INTERNET Watch 30周年記念インタビュー

「神風」に乗ったSo-netと、「挑戦」として生まれたNURO 光、両サービスが見据える30年後~ソニーネットワークコミュニケーションズ

それぞれの視点から目指す「ソニーグループ企業らしさ」とは

写真左から、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 執行役員 ISP事業部/営業部門/事業開発部門担当 営業部門 部門長 大津康治氏ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 執行役員副社長 NURO事業担当 ビジネス推進領域担当 共創事業担当 永井直紀氏

 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は、「So-net」と「NURO 光」を提供する事業者だ。So-netは1996年にスタートして今年で30周年となり、NURO 光は2013年にサービスを開始している。

 どちらも家庭からインターネットを利用するためのサービスだが、そもそも、なぜ1つの会社が2つの似たサービスを手がけているのか? と疑問に思う人もいると思われる。まずはこの点を、簡単におさらいしておこう。

 私たちが家庭から光回線でインターネットに接続するためには、家から通信ケーブルをインターネット接続サービス事業者の拠点までつなぎ、さらに、接続事業者の拠点からインターネットにつなぐ。前者は、街中にくまなく光ファイバーケーブルを敷設していく必要がある「光回線」サービス、後者は、多くの家庭や企業の回線を束ねて、インターネットへと接続する「ISP」(インターネットサービスプロバイダー)と呼ばれるサービスだ。

 このように、私たちがインターネットに接続するには光回線とISPが必要だ。とはいえ、一般の利用者にとっては光回線とISPを分けて考えるのはややこしく、多くのサービスでは、ISPが光回線もまとめて契約できたり、光回線を契約すると自動的にISPも契約できたりして、分けて考えないで済むようになっている。

 So-netはISPで、家庭向けの光回線サービスが存在しなかった昔から、アナログ回線などを利用して提供されてきたサービスだ。現在は、NTT東西の光回線「フレッツ光」やauの光回線「auひかり」と組み合わせて提供されている。

 対して、NURO 光は、光回線もISPも、両方ともソニーネットワークコミュニケーションズが自前で提供している。So-netがあるのに両方とも自前で提供するサービスを立ち上げた理由やその意義は、今回のインタビューで語られる。

光回線とISPのイメージ。接続拠点から各家庭までに回線を敷設する光回線サービスと、接続拠点からインターネットに接続するISPのサービスは別のサービスとして提供されることもある。ただし、So-netでは光回線(フレッツ光/auひかり)と組み合わせ、まとめて契約できる。NURO 光は両方が一体となったサービスとなっている

 と、いうわけで、今回はソニーネットワークコミュニケーションズで現在So-netを担当する大津康治氏(執行役員 ISP事業部/営業部門/事業開発部門担当 営業部門 部門長)と、NURO 光を担当する永井直紀氏(執行役員副社長 NURO事業担当 ビジネス推進領域担当 共創事業担当)に、それぞれお話を伺った(聞き手:本誌編集長 山田貞幸 写真・構成:村上俊一)。

INTERNET Watchは、2026年2月に30周年を迎えた。激しい変化が続き「今」を追いかけるだけで精一杯となりがちなインターネット業界周辺だが、本企画では主要プレイヤー各社に「これまでの最大の転機」と「今後30年先までの見通しや想像するイメージ、あるいは夢」を伺いながら、読者の皆様とインターネットの未来像を共有することを目指す(インタビューの一覧はこちら)。

インターネット黎明期、「神風」に乗ったSo-net

——まず、現在So-netを担当されている大津さんにお話を伺います。So-netは今年で30周年を迎えられましたが、これまでで「最大の転機」を挙げるとすると、何になるでしょうか?

大津氏:So-netは提供開始直後の1997年頃から、大変な勢いで成長しました。メールソフト「PostPet」とPC「VAIO」という要素が噛み合った、後から思えば「神風」に乗っていたかのような時期です。その後、いくつかの転機と言える業界の大きな転換があり、今はISPとしてのアイデンティティを構築し直そうとしています。

 ピンクのクマ「モモ」がメールを運ぶ「PostPet」は、1997年1月にMac版、同年7月にはWindows版のベータ版が公開され、どちらも数カ月後に製品版が発売されます。それまでの無機質なメールの印象が可愛らしいものに変わり、多くの方に、インターネットに興味を持っていただくきっかけになったと思います。

 VAIOブランドは1996年に海外で誕生し、日本では1997年7月にノートPCなどの第一弾が発売されました。その後「VAIO NOTE 505」が人気になるなどして、それまで長く手掛けてきたソニーのPCの中でも、特に大きなヒットになりました。

