レビュー

「無料で始めるセキュリティ対策」で在宅勤務!カメラの盗撮防止やWi-Fi検査、VPNもできるアバスト製品をチェック

盗撮防止やVPNは有償機能、ただし30~60日間は試用OK

 新型コロナの関係で「急遽、在宅勤務をすることになった」という読者は多いと思うが、そこで困惑するものの1つが「セキュリティ」だろう。

 会社のデータを自宅で扱うために、さまざまな漏えいの危険が出てくるし、自宅PCのセキュリティ検討もこれまで以上に必要だ。さらに、ビデオ会議やさまざまなクラウドサービスで使うパスワードの管理など、新しいポイントも出てきている。

 そして、緊急事態宣言は解除されたが、第2波の懸念や「新しい生活様式へのパラダイムシフトを」という声からも、在宅勤務の環境整備が重要になってくるのは確実だろう。

 そこで今回は、中小企業の会社員など「自分で環境を整備する必要がある」状況の読者を想定し、無料で始められるセキュリティソフト「アバスト無料アンチウイルス」の実力を試してみた。

 主に紹介するのは、無料で使えるアンチウイルス機能とWi-Fiスキャン機能、そして有償ではあるが、まさに「今風」の盗撮防止機能やパスワード保護機能、そしてVPN機能だ。

無料で使えるWi-Fiの検査機能
ウェブカメラの無断使用をガードできる有償オプション
連携利用できる別製品のVPN

無料で使えるアンチウイルスWi-Fi内の脆弱性検査も無料でOK、家庭内の脆弱性を確認できる

まずは無料から始められる「アバスト無料アンチウイルス」

 オフィス以外での勤務でPCを利用する場合を考えるとさまざまな問題があるが、まず気にしたいものがセキュリティ対策だ。会社内のネットワークには基本的に安全な機器のみが接続されているが、自宅のネットワーク環境のセキュリティは自分で何とかしなければならない。

 Windows10には標準でWindowsセキュリティが含まれているが、このセキュリティを一段上げる手段の1つとして無料で利用できるのがアバスト無料アンチウイルスだ。

 アンチウイルスソフトとして、一般的な機能はもちろん備えており、マルウェア特有の動きをチェックする挙動監視、ウェブブラウザーの動作を監視してウェブサイトに埋め込まれた不正なスクリプトの実行を阻止する機能などを備えている。最近はメールをウェブブラウザーでやり取りすることが増えたが、ローカルのメールソフトを使った場合のメッセージスキャンも、有償のプレミアム版ではなく無料で利用可能だ。

 また、特筆できるのはホームネットワークに繋がっている機器の脆弱性検知機能だ。これは、家庭のWi-Fiなどに繋がる機器をスキャン、脆弱性を検知してくれるというものだ。

 Windowsセキュリティには無い機能であり、また、家庭内のデバイスが増えている昨今だけに、これが無料で使えるのは嬉しいところだ。アンチウイルスソフトの基本である防御性能はもちろん高く、セキュリティ対策ソフトの能力を検査している第三者機関であるAV-Comparativesからは「Top-Rated Products 2019」に認定されている。

無料アンチウイルスと言っても十分な機能を持っている。またイラストなどを多用した分かりやすい画面構成になっている
Wi-Fi接続されたネットワーク内に不審な接続がないか確認できる
Wi-Fiネットワークのスキャン中
スキャン結果。デバイスをメーカー名も含めて表示しているので分かりやすい

 インストールもウェブサイトからダウンロードして実行し、何回か確認ボタンを押すだけだ。無料版のインストールでは、最後に「高度な問題が見つかった」と表示されるので驚くが、これは有償版でサポートされる機能の紹介なので心配ない。これらの追加機能は、なかなか興味深いものなので、次の章で紹介しよう。

インストールは特に機能を減らさない限りワンクリックで良い
インストール後は初期スキャンを行う
数回のクリックで初期設定は終了する
高度な問題は有償版で対応するが、一般的な利用であれば無料版でも十分だろう
マルウェア判定されたファイルは、標準の設定で保管庫へ移動されるようになっている

「ウェブカメラの盗撮防止」や「ブラウザ保存のパスワード」もガードする有償機能30~60日間は無料で試用OK

 さて、無料でも十分な保護機能があるアバスト無料アンチウイルスだが、有償の「プレミアムセキュリティ」を購入・アクティベートすることで、ウェブカメラの盗撮防止やウェブブラウザーに保存されたパスワードの保護など、時代に即した独特の保護機能が利用できる。

 基本となる有償版がプレミアムセキュリティで、これには上記の機能のほか、ランサムウェア対策機能やフィッシング対策機能などが含まれる。

アプリ内では、機能差が示されて有償の「プレミアムセキュリティ」へのアップグレードが促される
無料版のメニューは有償版と同じ構成で、機能がロックされる項目には赤い鍵マークが付く
「ウェブカメラシールド」で信頼できないアプリをブロック

 中でも注目される機能の1つと言えるのが「ウェブカメラシールド」だ。

 これはマルウェアなどによるウェブカメラの動作をブロックするものだ。通常は信頼できないアプリの動作をブロックする「スマートモード」での動作となるが、より厳格な動作を求め、全てのアプリでの許可を必要とする「厳密モード」も備える。

