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開発が進むENUMアプリケーション~ETJPが報告書とりまとめ


ENUMの仕組み
 「ENUM」の技術検証を目的として2003年9月に設立された団体「ENUMトライアルジャパン(ETJP)」が12日、これまでの活動内容を第一次報告書としてとりまとめた。ETJPの参加ベンダーなどがENUMに対応したアプリケーションやルータなどの開発を進めてきた一方で、通信事業者である日本テレコムがENUMを利用したサービスを模索する動きも出てきた。

 ENUMとは、電話番号をドメイン名で表わし、これをDNSに問い合わせることで、その電話番号に対応するアドレスを取得できる仕組み。1つの電話番号に対して、IP電話番号やメールサーバー、Webサイトなど複数のNAPTRレコードを登録できる。電話番号さえわかっていれば、音声通話のみならず、各種インターネットアプリケーションやサービスなどに接続できるようになるわけだ。


開発が進むENUMアプリケーション

 報告書がとりまとめられた12日には、東京都内で報告会が開かれ、ETJP会員が開発したENUMアプリケーションのデモンストレーションが行なわれた。

 まず、トライアル用のENUM DNSも運用している日本レジストリサービス(JPRS)からは、ENUMのリゾルバのひな形ともなるPCクライアントソフトが紹介された。このソフトでは、例えば「+81-00-1234-5678」という電話番号を入力すると、「8.7.6.5.4.3.2.1.0.0.1.8.e168.jp」というドメイン名形式に自動変換。「検索」ボタンを押すと、実際にENUM DNSに問い合わせ、取得したNAPTRレコードを一覧表示する。

 具体的には「SIP(sip:xxx@dnslab.jp)」「電子メール(mailto:xxxx@etjp.jp)」「WEB(http://etjp-webcam.dnslab.jp/CgiStart?page=~)」といった内容で、あとはその中から利用したいアプリケーションやサービスを選んで「コール」ボタンを押すと、そのプロトコルに対応したアプリケーションが起動して相手先に接続する仕組みだ。デモンストレーションでは、実際にインターネットを経由してENUM DNSを検索。インターネット電話でシンガポールと国際通話を行なったり、会場のWebカメラに接続する様子を披露した。

 このほかシスコシステムズやパナソニックコミュニケーションズがENUM対応アプリケーションのデモを行なったが、今回、日本テレコムがETJP会員の通信事業者として初めてENUM対応アプリケーションを公開したのが注目される。


JPRSが行なったデモの概要 SIPとなっているアドレスを選択すると、「ソフトフォン」が起動して、そのアドレスに接続する

日本テレコムがRFIDとENUMを組み合わせたサービスをデモ

 日本テレコムが開発したのは、ENUMによる通話の接続先を簡単に変えられる「ワンナンバー着信」という仕組み。これは、無線ICタグ(RFID)によってユーザーの位置を認識し、ロケーションに応じてENUM DNSに登録する情報を自動的に書き換える仕組みだ。具体的には、RFIDリーダからの位置情報を収集するロケーションサーバーがDNSのゾーンファイルを自動生成し、これをほぼリアルタイムにENUM DNSに反映するというものだ。

 これにより、例えば、ある企業の社員に対してENUM対応機器から電話をかけようとすると、その社員が社外にいる場合は、ENUM DNSからは携帯電話の電話番号が回答される。一方、社内にいるのがRFIDで検知されると、ENUM DNSからは、社員にもっとも近いところにあるオフィスの固定電話の電話番号が回答される。発信者は常に1つの電話番号を回すだけで、特に意識することなく最適な端末に接続できるわけだ。

 なお、すでに移動した後のロケーション情報が反映されてしまわないように、ゾーンファイルの保持時間を5秒に設定しているとしており、ENUM DNSサーバーに大きな負荷がかかるのが問題だという。


ワンナンバー着信の仕組み。Aさんの位置情報はまず、ロケーションサーバーにアップロードされる Aさんが、オフィスの中のデスクA付近にいる場合の接続手順

技術検証だけではそろそろ限界か?

ETJPの副会長を務めるJPRSの堀田博文氏
 ETJPでは当初、今回デモが行なわれたようなアプリケーションの実験を行なう「フェーズ1」を設立と同時に始するのに続いて、2003年12月からは、そこでの成果をもとにISPや通信事業者が“サービス”としてのENUMを検証する「フェーズ2」に入る予定だった。

 しかし、ETJPの副会長を務めるJPRSの堀田博文氏によると、今のところサービスの実験を行なっているのは日本テレコムぐらいで、他の会員通信事業者は各社内での検討に止まっている模様だという。フェーズ2の後はさらに、複数の通信事業者のサービスの相互接続やENUM DNSのレジストリ/レジストラモデルなどを検証する「フェーズ3」(当初は4月よりスタート予定)も控えている。

 堀田氏によれば、キラーアプリケーションやビジネスモデルを示すことが今後、ENUMを推進していく上での課題となるという。また、「+81以外の電話番号が日本国内ではびこることも、技術的にはあり得る」ため、それを規制するか否かという既存の枠組みとの兼ね合いも考えなければならない。ただし、これらの観点は「技術的課題ではないので、ETJP以外で検討することになる」。ETJPがワーキンググループを設置してガイドラインを策定しているプライバシーの問題も含め、国内におけるENUMが次のステップに進むには、制度面などでの検証も併行して開始すべき時期になってきた。


関連情報

URL
  ENUMトライアルジャパン
  http://etjp.jp/

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( 永沢 茂 )
2004/05/12 21:04

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