【特集】

PCを持って街に出よう~2001年ホットスポット・インターネット事情

 2001年は、ADSL回線の急激な普及があり「ブロードバンド元年」と呼ばれることがある。実際に、ADSLやFTTH回線を導入し、動画やゲームといった娯楽コンテンツを楽しんでいるユーザーも多いようだ。

 その一方で、アクセス回線に無線をつかったワイヤレスインターネット接続の実証実験が多く行なわれた年でもあった。いずれも実証実験、もしくはフィールド実験という形で試行されているが、商用サービス化を目指して行なわれているものだ。

 一口にワイヤレスといっても、さまざまな無線技術が用いられている。主流となっているものは、家庭内LANにも浸透し始めたIEEE802.11b準拠の無線LANだ。また、これと同じ周波数帯(2.4GHz)を用いるBluetoothを利用した実験「B.L.T」も行なわれた。さらに、NTTは5.2GHz帯を利用した独自無線技術AWA(Advanced Wireless Access)による実験「Biportable」を、東京・渋谷エリアを中心にして行なった。今回は、これら2001年に実施されたワイヤレスインターネットの実証実験を振り返りながら、近い将来のサービス化について考えたいと思う。

●IEEE802.11bを利用したホットスポット実験


 無線LANの代名詞ともなった無線技術が、IEEE802.11bだ。2.4GHzという誰でも免許を取得する必要なく利用可能なISM帯(産業科学医療バンド)を使い、スペック上の最大通信速度は11Mbps(ただし、実効速度は4Mbps程度で、1アクセスポイント(AP)あたりのユーザー数が増えると帯域をシェアするので、さらに遅くなる)。すでに、APやクライアント端末が数多く市場に流通しており、比較的安価に入手することができるので、ホットスポットサービスが商用化された場合にも敷居が低いという利点がある。

 また、次世代の無線LAN規格と予想される5.2GHz帯を利用したIEEE802.11aは、今のところ電波法により屋外での利用が禁止されているが、IEEE802.11bでは問題なく利用できる。そのため、ホテルのロビーや飲食店などのスポット的な利用形態だけでなく、モバイルインターネットサービス株式会社(MIS)が提唱する「街角無線インターネット」のような“面”での無線接続も考えられている。

 ところが、落とし穴も存在する。ISM帯は電子レンジなども利用しているほか、他の無線LANユーザーとの混信や電波の干渉が起こりやすく、品質保証がない。また、もともと限定された環境で使われることを想定している技術なので、パブリックスペースでのユーザー認証の貧弱さ、無線機器の盗難などによる「なりすまし」問題など、セキュリティ面に関して危険性が指摘されている。

 IEEE802.11bの基本的なセキュリティ設定は、主にSS-ID(もしくはESS-ID)、WEP、およびMacアドレスの三つが利用される。SS-ID(Service Set ID)とは、同じIDを持つAPや無線LANクライアント同士で通信できるようにし、それ以外のIDを持つ機器からのアクセスを防ぐものだ。ESS-ID(Enhanced Service Set ID)は、複数のAP間を自由に移動できるローミング機能が追加されている。

 WEP(Wired Equivalent Privacy)は、RC-4という暗号化方式で無線区間のデータの暗号化を行なう。40bitの鍵長が使われることが多いが、現在の製品には64bitや128bitに対応したものもある。40bitのWEPキーは、英数字の場合5文字、もしくは10桁の16進数で設定されるが、同じキーを利用し続けるので解読される恐れがある。また、WEPを使うとスループットが遅くなるという欠点もある。

 Mac(Media Access Control)アドレスとは、無線LAN製品に限らず有線LAN製品にも割り当てられている機器固有の番号だ。番号は、16進数を使い「aa-aa-aa-bb-bb-bb」と表記される。このうち、aaで表された部分がメーカー番号、bbの部分が固有の番号になっている。

 ホットスポット実験では、モニター申し込みの時点でMacアドレスを登録するタイプや、SS-IDとWEPによってユーザーを識別するタイプのものがある。さらに、無線がアクティブになった時点でWebブラウザー上でユーザーIDとパスワードを要求するものや、現在規格策定作業中のIEEE802.1xを利用し、ネットワーク上の認証サーバーでユーザーを識別する実験もある。

