“自炊”裁判終了、東野圭吾氏ら原告側が訴訟を取り下げ「実質勝訴」


 東野圭吾氏や弘兼憲史氏ら作家・漫画家7人は22日、裁断機やスキャナーを用いて書籍を電子化する、いわゆる“自炊”の代行業者2社を相手取って事業の差し止めを求めていた件で、訴訟を取り下げたと発表した。訴えていた2社が事業を廃止し、原告側の実質勝訴となったため。

 訴えられていたたのは、「スキャンボックス」を提供する有限会社愛宕(神奈川県川崎市)と「スキャン×BANK」を提供するスキャン×BANK株式会社(東京都新宿区)の2社。原告は2人のほか、浅田次郎氏、大沢在昌氏、永井豪氏、林真理子氏、武論尊氏。

 これまで原告側は、不特定多数の利用者から注文を受け、多くの書籍をスキャンして電子ファイルを作成し、納品する行為について、書籍の著作権者の許諾なく行うことは、著作権法の複製権侵害に該当すると指摘。こうしたことから2011年12月、著作権侵害行為の差し止めを求める訴えを起こしていた。

 原告側によれば、スキャン×BANK株式会社は裁判所において、2012年1月末日までにスキャン事業を廃止すると述べており、5月15日には会社自体を解散していた。また、有限会社愛宕については、4月27日に原告の請求を全面的に認めており、原告側の実質勝訴が確定しているという。

 訴訟を取り下げたことについて原告側は、以下のようにコメントしている。「今回の実質的勝訴は、当然の結果だと受け止めています。スキャン事業者の皆さんには、著者の許諾なく大量スキャンは行えないという訴訟の結果をご理解いただき、善処をお願いします」。

 なお、違法なスキャン事業に対しては、今後とも状況を注視し、必要な行動を取っていくとしている。


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(増田 覚)

2012/5/22 19:00