INTERNET Watch 30周年記念インタビュー

中小法人の現場で生じる課題に、いつも半歩先回りした通信サービスを提供し続けたい~朝日ネット

VNE、「フレッツ 光25G」など、足元を着実に固めるISPが目指す「交流と創造」

株式会社 朝日ネット 代表取締役 社長執行役員 小松大氏

 株式会社朝日ネットは、朝日新聞社が発行していた雑誌「ASAHIパソコン」の読者向けに1988年から運営されていたパソコン通信「ASAHIパソコンネット」の運営を担うため1990年4月に設立された、株式会社アトソンを源流に持つ。ASAHIパソコンネットは、小説家の筒井康隆氏の会議室があったり、パソコン通信上で文学賞を選考したりして、NIFTY SERVEやPC-VANといった当時の大手パソコン通信サービスとは異なる、独自の存在感を放っていた。

 1994年からは「ASAHIネット」として、ISPサービスの提供を開始。現社名「朝日ネット」になったのは2001年のことだ。以降、技術や通信品質に定評がある中堅ISPとして、現在も独自の存在感を放っている。

 今回は、今年2026年6月から社長に着任した小松大氏(代表取締役 社長執行役員)に、これまでと、この先30年についてお話を伺った(聞き手:本誌編集長 山田貞幸 写真・構成:村上俊一)。

INTERNET Watchは、2026年2月に30周年を迎えた。激しい変化が続き「今」を追いかけるだけで精一杯となりがちなインターネット業界周辺だが、本企画では主要プレイヤー各社に「これまでの最大の転機」と「今後30年先までの見通しや想像するイメージ、あるいは夢」を伺いながら、読者の皆様とインターネットの未来像を共有することを目指す(インタビューの一覧はこちら)。

最大の転機はIPoE接続での「VNE参入」

——朝日ネットの、これまでの「最大の転機」といえば何になるか、お聞かせください。

小松氏:2016年に、当社はVNEに参入しました。サービスの規模を考えれば難しい判断であり、挑戦でしたが、IPv6での通信品質のために決断しました。これが最大の転機だと言えますね。

 私自身は代表に就任してからまだ日が浅いですが、当社はパソコン通信から始まり、ISPとしても老舗の方であると言えます。ポータルサイトを運営するなど多角化に取り組んできたISPが多い中、接続サービス一本で頑張ってきたことも特徴だと思います。

小松大(こまつ まさる)氏。2009年、立ち上げ直後だった教育支援サービス「manaba」の営業マネジャーとして声をかけられたことをきっかけに朝日ネットへ入社。 営業から全社戦略の立案まで幅広く手掛け、2026年6月に代表取締役 社長執行役員に就任。 最近は本や雑誌をじっくり読む時間を大切にしており、自宅の本棚には歴史や地理に関する書籍が並ぶ

 2011年にIPv4アドレスの在庫枯渇が話題となる中、NTT東西によるIPv6 IPoE接続サービスが開始されるなど、業界全体でIPv6移行への基盤づくりが進みました。当時はNAPT技術等の普及によりアドレス枯渇自体は一時的に落ち着きを見せたものの、トラフィックの増加による通信品質の低下も問題になっており、将来にわたって通信品質をどのように確保するかと検討した結果、IPv6移行、そしてIPoE接続とVNEへの参入を決断したのです。

 自社でISPとして必要な通信設備を持ち、インフラ事業者として生き残っていくか、その部分は他社からのローミングとして、サービスで差別化を目指すか、どちらにするか? という境目でした。当時、光回線の国内マーケットが3000万世帯ほどだった中で、当社の会員数は30万ほどでした。全体の1%前後しか持たない事業者が、VNEという大きな設備が必要なインフラ事業に参入し、やっていけるのか? という点で難しい判断でしたね。

【IPv6、IPoE、VNE】

インターネットでは、接続する端末(PC、スマートフォン、サーバー、ネットワークカメラなど)のひとつひとつに、固有の「IPアドレス」という識別子が割り振られる。インターネット初期から使われているプロトコル「IPv4」は、約43億のIPアドレスを割り振ることが可能だ。しかし、世界全体で43億個では足りないということになり、約340澗(かん)個のIPアドレスを割り振り可能な次世代プロトコル「IPv6」への移行が始まる。なお、IPv4アドレス枯渇問題は、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを変換するNAPT(Network Address Port Translation:ネットワークアドレスポート変換)技術などによって一時的に緩和される。