 当時はVAIOを買って、So-netでインターネットに接続してPostPetを使うというお客様が多かったのです。スタイリッシュなPCであるVAIO、楽しいメールソフトのPostPetといった強いブランドがあり、それらを活用するためのインターネット接続サービスといえばSo-netということで、勢いがありました。

大津康治(おおつ こうじ)氏。1991年に日本テレコム(現ソフトバンク)に入社し、ISP事業「ODN」の立ち上げに携わった後、2002年にソニーに入社し、「VAIO」の商品企画に携わる。2005年からソニーネットワークコミュニケーションズで、So-netの光ファイバー接続事業の立ち上げ、2012年には、NURO 光の立ち上げにも関わっている。2021年からはISP事業部トップとして執行役員を務める。現在、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 執行役員 ISP事業部/営業部門/事業開発部門担当 営業部門 部門長。ジョギング、自転車、水泳、絵画鑑賞が趣味で、毎年1回以上フルマラソンに参加している

——当時、私は大きなサイズの「VAIO NOTE 707」を買いました。未来感のあるデザインで、パフォーマンスも申し分なく、いいPCでしたね。PostPetのパッケージ版は確かCD-ROMが2枚入っていて、友達に1枚あげてメールのやり取りを楽しみましょう、という仕掛けになっていたと思いますが、上手いなと思いました。親しくなりたい人を「PostPetをやってみませんか?」と誘うきっかけにもできたり。

大津氏:PostPetの立ち上げについてはちょっと逸話があって、PostPetの企画ははじめ他社に持ち込まれたのですが、ビジネスとして成功する目途が立つのか? という議論になり、そちらでは実現できなかったそうです。

 その後、So-netに持ち込まれ、当時ソニー・ミュージックから出向していた人物が企画を見て「面白い」ということで、当時の社長にも掛け合って、商品化が実現しました。

 メーカーや通信事業者の価値観では、堅実にビジネスとして成功できるのか? という点で周囲を説得できないと企画を通しにくいものですが、エンターテインメント畑の人がいて、「面白いから」で通せたというのが、さまざまな人材がいるソニーグループの面白さであり、それが生きた事例だったなと思っています。VAIOも、PCの中で「かっこいいデザイン」を重視したというのは、当時の他社にないソニーグループ企業らしさだったと思いますね。

【PostPetとVAIO】

INTERNET WatchではPostPetの公開当初より複数の記事で取り上げているが、1997年11月にWindows/Mac両対応のパッケージ版「PostPetDX」が発売になった際のニュースでは、秋葉原で行われたイベントの様子も紹介している。また、PC Watchでは、1997年11月にVAIO NOTE 505(型番「PCG505」)の発売をニュースで報じている
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大津氏:その後、2000年を過ぎてブロードバンドの時代になると、ISPの選び方が変わってきます。最初に回線(当時であればADSL事業者)を決めて、次にISPを決める、という時代になり、販路の主導権が回線事業者に移って、ISPは差別化が難しくなりました。

 2000年代後半にはスマートフォンの普及が始まり、インターネットを利用する手段が固定回線だけではない、という状況になります。さらに、メールサービスとして各種フリーメールが登場し、ISPのメールアドレスに愛着を持つ方も少なくなって、ISPの差別化はさらに難しくなってきている、というのが現状です。

「速さ」にこだわった新たな挑戦としての「NURO 光」

——続いて、現在NURO 光を担当されている永井さんに伺います。ソニーネットワークコミュニケーションズの歴史の中で「NURO 光の立ち上げ」は、 ひとつの大きな転機となりそうですね。

永井氏:そうですね。まず「サービスを開始したこと」が、1つの大きな転機と言えると考えていました。

 NURO 光がサービスを開始した2013年当時、日本のPON(Passive Optical Network:ここでは、光回線事業者の局舎から回線を分割し、各家庭まで光信号を届けるネットワークのこと)の標準規格は下り最大1Gbpsの「GE-PON」でした。ところが、NURO 光は下り最大2Gbpsまで出せる、世界標準の「G-PON」を採用し、「速さ」を売りにしたのです。

 これについて、当時は「本当にこんな高速な回線を何に使うの? 必要あるの?」と、オーバースペックだとの指摘をたくさんいただきましたが、近い将来に必ずこれが標準になると信じ、それをいち早く提供する挑戦をしました。