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●積極的にファーストフード店などに展開する「Hi-FIBE」(IEEE802.11b)


http://www.hifibe.net/
Hi-FIBE公式サイト

 NTTコミュニケーションズ株式会社(NTTコム)が、7月3日より東京都内で実施している公衆高速無線インターネット実験が「Hi-FIBE」だ。開始当初は、ファーストフード店「モスバーガー」5店舗(後に13店舗に拡大)での展開だったが、その後、コンビニエンスストア「ミニストップ」4店舗、コーヒーショップ「BLENZ CAFFEE」2店舗、および品川プリンスホテル別館へエリアを拡大した。

 モニター募集は随時行なっており、Wi-Fi認定を受けた無線LANカード所有者ならば誰でも参加できる。Wi-Fiとは、無線LAN製品の相互接続性を保証する団体WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)によって、接続テストをクリアした機器につけられるブランドだ。また、一般モニターへのトライアル端末として、モスバーガー門前仲町店、ミニストップ全店舗、BLENZ CAFFEE青山花茂店(ここだけMacintosh)、および品川プリンスホテルに常設端末が準備されている。さらに、「Hi-FIBE」の公式サイトには、モニターによる情報交換の場として「コミュニティスポット」という掲示板が用意されている。モニター以外でも閲覧可能なので、実験がどんな感じで行なわれているのか知るには都合がいい。

 「Hi-FIBE」では、ESS-IDとWEPによるセキュリティ対策を施しているほか、SSLを使ったユーザーIDとログインパスワードによるユーザー認証を行なっている。実験スポットまでの回線は、品川プリンスホテルを除いてADSL回線8Mbps(一部1.5Mbps)だ。品川プリンスホテルは、NTTコムのFWAサービス「エアアクセス」によるT1回線(1.5Mbps)を引いている。

モスバーガー門前仲町店 実験店舗入り口の告知(写真は市ヶ谷田谷店) ミニストップは初めてのインターネットコンビニに(写真はプラザ24神田錦町1丁目店)

 その他、モニター専用コンテンツとして、動画や音楽などのブロードバンド向けコンテンツの配信実験も行なっている。「Cinema」では、映画の予告編動画の配信や、実験店舗があるエリアの映画館案内など、「Music」では、メジャー・インディーズの楽曲の配信やランキング情報、その他、「Business」や「Sports」「Healing」「Life」といったジャンルで映像コンテンツなどを配信している。一部のコンテンツについては、Macintoshからの利用ができないものがある。

BLENZ COFFEE青山花茂店。机が広くて快適 品川プリンスホテル別館 品川プリンスのロビーにて。右下に電源タップが見える

 7月からの実験期間においては、ユーザーの電源利用に関する問題が洗い出された。ミニストップや品川プリンスホテル、モスバーガー渋谷道玄坂店、およびBLENZ CAFFEE青山花茂店では、基本的に電源利用OKとなっているが、その他の店舗では、モニターの電源利用を黙認していた。現在、モスバーガーの残りの店舗では、「Hi-FIBE」モニターによる電源利用に関して前向きに検討中とのことだが、利用にあたっては店員に確認をしてからのほうがよさそうだ。

 モスバーガー神田北口店では、12月25日よりIPv6に対応した認証ゲートウェイ実験が行なわれる。それに先行する形で12月15・16日にパシフィコ横浜で開催されたイベント「Net.Liferium」にて、会場と神田北口店を結んだIPv6による音声通信などのデモンストレーションが行なわれた。実際に音声通信を使ってみたところ、非常にクリアな音質で会話ができた。

動画でもモスバーガー神田北口店と接続していた iPAQを使ったIPv6対応音声通信ユニット

 「Hi-FIBE」の今後だが、当初の予定だった12月末終了は2002年1月以降に延期された。また、来春より商用サービスとして有料化する予定になっている。具体的な金額は決まっていないが、ハイファイブ事務局によると「ADSLサービスを下回る金額になりそうだ」とのこと。