NTT東西の光回線「フレッツ光」でIPv6接続を提供する方式には、従来の「PPPoE方式」(トンネル方式)に加えて、より高速・大容量通信に適した「IPoE方式」(ネイティブ方式)がある。そして、IPoE方式の光回線からのインターネット接続サービスをISPが提供する際に、「VNE」(Virtual Network Enabler)と呼ばれる接続サービスが必要になった。現在「フレッツ光」回線でIPoE方式を利用するISPでは、VNEを自社で運営するか、VNEサービスにローミング接続するか、どちらかを選択する必要がある。

VNEサービスを提供するには、NTT東西の回線網(NGN)と直接接続し、大容量の通信を行うために、一定規模の設備を構築し、運用する必要がある(NTT東西が設定する条件に合わせる必要がある)ため、相応の規模を持たない事業者が独自に運営するのは難しい。NTT東日本が公開している情報によると、現在VNEサービスを提供する事業者は朝日ネットと、BBIX、インターネットマルチフィード、JPIX、ビッグローブ、NTTドコモビジネス、ファミリーネット・ジャパン、アルテリア・ネットワークス、楽天モバイルの9社のみ。
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——「やっていけるのか?」というのは、VNE事業者として要求される規模に対し、自社の会員ベースでは足りない、ということですか?

小松氏:そうです。VNEとしてNTT東西のネットワークと相互接続するにあたり、最低限必要な設備の規模があって、それだけの設備を維持管理できるのか? と。

 2016年にNTT東西にVNEの申し込みをして、2017年4月に、ASAHIネットの会員向けにVNEサービスを開始しました。しかし、その段階では設備の10%も埋まらず、このままでは好ましくないだろうということで、他のISP事業者にIPv6通信を販売するという形で、VNE事業を進めました。ただ、すでに先行している事業者もあり、展開はかなり苦労した記憶があります。

 それから10年ほどになりますが、2020年からコロナ禍による社会の変化や、動画配信の普及などあってトラフィックが増加し、近年ではオンラインゲームの配信やスポーツ中継などで特定時間帯の通信量が急増することもあります。あの時、VNEとして自前で設備を持ち機動的に判断できる状態にする選択をしていなかったら、これまで事業を継続することは難しかったのではないかと感じますし、チャレンジは正解だったと思います。

 通信事業者として、通信品質を維持することは、基本中の基本として重要です。よく言われる、存在を意識せず常に高いパフォーマンスで利用できる「空気のような存在」として通信サービスを提供するために、どれだけ企業努力をしていけるか。そのためには、サービス設計からネットワークまでを自社でコントロールでき、変化に柔軟に対応できる体制を持っていることは大切で、頑張ってそのような体制を維持する選択をしたことが、やはり大きかったですね。

現在25Gbpsを提供する唯一のISPに

——いち早くNTT東日本の「フレッツ 光25G」に対応されたことも、VNEとなる決断からの連続した流れでしょうか。

小松氏:「フレッツ 光25G」は、まさに自社でVNEを提供していたから柔軟に対応できた、メリットが現れた1つの事例です。7月に愛媛で行われた「JANOG58 Meeting in Matsuyama」でデモを行い、私は現地にいたのですが、25Gbpsの回線に多くの人が興味を持たれていることは認識しました。

 デモをご覧になった方から「やはりネットワーク設計の将来を考えないといけない時代に来た」といった声も伺いました。ここから、何か新しいサービスを創り出せたらと思っています。技術の進歩は早いと思います。

【フレッツ 光25G】

NTT東日本が2026年3月に、東京都中央区の一部を対象として提供を開始した上り下り最大概ね25Gbpsの光回線サービス。ASAHIネットは、記事公開時点で唯一の対応ISPとなっている。
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【JANOG58 Meeting in Matsuyama】

JANOG(ジャノグ。「JApan Network Operators' Group」の略)とは、国内のインターネット技術者を中心とし、技術やオペレーションに関する情報共有や議論を行うイベント。「JANOG58 Meeting in Matsuyama」は2026年7月15日~17日に、愛媛県松山市で開催された。
JANOG58 Meeting in Matsuyama