 このことによって、時代をリードする通信インフラを提供するため、挑戦的な取り組みをしていくという、今も受け継がれるNUROのDNAが生まれました。

【NURO 光の立ち上げ】

INTERNET Watchでは2013年4月に行われた「NURO」ブランドおよび「NURO 光」の発表会をレポートしている。また、同年8月には「清水理史の『イニシャルB』」で、NURO 光を導入してレビューしている。
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永井直紀(ながい なおき)氏。NURO 光の挑戦を知り、自分も携わりたいと2014年にソニーネットワークコミュニケーションズへ入社。初期からNURO 光に携わる。少ない消費電力で広域の通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area/低出力長距離通信)を使ったソニーの新通信規格である「ELTRES」の通信サービス立ち上げや、Local5G事業の立ち上げにも携わった。工学部に在学中には、当時はまだめずらしかったIP通信上で電話ができるIP電話の技術に興味を持ち、IP電話の通信プロトコルのシーケンス(手順)を解読したりしていたという。現在、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 執行役員副社長 NURO事業担当 ビジネス推進領域担当 共創事業担当

永井氏:NURO 光としての最大の転機は、2023年に「10Gbpsのサービスをスタンダードにしたこと」です。

 コロナ禍で社会的な大転換が起きた中、デジタル化が一気に進みました。テレワークやWeb会議、動画配信の利用が増え、通信需要が大幅に伸びた中で、この先を見据えて、(ただエリアを広げるのでなく)10Gbpsのサービスの提供エリアを全国に広げていくことに取り組み始めました。この頃以降に提供を開始したエリアでは、10Gbpsのプランだけしか提供していないエリアもある状態です。

 この頃、10Gbpsの速度でないと楽しめないだろうというキラーコンテンツがあったわけではなく、オーバースペックなのではないかという議論は社内でもあった中での挑戦となりました。しかし、それまでの経験から考えても、時代はすぐに追いつくだろうと、思い切って実行に踏み切ったのです。

ISPの成功のカギは「着せ替え人形力」

——立ち上げ期の「神風」に乗った時代を過ぎ、課題に向き合うSo-net、そこから回線まで自前で提供する新たな挑戦としてのNURO 光と、それぞれの現在地が見えてきました。続いて、この先1~3年ぐらいの間に予定されている、新たな取り組みなどについてお聞かせください。

大津氏:個人的に、インターネットに携わるようになって以来、ずっと感じているのが、ISPのKSF(Key Success Factor:重要成功要因)は、「着せ替え人形力」である、ということです。ISPに限らずインターネットの世界は、流行の入れ替わりが目まぐるしい。そうした中で、この先に何が来るかを目利きして、それを誰よりも早く実装していくことが、生き残りには必要だと。

——So-netは現在「ソニーグループの感動を、届けるネット So-net」というタグラインを掲げていますね。これは「ソニーグループの感動」を届けるネット、という、ソニーグループの強み、ソニーグループが持つコンテンツとの連携をアピールするものだという説明を、以前に伺いました。

大津氏:先ほども申し上げたように、現在、ISPは差別化が難しくなっています。そうした中で、お客様からはSo-netに「ソニーグループ企業らしさ」を期待する声を、今もいただいています。

 そうした声に、どのように応えていくか、サービスの設計もプロモーションも含めて、ソニーグループ企業らしさ、ソニーグループ企業品質をお届けし続けたい、という強い思いがあります。

「サービスの設計もプロモーションも含めて、ソニーグループ企業らしさ、ソニーグループ企業品質をお届けし続けたい、という強い思いがあります」(大津氏)

インフラ領域に留まらず、新しい体験や価値の創造を目指す

永井氏:NURO 光では、自前の高速回線を差別化の軸としながら、インフラの領域に留まるのでなく、通信による新しい体験や新しい価値の創造に踏み込んでいきたいと思っています。ここで最大の武器になると考えるのが、ソニーグループの一員であるということです。

 ご存知の通り、グループ内には音楽やゲームなどエンターテインメントに取り組む組織もあり、彼らの活動もインターネットと深い関わりを持つようになっています。そうした分野にネットワーク環境のレベルから関わり、直近では音楽フェス「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」や「東京ゲームショウ2026」で、通信インフラのサポートを行っています。

 また、2026年内にはゲーム関連のサービスを出していきたいと考えており、準備を進めています。

 並行して、基盤となるインフラそのものの拡大も最速で進めています。今年のはじめ(2026年1月30日)発表した、ソフトバンクと当社の間での合弁会社設立もその一環です。

【ソフトバンクとの合弁会社設立】

ソフトバンクが2026年1月に発表している(会社分割(簡易吸収分割)によるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社との合弁会社への事業承継に関するお知らせ)。両社が保有する加入者終端装置(OLT)の構築・管理・運用に関する機能を担う合弁会社に集約し、ユーザーへの提供価値の向上を図るとしている。

永井氏:エリアの拡大についても、引き続き進めていきます。長らくお待たせしてしまっているエリアもありますので、スピーディーに快適な環境を届けていきたいと考えています。

——利用者の視点では、NURO 光はオンラインゲームに強いイメージがあると思います。この点を押し出していかれることはありますか?

