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Yahoo!とMSN、「迷惑メール対策連絡会」設立

~増加する迷惑メール対策で提携

 ヤフーとマイクロソフトは12日、迷惑メール撲滅を目指す「迷惑メール対策連絡会」を設立したと発表した。当面、両社の提供するWebメールサービス「Yahoo!メール」と「MSN Hotmail」において対策を講じるが、ほかのISPや通信事業者、官公庁へも参加を呼びかけていく。

 迷惑メール対策連絡会では、定例会議を通じて情報交換を行ない、法律上共有できる情報を集めながら、ある程度送信者を特定するという。また、海外の法律なども参考に現行法を検証するとともに、個人や企業への提言、関係省庁への情報協力も行なう。なお、具体的な日程など活動内容の詳細は、現在のところ未定だ。


迷惑メールを撲滅し、社会的責任を果たす

マイクロソフト執行役MSN事業部長の塚本良江氏
 12日に行なわれた記者会見の冒頭、マイクロソフト執行役MSN事業部長の塚本良江氏が、「インターネット以前のメールは、流通する数も少なくオモチャのようなものだった。しかし、現在はWebメールで1,700万、ISPの提供するメールで3,000万、合わせて約5,000万のメールアカウントが登録されている」と語り、メールがコミュニケーションインフラとして成熟しつつあると説明した。

 迷惑メールが増えた原因については、「メールがノーコストでできることが増加した背景にあるのではないか」との見解を示した。MSNでは、1日30億通近いメールのトラフィックがあり、そのうち24億通が迷惑メールだという。

 これまでの対策に関しては、「マイクロソフトが対策すれば、ヤフーへと流れるというように、メール送信者の標的は巧みに移り変わる。ISP同士で取り組まなければならない問題になった」と実情を語り、「社会的責任を果たすためにも、共同で取り組んでいかねばならない」と迷惑メール対策連絡会設立の決意を述べた。


迷惑メールは2年間でメールトラフィック全体の50%まで増加

マイクロソフトMSN事業部マーケティンググループサブスクリプションサービスプロダクトプランナーの丸岩幸恵氏
 続いて、マイクロソフトMSN事業部マーケティンググループサブスクリプションサービスプロダクトプランナーの丸岩幸恵氏が、迷惑メールの現状について解説。「迷惑メールは、日本では法規制が始まっているが、今や世界的な問題。2003年10月に行なった米Brightmail社の調査によると、最近の2年間でメールトラフィック全体の2%から50%へ増加した」という。

 迷惑メール対策連絡会での迷惑メールに関する定義は、いわゆる“迷惑メール規制法”に則ったもの。送信元アドレスを詐称した、あるいは“未承諾広告※”の表示がないなどの表示義務違反の宣伝広告メールや、アドレスを自動生成した宣伝広告メールを迷惑メールとして定義する。迷惑メールのメカニズムとしては、「PCで『○○@~』の“○○”部分を大量に生成し、送信用アドレスを作成。開封確認やオプトアウト(購読解除)を悪用して、アクティブなメールアドレスを確認し、リスト化している」という。

 ただし、最近では迷惑メールにも「技術的な進化がある」という。有名ブランドを偽装した「Phisher(フィッシャー)サイト」へ誘導するメールや、配信ごとに件名を変更するなどユーザーの設定したメールフィルタリングを回避する「ポリモーフィック(ミューテーション)型メール」、さらにISPの迷惑メールフィルタサービスを回避する画像のみのメールなどが増えたと警告した。


受信してうれしい人はいないが、迷惑メールは無差別に送信される

米Brihtmail社の調査によると、最近の2年間でメールトラフィック全体の2%から50%へ増加したという
 実際に迷惑メールに関する被害としては、犯罪や詐欺などトラブルに巻き込まれる可能性を挙げ、「受信してうれしい人はいない。また、本来届くはずのメールを選別せざる得ない状況は時間の損失だ」(丸岩氏)と断言。さらに、通信インフラとしての機能低下を指摘した。

 「ISP側のフィルタリングサービスが強化されれば、本来届くべきメールが受信できなくなる可能性がある」とし、企業にとっても「顧客とのメールコミュニケーションが阻まれるうえ、対策へのコストが顧客に転嫁される可能性も否定できない」と分析。「迷惑メールがなければ、メールサーバーがダウンするリスクも減少し、本来のトラフィックどおり、半分の規模で運用できるはずだ」と述べた。