◆実験参加店舗一覧◆
・モスバーガー:神田北口店、茅場町店、銀座六丁目店、渋谷道玄坂店、門前仲町店、目黒三丁目店、五反田東口店、市ヶ谷田谷店、神楽坂下店、慶応三田店、芝大門店、新宿西口店、麹町店
・ミニストップ:プラザ24神田錦町一丁目店、プラザ24荒川一丁目店、高井戸東三丁目店、高円寺南二丁目店
・BLENZ COFFEE:青山花茂店、新宿三丁目店
・品川プリンスホテル:別館二階ロビー

◆実験期間◆
2001年7月~

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●街角インターネットを推進するMIS (IEEE802.11b)


http://www.miserv.net/

 モバイルインターネットサービス株式会社(MIS)が提唱する「街角無線インターネット」は、屋外でも利用可能なワイヤレスインターネットを目指している。また、IEEE802.11bを使いながらも独自技術でセキュリティ面を向上させている。さらに、アクセスポイントにあたる複数の基地局ルーターをまたいでも、スムーズにローミングできる(ハンドオーバー機能)のも特徴で、通常のホットスポット実験のように“点”でのサービスだけでなく、“面”でのサービス展開が魅力的だ。

 実験は2001年5月末より実施され、モニター募集は随時行なっている。モニターになるには、WindowsマシンとIEEE802.11b対応の無線LANカードが必要で、専用ドライバーをMISのサイトからダウンロードする。この他、一般ユーザーでも利用可能なトライアル端末が、新宿・センチュリーハイアット東京のカフェ&パブ「It's on me!」と、秋葉原の「ラブロスClick & Brick」に準備されている。

屋外に設置された無線局 “面”で接続可能 ラブロスClick & Brick

 MIS独自のセキュリティ技術とは、セキュリティキーをユーザーごとに発行するほか、順次ダイナミックに変化させていくもので、WEPの弱点を克服している。また、ハンドオーバー機能によって、ストリーミングコンテンツを再生しながら、街中を移動することも可能だ。MISによると、時速60キロ程度の移動にも耐えることができるとしており、自動車からの無線接続にも期待ができる。

 東京・三軒茶屋付近での街角無線インターネットのエリアは、MISのWebサイトで確認できるように、主要道路だけでなく、商店街のアーケードや民家の路地などに広がっている。このエリアに設置されている基地局ルーターは、有線ブロードネットワークスが提供するFTTH回線(100Mbps)に接続されている。さらに街角無線インターネットは、韓国ソウル市の大学路周辺でも同様に展開されている。韓国での利用の場合は、Wireless Broadband Service社が発行するアカウントが必要になるものの、同じ技術が国境を越えて展開されることは、無線インターネットの普及にとって重要だ。

 MISによると、2002年4月より商用サービスを展開できるように、すでに事業者免許を取得したという。具体的な利用料金は明らかにされていないものの、利用しやすい価格帯で提供される見通しだ。MISの場合、あくまでも無線によるインターネットへの接続インフラを提供することを目指しており、イメージ的にはイーアクセスやアッカ・ネットワークスなどのADSL業者に近いビジネス形態をとるようだ。

◆実験提供エリア一覧◆
・三軒茶屋エリア:東京都世田谷区三軒茶屋一丁目、二丁目の一部および、太子堂二丁目、四丁目の一部
・センチュリーハイアット東京:二階ロビー、コーヒーハウス「ブーローニュ」、カフェ&パブ「It's on me!」
・ラブロスClick & Brick
・福岡IMS(イムズ)
・韓国ソウル市大学路

◆実験期間◆
2001年5月~

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●JR東日本と日本テレコムの東京駅無線インターネット実験 (IEEE802.11b)


https://www.jreast.co.jp/musenlan/

 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と、日本テレコム株式会社が、JR東京駅構内で「駅でワイヤレスインターネット体験!」と銘打ってホットスポット実験を行なっている。実際に、ビジネスマンや修学旅行に来た学生などが利用していた。

