レビュー
格安ネットカメラ「ATOM Cam」のファームウェアを書き換えたらWebカメラになった!
Wi-Fi接続←→USB接続をファームウェアで切り替えOK、ただし無保証
2020年5月27日 08:10
1台2500円という価格からは想像もつかないほど高機能なネットカメラとして、注目が集まっている「ATOM Cam」。本誌ですでにレビューしているように、5月20日に一般販売が開始され、すでに自宅や仕事場、ネコちゃんやしいたけの監視に使っている人もいるはず。
広い視野角で捉えることができ、暗闇でも赤外線カメラでくっきり見えて、さらに動作や音を感知する機能もあり、さまざまな場面で活躍する使い勝手の良さを実感しているのではないだろうか。
さて、そんな監視用途にぴったりのATOM Camだが、なんととある方法でPC用のWebカメラ(USB接続)として利用することも可能になっている。本来はスマートフォンと連携するWi-Fiネットカメラで、それを半ば強制的にWebカメラ化することから、動作保証はない。
開発元としては 「あくまでも、Webカメラが品薄になっている状況に対する緊急的な処置」 という好意による公開で、機能改善や万一バグがあった場合などの修正も予定していないそう。
また、基本的に自己責任かつ、マニア向け要素が大きいため、広く一般に勧めれられる手段でもない。具体的には、「機能切替えにはファームウェアを手動で書き換える必要がある」「USBの規格外となる、両端がA typeのUSBケーブルでパソコンとATOM Camを接続する必要がある」といった注意点が明示されている。最悪の場合、ATOM CamやPCを破損してしまう可能性もあるため、少なくとも「よくわからない」という人が試してみていいものでもないと思う。
しかし、ネットカメラとして優秀なATOM Camが、Webカメラとしてどれほどの性能をもつのかは気になるところ。また、「ネットカメラのファームウェアを書き換える」ということそのものに興味を持つ人もいるだろう。
そこで、今回、手元にあるATOM Camを1台、Webカメラ化してみることにした。
【ご注意】
ファームウェアの更新や規格外のUSBケーブルの使用はメーカー保証外の行為です。そうしたUSBケーブルの使用や、ファームウェア書き換え、または書き換え失敗による誤動作・故障などは、いかなる損害が生じたとしても、編集部、筆者、メーカーはその責を負いません。
ATOM CamをWebカメラ化する手順、元に戻す手順
ATOM CamをWebカメラ化する手順は、開発元のWebサイトで詳しく紹介されているので、その手順に沿って進めていこう。
大まかには、「Webカメラ用のファームウエアに書き換えて、拡張用のUSBポートとPCをケーブルで接続する」という流れだ。 専用のファームウェアに書き換えてしまうので、スマートフォンアプリを使った監視カメラ用途には使えなくなってしまうので注意 したい。
ただし、元のファームウェアに戻す方法もしっかり用意されているので、Webカメラとしての役目が終わったら本来の監視カメラ用途で利用するのも問題なし。まずは、Webカメラにする(もしくは、元に戻す)ための具体的な手順を紹介しよう。
1.
公式サイトから「Webカメラ化ファームウェア」をダウンロードする
(Webカメラから元に戻したい場合は、ここで「ATOM CAMファームウェア」をダウンロードする。以降はすべて同じ手順)
Webカメラ化するときは「 Webカメラ化ファームウェア 」を、元に戻すときは「 ATOM CAMファームウェア 」を使う
6.
数分待つとATOM Camが再起動。再びLEDが明るい青色で点灯(元に戻す場合は黄色点滅か青色点灯)すれば書き換え完了
ファームウェアの書き換えが終わったら、Webカメラにする場合は電源ケーブルを抜き、「両端がType-AのUSBケーブル」でATOM CamとPCを接続する。最後にビデオ会議ツールなどで映像の入力ソースに「HD USB Camera」を選べば、カメラ映像が表示されるはずだ。
手順にそれほど難しいところはないが、両端Type-AのUSBケーブルは一般的ではなく、アトムテックによると「USBの規格外」になるという。ネット通販などで入手することは可能だが、誤ってほかのデバイスにつないでしまうと、接続したデバイスを破損する可能性もゼロではない。取り扱いには十分注意したい。
広い視野角、色合いは良好
Webカメラ化したATOM Camの画質だが、色合いは良好で、肌色の見え方も自然に感じる。
とはいうものの、最近の外付けWebカメラやノートPCの内蔵カメラに比べて優れている、というほどではない。そもそもセンサー自体の画素数がものすごく多いわけではないので、まぁこんなところ、というイメージだ。高精細なWebカメラと比べると、精細感はあまりなく、若干のっぺりとしているところもある。
一方、視野角は広い。正確な計測はしていないが、ネットカメラ利用時と同等ならば130°の視野角があるはずだ。ビデオ会議で複数人を映す、というのにも使えそうだし、自分1人を映すのに使うなら、ある程度表情も見える距離に置きたいところだ。距離があると自分の姿が小さくなりすぎてしまうことに気を付けないといけない。
なお、赤外線カメラ機能もWebカメラの状態で使えたなら、また違った楽しみ方がありそうだなあ、と思ったが、残念ながら部屋を暗くしても赤外線カメラには切り替わらなかった。この点は、ごく普通のWebカメラ、と考えておいたほうが良さそうだ。
ATOM Camにはマイクも内蔵されており、ビデオ会議ソフトで音声ソースに指定することも可能となっている。
しかしながら、メーカーが別途音声入力用のマイクを用意するよう推奨している通り、内蔵マイクには頼らない方が良さそう。
Zoomで試してみたところでは、マイクの入力レベルが小さめで、筆者の環境では音が途切れることもあった。音声入力するなら、やはり別にマイクを用意するのが無難だ。
緊急用とはいえ十分な性能。万が一のときの予備にもなるか
Webカメラ化したATOM Camは、画質や使い勝手の面でなかなか面白く、実用性もかなり高い。視野角が広いうえに、スタンド・マグネット装備で設置の自由度が高いATOM Camの本来の利点は、Webカメラ用途でも十二分に発揮してくれる。
Webカメラが品薄で購入できず、とりあえずスマートフォンをアプリでWebカメラ化しているような人、今あるWebカメラが故障してすぐに代替品が必要な人とっては、ATOM CamをWebカメラ化する価値はありそうだ。
使っていくうちに「あれがほしい、こういう機能もあれば……」みたいに思ってしまうのは、元が多機能なせいもあるだろう。
冒頭で説明したように、Webカメラ状態のATOM Camは動作保証の対象外で、これ以上Webカメラとしての機能改善も行なわないとメーカーが宣言しているため、ないものねだりではあるのだけれど……。
なので、ATOM CamをWebカメラ化したあと、無事“本物”のWebカメラを入手できたときには、元々のネットカメラに戻して別の場所で活躍させたいものだ。
ある意味1台2役というか、一石二鳥なカメラと言うこともできるので、なんとなくお得でもある。ふだんはATOM Camをネットカメラとして使い、緊急時にはWebカメラとして役立てる。そんな小回りの利いた使い方ができるのも、ATOM Camのユニークで魅力的なところだ。