永井氏:エンタメ全般に取り組んでいく中で、もちろんゲームも重要なものと位置づけ、現在でもさまざまな取り組みを行っています。また、ゲームに強いという評判は大変に有り難いことで、今後も期待にお応えしていきたいと考えています。

 ただ、ゲームに特別に注力する、ゲームに特化したブランドを目指す、といった方向性では考えていません。

「通信による新しい体験や新しい価値の創造に踏み込んでいきたいと思っています。ここで最大の武器になると考えるのが、ソニーグループの一員であるということです」(永井氏)

遠くない将来に見えている課題に、今から備える

——続いて、さらに先の5~10年後に予想される環境変化と、それへの対応についてお聞かせください。

大津氏:現在、家庭でのインターネット接続環境も10Gbpsが当たり前になりつつあり、NURO 光ではすでに10Gbpsを中心として提供するようになっています。2030年代にはおそらく、25Gbpsとか50Gbpsといった、さらに高速な回線が当たり前になるでしょう。

 So-netは家庭から接続する回線は扱いませんが、ISPとして、高速な回線でやり取りされる大量のデータをインターネットとの間で仲介する環境は構築しなければなりません。一方で、現在1Gbpsのプランと10Gbpsのプランで料金設定に大きな差がないように、高速サービスだから値上げします、というわけにも行かないでしょう。

 ビジネスとして単純に言えば、売上は大きく増えないけど、投資は増やさざるを得ない。そうした中で、どのようにサービスを設計するかを、長期的な視点で考える必要があるなと思っています。

 また、セキュリティに対しても投資していく必要があると考えています。高性能のAIも、高速な回線も、悪用されたときの脅威はそれだけ大きくなり得ますから。そちらも課題となりますね。

「売上は大きく増えないけど、投資は増やさざるを得ない。そうした中で、どのようにサービスを設計するかを、長期的な視点で考える必要があるなと思っています」(大津氏)

永井氏:5〜10年というスコープで見ると、安全性がNURO 光にとっても重要な課題になるだろうと考えています。

 AIは間違いなく、社会の心臓部に凄まじい勢いで浸透していくでしょう。というよりも、すでに浸透し、この先さらに広い範囲に深く入り込むでしょう。インターネットの主たる用途にAIが完全に組み込まれる時代になると、今のネットワーク構造やセキュリティのままで、本当に大丈夫なのか、耐えられるのか? という問題があります。

 これまでは、速度やエリアの拡大が競争において重要でしたが、これからは用途にも焦点を当て、いかに安全で強固なインフラを構築するかという、ネットワークの本質的な問いとも言える課題に向き合っていかねばならないでしょう。

 そこには、構造的な難しさもあります。物理的な回線網の構築は年単位で考える必要があり、中には5年単位のスパンで考える必要がある分野もあります。一方でAIの進化スピードは速すぎて、5年後はどうなっているか、誰にも分からないでしょう。不確実性の高い未来に向けて、リアルなニーズを徹底的に捉え、アジャイルに適切な対応ができるようにしたいと考えています。

「いかに安全で強固なインフラを構築するかという、ネットワークの本質的な問いとも言える課題に向き合っていかねばならないでしょう」(永井氏)

インターネットの本質に照らし、独自性を保ちたい

——最後の質問に移ります。30年後の2056年頃に、インターネットあるいは世界はどのように変わり、そのときにユーザーとどのような関係を築いていたいと考えられますか?