 モニターはODN会員を対象に300人が募集されたが、一般モニター向けに機器の貸し出しも実施している。実験スポットの担当者によると、認証に関してはMacアドレスを登録する手法を取っているようだ。現場までの回線にはADSL1.5Mbpsが利用されている。ただし、常設端末が設置されている丸の内地下北口改札付近「動輪の広場」のスポットには、PDA端末も含めて常設端末が8台近く置いてあり、帯域を奪い合っているせいか、350~400kbps程度の実効速度だった。

 今後は、商用サービス化をにらんでいるようで、設置場所や利用金額についてアンケート調査を行なっている。

動輪の広場(奥に見えるのがメディアスポット) メディアコート入り口。カフェ・ビズにはコンシェルジュが常勤

◆実験提供エリア一覧◆
・東京駅メディアコート(改札内):Break、カフェ・ビズ
・東京駅丸の内地下北口改札付近:動輪の広場(メディアスポット)

◆実験期間◆
2001年9月26日~12月20日

●秋葉原エリアの無線インターネット状況 (IEEE802.11b)


 “電脳都市”秋葉原にも、公衆無線LANサービスの波は押し寄せている。むしろ、他の街に比べて、ノートPCを持ち歩いている人が多い分、潜在的ニーズは高そうだ。

 中央通りソフマップ4号店地下にある喫茶店「東洋」(通称:カレーの東洋)では、IBMとイーアクセスの協力を得て、10月より無料でワイヤレスインターネット接続サービスを提供している。もともとノートPCを持ち込むユーザーが多かったことから、店内の電源利用は可能になっており、テーブルタップなども充実している。

 利用に関しては、ESS-IDを「any」モードにする。このモードは、APに対して誰でも接続可能になるセキュリティ的には危ういモードだが、店舗が地下にあり電波が外部に漏れにくいという地理的特性があり、このような運用になっている。回線はイーアクセスのADSL1.5Mbpsだ。店内には@niftyの8Mbpsコースのチラシを置いてあり、斎藤店長によると、「お客さんは8Mbpsと勘違いしているかもしれません。でも、それだけ快適に使って頂いています。将来的には、必要に応じて変更するかもしれません」とのことだった。また、無線LANサービスを開始してから、来客数も増えたとのことだ。

店頭のディスプレイに「ブロードバンドカレー」の文字 入り口をくぐると、中は広い店内 ドアを入るとすぐにADSLモデムと無線ルーターがある

 また、Linuxをテーマにしたビルの1階にある「Linux Cafe Di PRONTO秋葉原店」も、店内で無線LANを運用している。現在は、備え付けのPDAからの接続に限定されているが、2002年1月には持ち込み機器へのホットスポットサービスを展開する予定だ。なお、こちらの店舗も電源利用が可能になっている。

◆店舗情報◆
・喫茶「東洋」:東京都千代田区外神田4-4-2共益外神田ビル地下1階
・Linux Cafe Di PRONTO秋葉原店:東京都千代田区外神田3-13-2リナックスビル1階

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●フレッツユーザーを対象にしたフレッツ・スポットアクセス (IEEE802.11b他)


http://www.ntt-west.co.jp/spot/

 NTT西日本は、大阪府でフレッツユーザーを対象にしたホットスポット実験「フレッツ・スポットアクセス」を実施している。協力しているISPは、@nifty、ASAHIネット、BIGLOBE、DION、DreamNet、DS Networks、IIJ4U、InfoSphere、JENS SpinNet、OCN、Panasonic Hi-HO、SANNET、ぷららの13社。ただし、モニター募集は終了している。

 フレッツ・スポットアクセスでは、通常のIEEE802.11bを使った実験のほかに、現在規格策定作業中のIEEE802.1xを使った実験も行なっている。セキュリティに関しては、802.11bがMacアドレスによる認証を、IEEE802.1xがMacアドレス認証に加えてネットワーク上の認証サーバーを使ったユーザーIDとパスワードによる認証実験を行なっている。なお、実験では地域IP網を利用しているが、スポットから地域IP網までの回線を光ファイバーで接続している。