 MSNでの現在の対策は、受信防止機能として「ユーザーによる受信拒否リスト」「IPアドレスや送信パターンでブロック」などを用意している。また、Hotmailユーザーに迷惑メールを送信させないために、「一定時間内に大量送信を検知した場合の送信停止措置」をとっているという。ただし、「送信する側は、男女、年齢、場所など区別せずに送りつけ、ターゲットとなるメールサービスも移り変わる」ため、「1社では対策が難しい。業界上げて対応する必要がある」とした。


ユーザーの95%が迷惑メール受信経験者

ヤフーの法務部長である別所直哉氏
 ヤフーの法務部長である別所直哉氏は、「Yahoo! リサーチ」によるアンケート結果を分析。このアンケートは、10月14日から17日にかけて、Yahoo! リサーチ登録モニター372名から回答を得たもの。全体で94.1%のユーザーが迷惑メールの受信経験があるという。

 調査では、Outlook Expressなどのメールソフトユーザーや携帯電話ユーザー、Webメールユーザーに対し、受信経験を質問。携帯電話で96.6%、Webメールで95.1%、メールソフトで94.6%のユーザーが迷惑メールの受信経験があったという。「世間で言われているほど、迷惑メールは携帯電話だけの問題ではない」(別所氏)と様々なデバイスで迷惑メールが受信されている実態を報告した。

 内容は、出会い系、アダルトサイトの宣伝メールが多いほか、「『未承諾広告※』と記載してあるメールや、チェーンメールなどのメールも迷惑メールとして感じている」という。受信頻度では、9割のユーザーが1週間に1通以上受信している。1週間に5通以上受信するユーザーも4割に上った。ここで、別所氏が注目したのは「1週間に80通以上受信するユーザーが2~3%程度いる」こと。今後こういったユーザーが増加すると予想した。

 迷惑メールについての対策は、迷惑メールを受信しないように設定しているユーザーが32.5%、アドレスの変更が18.0%となったが、特に対策せずに受信のたびに削除するユーザーが83.1%と最多になった。「ひとつひとつ削除しているのが現状」だという。また、“未承諾広告※”の効果を問う回答結果については、「回答者の実感値で、実際にメールの増減を調査したわけではない」と前置きした上で、「防止にならない」が79%に達している。


全体で94.1%のユーザーが迷惑メールの受信経験がある 9割のユーザーが1週間に1通以上受信している

迷惑メール規制法の実効性について検証する必要も

 2002年夏に施行された、迷惑メール規制法についても言及。現行法では商業広告を対象にしているため、架空請求メールなどの詐欺メールは規制対象にできにくいことを指摘。「当時は、世界に先駆けて迷惑メールへの規制を実施した法律だったが、施行から1年経った今、現状に適したものかどうか検証する必要がある」(別所氏)との意見を示した。

 また、海外の規制法についても述べ、「各国とも規制の強化に乗り出しつつある。米国では、すでに規制されていた州もあるが、ようやく連邦レベルに上がってきた」という。通信インフラの信頼性と安定性に及ぼす影響から規制強化に踏み込まざる得ない状況で、「日本においても、諸外国に遅れをとらないよう、対策をとる必要がある」と付け加えた。


経済産業省と総務省による迷惑メール規制法 規制法に関する各国の状況

迷惑メールを減少させるだけではなく、根絶させる

ヤフーの取締役社長室長である喜多埜裕明氏
 最後にヤフーの取締役社長室長である喜多埜裕明氏が登壇。「メールは仕事でもプライベートでも利用されている。コミュニケーションインフラとして、個人にとっても企業にとっても重要性を増している」とし、対策連絡会では、「迷惑メールを減少させるだけではなく、根絶させる」活動をしていくと述べた。

 まず、個人ユーザーへ「個人情報をむやみに公開しない」「送信元不明メールの開封、返信を避ける」「迷惑メールフィルタリングを利用する」ことを呼びかける。また、企業に対しても「顧客情報の責任ある保護・管理」「メール内容や配信元の検証」「メール送信リストの定期的なメンテナンス」を訴える。

 「顧客の個人情報は、1人分漏れても大変なこと。自分たちも含め、管理の徹底を強く訴える」としている。


関連情報

URL
  Yahoo! JAPAN
  http://www.yahoo.co.jp/
  MSN
  http://www.msn.co.jp/

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( 鷹木 創 )
2003/11/12 19:33

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