「ISPから相当数の情報開示を得た。今後は個人ユーザーの提訴も辞さない」(RIAJの生野秀年専務理事)。東京高等裁判所は31日、日本MMO側が控訴していた「ファイルローグ事件」の控訴審を棄却した。日本レコード協会(RIAJ)と日本音楽著作権協会(JASRAC)は、高裁の司法判断を支持した上で、Winnyのような中央サーバーがないP2Pファイル交換サービスへの対策を強化する方針を明らかにした。
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左からJASRACの菅原常任理事、田中弁護士、加藤常務理事
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左からRIAJの生野専務理事、前田弁護士
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● ビュアP2Pについては係争中
今回問題となった「ファイルローグ」は、ネットワークに管理用の中央サーバーを設置するハイブリッド型P2Pファイル交換サービス。米国でも管理用サーバーを設置するタイプのP2Pサービス「Napster」を巡る裁判では、Napster側に著作権侵害の責任を認める判決が2001年に出されている。
一方、現在国内で審議中のWinnyは、中央サーバーが不要な“ピュアP2Pソフト”。米国のGroksterやMorpheusといったピュアP2Pソフトを巡る裁判では、これらP2Pソフトの直接的な著作権侵害が認められておらず、現在も係争中だという。
JASRACの弁護士である田中豊氏は「中央サーバーを持たないP2Pソフトについては法的に決め手になるような方法論が現在のところない。Groksterの裁判では3月29日に口頭弁論が開かれた。国際的に同様の問題で法律的な解決を迫られており、米国の裁判所がどのような判決を出すか興味深い」とコメント。「国内では、実際に著作権を侵害する個人を相手に直接訴訟を起こすことも考えている」と述べた。
● プロバイダ責任制限法で個人情報の開示請求、「今後は個人ユーザーを提訴」
「プロバイダ責任制限法」を活用すべきだとRIAJの前田哲男弁護士は言う。「プロバイダ責任制限法では、違法コンテンツの発信者に関する情報開示請求が認められている。中央サーバーを持たないP2Pソフトについても、違法な個人に対して責任を追及することは可能で権利者側が無力であることは決してない。積極的に対策できると認識している」と、個人の責任についても追及する姿勢を明らかにした。
実際に「RIAJではISPに対して44名の発信者情報開示請求を行なっている」(RIAJの生野専務理事)。生野理事は「ISPからは相当数の情報開示を得た。今後は発信者を特定次第提訴も辞さない。情報を開示していただけなかったISPについては、そのISPを提訴することも検討している」と語気を強める。
JASRACでも「インターネット上で定点的な確認作業を行なっており、継続性や悪質性を分析した上で、必要に応じて訴訟も検討する」(菅原瑞夫常任理事)という。JASRACの加藤衛常務理事は「個人相手に訴訟を起こす時もRIAJと連携することが十分考えられる」とコメント。「個人情報の開示請求については慎重に行なわなければならないが、違法ユーザーを特定するのは時間の問題だ」と今後は具体的な行動に移すことを示唆した。
「最近の3年間で9万件ほどの違法コンテンツを削除した。しかし、実際にはその何倍もの違法コンテンツがあり、削除する側と配信する側の“いたちごっこ”が続いている。違法コンテンツを削除するのにもコストがかかる」と加藤理事。しかし、「見逃したら『何のためのJASRACか』と言われてしまう。コストがかかっても絶対に違法コンテンツを許さない」と決意を述べた。
関連情報
■URL
日本レコード協会
http://www.riaj.or.jp/
日本音楽著作権協会
http://www.jasrac.or.jp/
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( 鷹木 創 )
2005/03/31 19:37
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