ロゴマーク付近が実験エリア 簡単なテーブルが置いてあるが、電源はない

◆実験提供エリア一覧◆
・阪急ターミナルビル:ロビー
・阪急三番街:南館地下2階ロブスターモニュメント前
・ホテル阪急インターナショナル:「Night & Day」
・新阪急ホテル:1階
・ロッテリア:ディアモール大阪店、戎橋店、クリスタ長堀店、心斎橋店
・NTT西日本:サイバーサテライトワールド梅田、サイバーサテライトワールド日本橋
・kinko's:東梅田店、堂島店、心斎橋店
・ハービスOSAKA:地下2階ハービスHALL
・大日本印刷:DDDマルチメディアスタジオ
・喫茶館英國屋:心斎橋店
・上新電機:J&Pテクノランド
・南海サウスタワーホテル大阪:6階メインラウンジ
・関西国際空港:旅客ターミナルビル2階(関空ラウンジ付近、東京三菱銀行前付近)

◆実験期間◆
2001年10月22日~2002年1月31日

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●Bluetoothを使った「B.L.T.」 (Bluetooth)


http://www.b-l-t.org/

 日本エリクソン株式会社、丸紅株式会社、およびハンドスプリング株式会社は共同で、Bluetoothによるインターネット接続実験「Bluetooth Launch Project(B.L.T.)」を都内各所で実施していた。また、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)が、B.L.T.の一環として山陽新幹線内で「レールスターおでかけネット」を実施している。

B.L.T.公式サイト ノートPC型モニター端末 これがレールスター。車内からインターネットに接続できれば……

 Bluetoothとは、IEEE802.11bと同じISM帯を利用する無線技術で、ノートPCだけでなくPDAや携帯電話などモバイル端末を相互に接続するものだ。最大伝送速度は、1Mbps(下り721kbps、上り57.6kbps)で、10メートル程度の近距離を接続する。次期Bluetooth(スペック2.0)では、伝送速度が2~12Mbpsに増速されるというが、現時点ではIEEE802.11bが有利だ。実際、ソニーが積極的に普及に取り組んでいるが、まだまだ浸透したとはいえない。

 東京エリアで行なわれた「B.L.T.」では、モニターが所有するBluetooth機器のBDアドレス(Bluetooth Device Adress)を登録する形でユーザーの認証が行なわれた。BDアドレスとは、Bluetooth機器固有の番号で、0~9までの数字とA~Fまでのアルファベットで構成されてた12桁の文字列だ。なお、「レールスターおでかけネット」では、実験参加は貸し出し端末からの利用のみとなっている。

 「B.L.T.」では、全スポットで閲覧できる動画などのGlobal Contentsと、スポットの地域情報を提供するLocal Contentsなどの配信実験も行なっていた。ただし、ハードの限界から、実効伝送速度は100kbps程度に落ち込んでしまう上、動画などの負荷の高いコンテンツを再生しようとすると、接続が切れてしまうことがあった。

 B.L.T.事務局によると、「実証実験は成功だった」という。この実験で得られたアンケート結果は、12月末までに正式に発表されが、ユーザーの多くは、月額利用料金500~1,000円程度を希望していたという。ただし、具体的な商用サービス化は、現時点ではない。

◆実験提供エリア一覧◆
・MARUNOUCHI CAFE(東京・丸の内)
・Communication Port www. so-net/cafe(東京・お台場)
・カクタソフマップ(東京・秋葉原)
・山陽新幹線レールスター:ひかりレールスター367号、378号の8号車

◆実験期間◆
東京エリア:2001年8月~10月(既に終了)
レールスターおでかけネット:2001年11月8日~12月20日

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●5.2GHz帯無線規格で渋谷を無線ネット化した「Biportable」 (AWA)


http://www.ntt-east.co.jp/biportable/

 NTT東日本とNTTは、3月21日より、東京・渋谷エリアで5.2GHz帯の無線技術「AWA(Advanced Wireless Access)」を使った高速無線アクセス実験「Biportable」を行なった。なお、実験はすでに終了しており、トライアル成果報告が発表されている。

