氏は、大日本との連携については、DNPグループは豊富な電子書籍の品揃え、リアルおよびネット書店の店舗運営ノウハウを、富士通グループはPCなどの顧客基盤、PCコンテンツや読書に最適な端末環境など、両社の強みを合わせた電子書籍サービスを提供すると述べた。サービスの売上げ見込みについては、「3年間の累計で40億規模」を想定している。

 電子書籍向け専用端末の提供については、「電子書籍専用端末というと使い方が限定されてしまうが、いまの段階ではそうした端末は考えていない」とした。一方で、グループ会社の富士通フロンテックで扱っているカラー電子ペーパー端末「FLEPia(フレッピア)」についての質問には、「グループの中で専用端末があるので、連携を深めていきたい。採用するかどうかも含めまだ詰めているところだ」とコメント。グループ企業の端末採用には含みを残した。

 グループ会社のニフティとの連携については、「富士通自体も750万人ほどの顧客ベースを持っており、うち200万人にメールマガジンを配信しているので、こうした顧客に向けてサービスをご案内していくが、ニフティもいろいろな場をお持ちなので、そうした場でサービスを告知していくなどのご協力をいただきたいと考えている」とした。

電子書籍市場は3年後に1000億円を超える規模にDNPグループと、両社の強みを合わせた電子書籍サービスを提供ビジネススキーム

 大日本印刷株式会社 常務取締役 北島元治氏は、「昨年は電子書籍元年と言われ、スマートフォンが普及、各社サービスも順次立ち上がってきている。今年の夏以後には外資の参入も噂されており、この夏以後、読者にとってどんな価値が提供できるのかを問われている。生活者の視点、読者の視点を第一に考えてサービスを提供していきたい。デバイスを使って読書するということがどういうことなのか、本に触れる機会を電子書籍でどう増やしていけるのか、常に読者視点でのサービス強化を考えていくことが重要だと考えている」と述べ、読者視点を重視してサービスを提供することを強調。

 その上で、「富士通のICTを使ったサポートと視点が同じと言うことで協力させていただくことになった。生活者のコミュニティを使ったサービスなどの提供をされてきた富士通のお手伝いができるということについては大変意味あることと考えている」と提携への意欲をコメント


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(工藤 ひろえ)

2011/3/3 13:08