「ウェブカメラシールド」の設定画面。ウェブカメラを不正に使おうとするアプリを検知する。標準ではレピュテーションを使う「スマートモード」だが、厳しくチェックするなら「厳密モード」にすると良い
Zoomを起動したが、スマートモードではそのまま利用可能だ。厳密モードにすると自分でブロック(=ブラックリスト行き)、許可(=ホワイトリスト)が選択できる
ブラウザが保持するパスワードを保護する「パスワードプロテクション」

 このほか、「パスワードプロテクション」は、ウェブブラウザー(現在はGoogle Chrome/Firefoxのみ)が管理するパスワード領域へのアクセスを防御するものだ。パスワード管理アプリを使用している場合、ウェブカメラシールド同様にアプリからの利用を許可することができる。

パスワード保管領域を保護する機能は、現在はChromeとFirefoxだけだが、今後は対象のウェブブラウザーが追加予定だ
「パスワードプロテクション」の管理画面。サードパーティーのパスワード管理ツールを使いたい場合は一時的に機能をオフにせず、個別に許可できる
30~60日間は無料で試用可能

 無料版ではなくプレミアムセキュリティを直接インストールすると、30日間は無料で試用可能だ。無料版からの移行では、カードの登録が必要となるが試用期間は60日間となり、その間にキャンセルすれば費用は請求されない。

 プレミアムセキュリティの1年間あたりの料金は、デバイス1台で5480円、デバイス10台で7480円(料金は全て税込、以下同)となるが、無料版からのアップグレード優待料金もある(アプリ内の「今すぐ購入する」をクリックすると購入ページが表示される)。契約形態によって割引額が変わるが、筆者の環境では、1台1年間で3108円、同2年間で5976円、同3年間で8604円となった(いずれも期限後は1年ごとに支払うサブスクリプションとなり、料金は変更の可能性がある)。

ロックされている機能のうち、セキュアラインVPN、クリーンナッププレミアムとバッテリーセーバーは別製品だ

ネット回線を安全に使う「アバストセキュアラインVPN」

 また、プレミアムセキュリティ以外にアバストが提供している有償アプリの中でお勧めしたいのが「アバストセキュアラインVPN」だ。

 公衆Wi-Fiや共同住宅などの共用アクセス回線では、第三者があなたの通信を傍受、データのやり取りをのぞき見していないとは限らない。

 そんな環境でも安全に通信できる暗号化技術の1つがVPN(Virtual Private Network)だ。

 これは、暗号化技術で「のぞき見されない安全な通信回線」を作り出すもので、最近では企業の拠点間通信にも多用されている。通信「回線」なので、「通信先」を用意しないと利用できない技術でもあるが、「アバストセキュアラインVPN」では、アバストが世界中に通信先を用意している(日本で使う場合は東京に接続するのが良いだろう)。

 仮に通信を傍受されたとしても、本来のアクセス先や通信内容は分からない。これにより安全な接続環境が実現できるというわけだ。

「アバストセキュアラインVPN」はアンチウイルスと別製品なので、インストール作業が必要となる
アバストセキュアラインVPNの起動画面。現在のIPアドレスから推定される現在地(この場合は渋谷)が表示される
VPNを有効にすると、無効時に表示されていた本来の接続のIPアドレスに加えて、VPNの接続先(この場合は東京)と、そのIPアドレスが「仮想IP」として表示される
アバストセキュアラインVPNの接続先は34カ国55拠点と多い。VPNの接続先に海外を選ぶこともできるが、レスポンスを考えると日本のままの方が良いだろう

 アバストセキュアラインVPNは7日間の試用ができるので、使用感や速度は試してみるのが良いだろう。

 料金は1台のデバイスで1年間4880円、2年間7380円、3年間1万1080円、最大5台のデバイスの場合は1年間6180円、2年間9780円、3年間1万4680円となっている(期限後は1年ごとに支払うサブスクリプションで料金は後日変更される可能性がある)。

 アバストセキュアラインVPNは、Windows/MacだけでなくAndroid/iOSでも利用できるため、複数デバイスを持っているならば、デバイス1台の料金からは月あたり100円程度増えるだけなので、5台のライセンスを選ぶ方が良いだろう。

デバイス1台の1年、2年、3年契約時それぞれの月あたりの料金。出先で仕事をする予定があれば必須機能だろう
デバイス5台の料金は、1台と比べて月あたり100円増える程度なので、複数デバイスを利用するならお勧めだ

「少し上の防御手段」で、より大きな安全を

 セキュリティ対策は「これだけやれば万全で絶対安心」というゴールが見えにくいものだ。

 しかし、あなたが非常に重要な情報を持っており、それを奪取するためには手を変え品を変えて執拗に迫る犯罪グループ(いわゆるATP:Advanced Persistent Threat)に狙われていない限り「他人よりも防御力を少し上げる」ことで、トラブルの可能性を大きく減らすことができる。なぜなら、犯罪者の基本は「少ない労力で大きな結果を得ること」。防御の高い人を執拗に狙うよりも、防御の低い人を攻撃したほうが楽で得るものが多くなるからだ。

 セキュリティ対策を進める第一歩としては「少し上の防御手段と心構え」を持つことが重要だろう。

[協力:アバストソフトウェアジャパン]