多くが法人利用者、「企業の現場に向けたお手伝いを」

——続いての質問に移ります。この先1~3年ぐらいの間にお考えの新しい試みや取り組みについて、お聞かせください。

小松氏:ASAHIネットの利用者は法人の割合が多く、特に中小企業の方々が、かなりを占めています。最近の新規契約の内容を見ていると、オフィスだけでなく、工場や倉庫、店舗など、監視の自動化などを目的に、IoT機器の接続を主目的としていると思われる契約が目立ちます。

 そういった利用者の皆様に、インターネットをより役立てていただくためのサービスを提供していきたいですね。「フレッツ 光25G」のような高速回線への対応や、AIの活用のような最新のテーマがある一方で、インターネットをまだまだ活用しきれていない企業も多いと感じていて、そのような企業の現場に向けて、お手伝いをしていきたいと考えています。

 当社のサポート窓口に寄せられる問い合わせでは、パスワードが分からないとか、ルーターの調子が悪いとか、そういった、いわば初歩的なものも多いのですが、通信環境をまだまだ本当の意味で「空気のような存在」にはできておらず、ストレスを感じていらっしゃる方が確実におられる、ということでしょう。通信インフラ事業者ができることは、まだあると考えられます。

 サイバー攻撃や情報流出などの問題も注視していますが、特にここ1年ほどでは、その増加が目立ちます。高度なセキュリティの問題については、自社内で十分に対処できる企業ばかりではなくて、小規模な企業、特に非IT企業では、自社での手当てが難しい。そこをサポートできるサービスを提供して、インターネットの安全性を底上げしたいと考えています。

 総務省などが実施している「NOTICE」では、脆弱性がある機器や悪用されている機器の利用者への通知対応をISPが行いますが、そこで起きている事象は意外とシンプルなものが多いです。機器を初期IDとパスワードのまま利用していたりして、確かに、上りのトラフィックが(悪用する攻撃者が行う通信のため)増えていたりする。そういったレベルからの底上げができるサービスがあるべきだと思いますね。

【NOTICE】

総務省、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、一般社団法人ICT-ISACの連携による、セキュリティリスク観測・啓発プロジェクト。国内の家庭や企業にあるルーターなどのIoT機器をスキャンし、脆弱性やマルウェアへの感染が観測された場合、利用しているISPを通して通知される。
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——十分に対策できる大手企業ではなく、手薄になりがちな取引先の中小企業から狙う、というサプライチェーン攻撃の手口がある中で、中小企業のセキュリティは重要な課題ですよね。そうした流れでは、経済産業省などがSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)を主導している動きもあり、まさに注目が集まりつつあるのかなと思います。

小松氏:多くの攻撃はインターネットを通じて行われますし、セキュリティには専門知識が必要ですから、ISPが積極的に中小企業を支えていくのは、理にかなっていると思います。この1~3年は、そういったところで足元を固めることが重要になると考えています。

 実は、過去には失敗もあって、IPoE接続の提供を始めた頃に、接続方式が変わることもあって、いわゆる「ひとり情シス」で運用されている現場を想定した、中小企業向けのサービスを提供したことがありました。当時はあまりいい販売成績をあげられませんでしたが、それから10年ほどが経って、あらゆる企業にとって通信インフラの重要性は圧倒的に高まっており、情シスの役割もそれだけ重要になっています。

 ですが、求められる業務も複雑になっていますから、すべての企業で対応する情シススタッフを配置できるかというと、難しいところですから、サービスが受け入れられる土壌はあるのではないかと思います。

 もちろん、法人だけでなく家庭のセキュリティも重要です。家庭でご利用されているお客様にも、トラブルシュート情報の提供など、新しくできることを考えたいですね。

【SCS評価制度】

サプライチェーン全体のセキュリティ強化を目的として、経済産業省とIPA、および国家サイバー統括室(NCO)が主導し、2026年度内のスタートを予定している制度。発注企業と受注企業の間で要求する/整備すべきセキュリティ基準を明確化する。
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「そこ(小規模だったり非IT企業だったりして、自社でサイバー攻撃への十分な対応が難しい企業の課題)に手を当てられるサービスを提供して、インターネット環境の安全性の面で底上げを図りたいと考えています」(小松氏)