Biportable公式サイト クライアントカードは、確かに大きい ちょこっとMovieは、他の実験では見られなかった仕掛けだ

 Biportableでは、NTT情報流通基盤総合研究所が開発した独自の無線技術「AWA」が使われた。現行の電波法では5.2GHz帯を使う無線は屋外の利用が許されていないので、あくまでも渋谷にある建物の中での実験となった。また、ホットスポットだけでなく、モニターの家庭(11世帯)や企業(4社)、大学(1校)にも実験端末を配布(ノートPC120名、PDA96名)し、動画などのブロードバンドコンテンツを用いたコミュニケーション実験も行なわれていた。なお、このAWAのスペック上の最大伝送速度は36Mbpsだが、実効速度はIEEE802.11bの4倍程度(16Mbps程度)だという。

 実験では、NetMeetingを利用したビデオチャットや、動画掲示板、インターネット版プリクラの「ちょこっとMovie」などブロードバンド時代を見据えたコンテンツの運用実験を行なった。動画配信に関しても、1基地局あたり最大8名のユーザーに対して2Mbpsの帯域を保証するQoSを実現するなど、コンテンツ配信業者に評価されている。

 成果報告によると、有料コンテンツに対するユーザーの支払い可能額は、娯楽関係では、それぞれレンタルビデオやレンタルCDの利用金額よりも安い値段になっているが、eラーニングやビジネス関係のコンテンツに関しては、それぞれ818円、629円と高めに支払っても構わないという結果になった。

 また、ホットスポットなどへの機器の持ち出しに関しては、ノートPCでは持ち運びに不便だが、PDAでは能力に欠けるとして、機器の発展が期待される結果となった。さらに、AWA用アンテナユニットに関しても、もっと小型化を図る必要があることが浮き彫りになった。これらを踏まえて、NTTではAWAを使った無線インターネット機器の製品化へ向けて動き出すことになった。

◆実験提供エリア一覧◆
・タワーレコード:渋谷店
・渋谷パルコPART-1:PARCO BROADBAND SPACE
・ネットステーションNecca:渋谷1号店
・渋谷QFRONT
・エクセルシオールカフェ:渋谷マークシティ店
・kinko's:渋谷店
・セルリアンタワー東急ホテル
・大井競馬場:Diamond Turn
・カフェレストラン「ルネス」(麻布十番)
・ビッグエコー:表参道店

◆実験期間◆
2001年3月21日~8月31日

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●ホットスポットなどのワイヤレスインターネットは有効か?


 こうしてみてみると、2001年はさまざまなホットスポットへの取り組みが行なわれた年だった。その多くは、自分のノートPCやPDAを街に持ち出し、自宅の環境と同じように屋外でインターネットに接続するのが目的だ。

 しかしながら、Biportableの調査結果が示しているように、ノートPCをわざわざ持ち出すことに対する利点が、重い、かさばるといったマイナス点を克服し切れてないようだし、PDAでは画面が小さく、ブロードバンドコンテンツを十分に楽しむことができないようだ。確かに、インターネット利用の目的は、ほとんどがWebとメールという現状では、地域情報サービスなどのWeb利用は、店舗に備え付けの情報端末があれば十分だし、メールも携帯電話のメール機能で代替できてしまう。

 そのような使い方を想定すると、ホットスポットのような“点”での使用、つまり飲食店やホテルのロビーなど、机と椅子のある場所にPCを広げて使うことが多いだろう。しかし、IPv6に対応した情報端末や音楽・映像関係の携帯機器が売り出されれば、ホットスポットで情報のアップデートやコンテンツのダウンロードといった使い方が想定される。

 さらに、自動車にインターネット情報端末が装着されるようになれば、MISの行なっているような“面”での無線インターネット接続は非常に有効だ。今後は、移動シーンでのインターネット利用がより活発になるだろう。今回の特集では「レールスターおでかけネット」にしか触れることができなかったが、小田急電鉄や京浜急行電鉄などでも2002年より無線インターネット接続実験を行なうという。

 IPv6が普及すると、次に来るのはユビキタスインターネット時代だと言われている。その名のとおり“いつでも、どこでも”インターネットに接続できる環境が整うためには、ホットスポットなどの段階を経て、人々がライフスタイルを変化させていく必要がある。

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(2001/12/17)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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