大津氏:ISPがインフラの部分で差別化するのは、さらに難しくなると考えています。これは携帯電話業界で1周先に起きてるように見えますが、5Gになって差別化が難しくなってくる中、設備を一本化する動きがありますね。差別化ができていない領域には投資するモチベーションが上がりませんし、⼈⼝減少期に投資だけ増やしても回収が難しいという問題もあります。固定通信でも設備共有は必然の流れだと考えています。

 一方で、インターネットは歴史的に「自律・分散・協調」が原則であり、ISPの本質とは何かと考えると、各社が独立した、異なるAS番号のネットワークを運用しているところにあるのではないか、とも考えられます。私としても現時点では、この本質を尊重するのがいいのではないかと、つまり、So-netとしては、共有すべき領域はシェアし、「⾃律・分散・協調」の本質を維持する領域は自前で運営していくのがいいのではないかと考えています。

 ユーザーの皆様の視点では意識されることのない、事業者のこだわりの部分ではありますが、So-netはTier 2のISPで、AS番号は2527です。ブロードバンドが普及して以降、全てのサービスを自社のASで提供する体制でなくなったことも、内部的には大きな転機でしたが、長年ネットワークに携わってきた者としては、いろいろな組織がそれぞれにASを持ち、組織ごとの考えに基づいて協調しながら運用していくのが、インターネットの本来あるべき姿ではないかと思います。

【Tier 2、AS番号】

ISPでいうTierとは、複数の組織によるネットワークのつながりで構成されるインターネットにおいて、簡単に言って「階層」を表す。Tier 1のネットワークはインターネットの中心部を担い、世界で15組織しかなく、日本ではNTTグループのグローバルIPネットワークのみ。So-netおよびNURO 光などの大手ISPはTier 2で、多くのユーザーに通信インフラを提供する役割を担う。

「AS番号」は「Autonomous System Number」(自律システム番号)の略で、インターネットを構成するネットワークに対し、組織ごとに割り当てられる識別子。インターネットの黎明期から世界全体で順番に割り当てられており、番号が若い(数値が小さい)ことは、それだけ歴史あるネットワークであることを意味する。So-net(NURO 光も同じAS番号であり、これはソニーネットワークコミュニケーションズのAS番号)の2527は、先述したNTTグループのグローバルIPネットワーク(2914)よりも若い

大津氏:そのようなことも考えてはいますが、ユーザーの皆様にとって、まず経済的に魅力的でなければ、そもそもの選択肢に入れていただけません。その点をクリアしつつ、ソニーグループ企業らしさを感じていただける魅力的なISPであり続け、長く使い続けていただきたいと考えています。

「インターネットは歴史的に『自律・分散・協調』が原則であり、ISPの本質とは何かと考えると、各社が独立した、異なるAS番号のネットワークを運用しているところにあるのではないか、とも考えられます」(大津氏)

NUROの「挑戦し続ける」姿勢を、30年後にも崩さずに

永井氏:はじめにも申しましたが、NUROのDNAは挑戦し続けること、どんな壁にぶつかっても試行錯誤しながら、進み続けることです。30年後のビジョンを描くことも、もちろん大切だと思いますけれど、私たちとしては、挑戦し続ける姿勢をこの先30年後も崩さないことが、最も大事なことだと考えています。

——なるほど。誰しも、一定の成功を収めれば守りに入ってしまいがちですね。

永井氏:30年後を想像するのは本当に難しいことですが、インターネットは「つなぐ」ものというよりも、そこにあるのが当たり前の空気や水のような感じになっているのではないかと思います。物理空間とデジタル空間の境界が、消滅していく感じでしょうか。

 通信の制約とか技術的な壁を、ユーザーの皆様が一切意識することなく、人や組織が本来持っている創造性であったり、情熱であったりを最大限にまで解き放つ、という感じですかね。通信インフラとしての存在は、黒子のようになって目に入らないようになりつつあるかもしれませんが、ユーザーの挑戦や豊かな生活、ここをですね、一番近くでエンパワーメントしていく、絶対的に信頼される存在であり続けたいと思っています。

——NURO 光は定評もある一方で、批判の声が大きく上がることも時々あるかと思います。そのような声に対しては、どのようにお感じでしょう?

永井氏:数多くの挑戦のなかで必ずしも全てが順調であったわけではないと認識しており、お客様にご不便をおかけしたことについては、大変申し訳なく思っております。ユーザーの皆様からの声は真摯に受け⽌め、改善に取り組みつつも、今後も挑戦的な取り組みは続けてまいります。

 NURO 光はあの頃が良かったよね、と言われるような存在になるよりは、技術や時代がどう変化していっても、NUROは変わらず、新しいことに挑戦しているなとか、いつも面白いことをやっているなと、そのように見ていただける存在でありたいと思っています。そして、30年後も、相変わらず面白いことをやっているなと思われる存在であり続けたいですね。

——ありがとうございました。

「30年後も、相変わらず面白いことをやっているなと思われる存在であり続けたいですね」(永井氏)