現場の問題に「半歩ぐらい先回り」したサービスを提供できる体制にしたい

——さらにもう少し先の、5~10年後に予想される環境変化と、それへの対応についてお聞かせください。

小松氏:新しい通信技術が数々登場し、新しいニーズも生まれてくるものと思います。さらに進化したAIですとか、量子コンピューティングですとか、そういったところに取り組む意義も大きいと思いますが、先ほどもお話ししたような中小企業のお客様においては、もっと現実的な困りごとがたくさんある、というのが実態だと思います。

 現場では日々発生する、切実な問題があるはずです。お客様から当社にご相談をいただいたとき、それに半歩ぐらい先回りしてサービスをすでに開発していて、すぐに提供できるようにしたい。そういった調査やサービス開発ができる体制を整えようとすると、5年ぐらいは必要なのではないかなと思っています。

 例えば、工場や倉庫などに導入されているお客様にとっては高温・低温環境下での運用がシビアな課題になりますが、そのような環境に対応し、安定して運用できる、しかも導入しやすい手頃なソリューションをすぐに提供できれば、安心してご利用いただけるようになります。

——なるほど。確かに、そのような「半歩ぐらい先」の課題はたくさんありそうに思われますね。そうした課題は意外と可視化されず、突き当たるまで気付かれない、ということもありそうに思いますが、メディアとしても情報提供に力を入れるべき分野ではないかと思います。

小松氏:それは有難いですね。人にそれぞれ運命として受け止めるべき役回りがあるように、企業にも、それぞれの役割分担があると思います。

 今は、事業継続のために通信環境が欠かせないものとなっていますが、セキュリティなど多くの課題も抱えています。誰かがそこにある課題の解決に取り組まなければならず、それは、多くの中小企業のお客様にお使いいただいている当社の役割と考えるべきではないかと考えています。

 とはいえ、AIの活用などでサービスの開発スピードは上げられるとしても、1つのチームで数カ月に1つぐらいのリリースしかできないでしょうから、いま目の前にある課題を考えると、5年も10年もあっという間でしょうね。

「現場で日々発生する問題に、半歩ぐらい先回りしたサービスを提供できる調査やサービス開発ができる体制を整えようとすると、5年ぐらいは必要だと思っています」(小松氏)

技術スタッフがみんな「フレッツ 光25G」の検証に

——一方で「フレッツ 光25G」対応などは、半歩どころか一気に15歩ぐらい進んでいる感もあります。

小松氏:そうかもしれません(笑)。新しい技術にしっかりと対応することは、基礎力の蓄積として大切です。「フレッツ 光25G」に関しては、偶然にも本社が提供エリア(東京都中央区の一部)だったので、いち早く対応できたという面もありましたが、技術メンバーは非常に楽しんでやっていました。

 楽しめるというのは、いいことです。新しい技術も、ビジネスとしてどう成立させるかという視点で見る必要がありますが、それと単純に「仕事が楽しい」ということは、両立するものだと思います。

 社内に「フレッツ 光25G」を導入した直後には、皆、そこまでやらなくてもいいというレベルまで細かく調査・検証していましたが、やはり新しい技術、しかもシンプルに「速い」技術は興奮しますよね。当社はあまり組織として大きくないので、新技術が入ったときに、興味があれば誰もが実際に触れられるというのも、いいところかなと思います。

「新しいことにチャレンジする姿勢」がサービス開発力の源泉

——最後の質問に移らせていただければと思います。30年後の2056年頃に、インターネットあるいは世界はどのように変わり、そのときにユーザーとどのような関係を築いていたいと考えられますか?

