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米Microsoft法務本部極東地域担当の取締役Tom Robertson氏
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マイクロソフトは28日、月例記者会見で同社の世界的な迷惑メール対策について説明した。業界内での連携や法律の整備に加え、迷惑メールフィルタリング技術「SmartScreen Technology」などの説明を行なった。
冒頭、米Microsoft法務本部極東地域担当の取締役Tom Robertson氏は、「受信者がのぞまない商業用のスパムメールや、性的な画像などを送りつける迷惑メールが増加することで、トラフィックも増大し、技術に対する投資額が増えた」ことや、「メールユーザーにとってもスパムの選別やフィルタリングなどで時間を費やし、生産性が落ちている」ことを指摘。UNCTADの調査によれば、2003年の電子商取引では2,000億ドル以上の損害が予測されているという。
経済的な問題のほか、「マイクロソフトに成りすましたウイルスメールがセキュリティを脅かす危険性や、詐欺メールなどに巻き込まれる可能性など社会的にも問題。メールシステムに対する信用が失墜している」と分析した。
● マイクロソフトの迷惑メール対策“5本柱”
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迷惑メールに対するマイクロソフトの基本方針
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法務・政策企画統括本部法務本部本部長の水越尚子氏
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こうした迷惑メールの問題に対し、マイクロソフトでは以下の“5本の柱”を基本方針に掲げるという。
1.業界内での連携や自主規制整備(Self-Regulation)
2.充実した法制度(Legislation)
3.法的執行(Enforcement)
4.利用者へ迷惑メール防止方法の情報提供(Consumer Education)
5.技術開発を中心とする製品・サービス面での取り組み(Technology)
まず、1については、業界で連携することのメリットを述べた。「第1に各事業者で効果を挙げた対策方法を共有できること、第2に不正なメールを受信しないための機構を設立できること、第3にスパム被害への救済・対抗窓口を設立できること」だという。米国では4月に、米AOL、米Yahoo!と提携。業界への働きかけや、技術協力も進んでいるという。7月には、香港地域内での業界連携を開始。ISPやダイレクトマーケティング業界と迷惑メール対策について協力体制を構築した。
日本においては、11月12日にYahoo!JAPANと迷惑メール対策連絡会を発足。第1回会合を12月1日に行なう。なお、協議会に加盟するISPなどは現時点では明らかにされておらず、「第1回会合の時に発表する」(法務・政策企画統括本部法務本部本部長の水越尚子氏)という。
2については、「法案を成立させることが重要」(Robertson氏)だという。22日に米連邦議会の下院を通過した“反スパム法案”に対しても、Bill Gates氏自身が手紙やコメントなどを連邦議会に提出し、その成立に寄与したことを実例に挙げた。また、日本においても「現在、世界的にスパムに対する有効な法制度の議論が巻き起こっている。取り入れた方がいい内容については、関係省庁に働きかける」(水越氏)という。
3の法の執行に関しては、「法律によって確実に執行することが、悪質なスパム送信者を撲滅するために必要」(水越氏)だとし、スパム送信者に対して、マイクロソフトとしては民事訴訟を行なうと同時に行政庁などに刑事訴訟を依頼していく。Robertson氏によれば、米国で13件、英国で2件提訴しているという。なお、「日本の法令ではマイクロソフト自身では訴訟まで進めないのが現状。国内では、行政と協力して執行していく」(水越氏)と述べた。
4の情報提供に関しては、利用者への情報提供サイトを11月27日にMSNでオープン。「個人でできる対応策はたくさんある。被害を激減させることも可能だ」(Robertson氏)とコメントした。
● 今後発売する製品には「SmartScreen Technology」を導入する
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サーバープラットフォームビジネス本部IWインフラストラクチャ製品グループマネージャの中川 哲氏
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5番目に挙げた製品やサービスについては、COMDEX 2003でGates氏が明らかにした「SmartScreen Technology」について言及。サーバープラットフォームビジネス本部IWインフラストラクチャ製品グループマネージャの中川 哲氏は、「今後発売する製品には『SmartScreen Technology』を導入する」と説明した。
SmartScreen Technologyは、Hotmailのフィルタリング機能に蓄積された迷惑メールのデータをもとに、各サーバーやクライアント用の迷惑メールフィルタリングエンジンとパターンファイルとしてフィードバックする技術。すでに、Outlook 2003などには「Intellgent Spam Filter」(ISF)として実装されている。また、今後、Exchange Server 2003用のアドオン「Intelligent Message Filter」(IMF)としても提供する予定だ。
IMFでは、“スパム度”をあらわす「Spam Confidence Level」(SCL)を割り当てる。SCLの割り当てや設定に応じて、受信したメールをサーバー上で拒否、削除、保存などができる。さらに、SCLをメールのヘッダ部分に書き込めるので、クライアント側のメールソフトでフィルタリングすることも可能となっている。
なお、SmartScreen Technology対応製品では、新しく出現する未知の迷惑メールに対応するため、パターンファイルのアップデートが必要だという。ただし、Outlook 2003に搭載されたISFのアップデートスケジュールは現時点で未定。また、メールソフト「Outlook Express」に対してはISFのような迷惑メール対策機能をサポートしないという。
中川氏によれば、「Hotmailに蓄積された迷惑メールデータの約60%が英語圏からのもの。登録件数が多ければ多いほど精度が高まるので、日本語のメールよりも英語のメールのほうが迷惑メールと判断する精度は高いといえる。日本のHotmailユーザーも面倒だと思わず、迷惑メールの登録をしてほしい」と語った。
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「SmartScreen Technology」の仕組み
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IMFでは、“スパム度”をあらわすSCLを割り当て、その設定に応じて、受信したメールをサーバー上で拒否、削除、保存する
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関連情報
■URL
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/japan/
迷惑メール対策情報サイト(MSN)
http://safety.msn.co.jp/
■関連記事
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( 鷹木 創 )
2003/11/27 18:46
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