小松氏:まずはお客様との関係の前に社内の私たちが、という話になりますが、常に世の中の変化に興味関心を持ち、新しいことにチャレンジする姿勢を持ち続けたいですね。

 インターネットが普及し始めてからこれまで、振り返ってみると、全てモバイル通信になってしまうかと思われた頃もありましたが、今でもISPや光回線が残っています。この先にも新しい技術は出てくるのでしょうが、一定の割合で、光回線の需要は残り続けるのだろうと思います。

 40年ほど前の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」では、当時から25年ほど後の世界が描かれていました。そこで登場していたスケートボードで空中を飛ぶ「ホバーボード」は、現在のドローンの技術で8割がたは実現できていると思いますが、かつてはSFの世界にしかなかったものが、実際に実験・開発され、現実のものとなっていっていて、タイムマシンが実現する可能性はまだ見えませんが、AIなどもSF作品で見たように普及していくのだろうと思います。

 ASAHIネットがそうしたもの自体を開発することになるわけではないと思いますが、サービスとどう関係してくるかは分かりません。変化に関心を持ち続けることで、いち早く、いい形で関わることができるのだろうと思います

——その関心というのは、ITの領域に限らずでしょうか。

小松氏:そうですね。当社ではパソコン通信の時代から、企業理念として「交流と創造」を掲げています。社員である私たちも、利用者である会員の皆様、ステークホルダーの皆様と積極的に交流し、新しいことにチャレンジし、何かを創造していく。この姿勢が大切であることは、これまでも、これから30年先も変わらないでしょう。

 「フレッツ 光25G」対応というチャレンジも、実施を決定した時点ではまだ事業計画などはなくて、とにかくチャレンジして、そこから見えてくることもある、やってみなければ分からない、と。

——「やってみなければ分からない」というのは、初期のインターネットにあふれていたスピリットですが、あまりにも複雑化し、多くの利害が絡むようになってしまった今では、なかなか持ち続けるのが難しいものかもしれません。30年記念というタイミングで、あちこちでお話を伺っていて、そう感じることがしばしばあります。

 しかし、新しいものを生み出すには「やってみなければ分からない」という姿勢は大切で、今であれば、トップがそういう環境を作って守ることで、組織の中で涵養されるんだろうという気がしますね。

小松氏:朝日ネットは1990年に、朝日新聞社の社内メンバーによって立ち上げられたのですが、当時の立ち上げをリードした技術スタッフの話を聞く機会がありました。すると、やはりそういう考えなんですよね。「やってみなければ分かんないでしょ」「まずはコードを書きなさいよ」と。そして、その後で対応を考える。やはりこういう思考がないと、新しい領域へのチャレンジは、なかなかできないのだろうなと感じます。

 今はあらゆる情報があり、はじめから正解を見つけやすくなっていますが、そうなると「正解を遂行する」という思考が強くなってしまうのは、少し問題だなと感じています。遠回りしても、もう少しチャレンジすることが必要でしょう。

 おそれずに失敗を経験し、改善していくことを繰り返して力を付けていくことは、特に若手のメンバーには求めていきたいです。当社では「manaba」(マナバ)という教育支援サービスも手がけていますので、よく考えるのですが、やはり「正しい答えを教わって遂行する」ことと「自分で考え・試行錯誤した結果として正しい答えに辿り着く」ことでは、体験としてのレイヤーが違うのです。

 昔はそもそも試行錯誤するしかなかったという面もあるでしょうが、試行錯誤できる環境のいいところは、今でも取り入れる意義があるのだと感じています。

「おそれずに失敗を経験し、改善していくことを繰り返して力を付けていくことは、特に若手のメンバーには求めていきたいです」(小松氏)

「交流と創造」そして「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」を実践

——企業理念の「交流と創造」について伺いましたが、30年後を見据えたユーザーとの関係も、この「交流と創造」が理想となるでしょうか。

小松氏:そうですね。利用者の皆様はもちろん、ステークホルダーの皆様と広く・深く交流させていただき、そこから新しいものを創造していくことで、30年後にもサービスを続けられているのではないかと。

 そして、当社のコーポレートメッセージは「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」です。これを実践するには、この先に何を「つなぐ」ことが求められているのか、お客様やステークホルダーの皆様の声を聞きながら考える必要があるでしょう。そのために、私たち自身が行動を見つめ直していきましょう、という話を、社内でいつもしています。

 「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」の実践は、能力というよりも態度の問題で、まずは気持ちをその方向に向けて進んでいく必要があります。その先に見つかったものは会社として受け入れるので、まずはやってみましょうと、そのように声をかけています。

——ありがとうございました。

「『つなぐをつくる、つなぐをささえる。』の実践は、能力というよりも態度の問題で、まずは気持ちをその方向に向けて進んでいく必要があります」(小松氏)