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米最高裁、P2P企業のGroksterらに著作権侵害の責任追求を認める逆転判決


 米連邦最高裁は27日、映画会社MGMとP2Pファイル交換ソフトサービス企業のGroksterらの間で争われていた裁判で、ユーザーの著作権侵害行為に関してP2P企業の法的責任を問うことを認める判決を下した。

 判決では、GroksterとStreamCast側が勝利した控訴裁の判決を取り消し、下級審に差し戻すとしており、P2P企業の法的責任を追及する方向で以後の審理がなされることになる。判決は最高裁裁判官の全員一致で下されたもので、P2Pファイル交換ネットワークの利用に関する歴史的な判決となった。

 今回の判決では、Groksterがファイル交換ソフトを配布し始めた時にはそれが著作権を侵害するファイルの交換に使用されることを明確に認識していたこと、さらにその著作権侵害行為を助長する行為を行なっていたことを明確に認定。それらの行為に対して責任を問うことができるとの見方を示した。

 判決文では、P2P企業や技術者たちがこれまでも強く主張してきた「著作権侵害を防ぐことと技術的革新のバランスをとることの難しさ」についても触れている。しかし本件に関して言えば、P2Pソフトを使用して日々行なわれている著作権侵害の数の多さと、これほどまでに広く使用されているソフトウェアが著作権侵害のために利用できることで、実質的に著作権者は著作権侵害を食い止めることができなくなり、そのため二次的な手段としてソフトウェアの配布者に対して責任を問うことができるとの見方を示した。

 これまでの連邦地裁および連邦控訴裁の判決では、ソニー米国法人とUniversal City Studiosの間で争われた、いわゆる「ソニーベータマックス裁判」の最高裁判決を引き合いに出し、その原則がP2Pファイル交換ネットワークにも適用されるとの判断を示していた。しかし今回の最高裁判決では、下級審のソニーベータマックス裁判判決に対する理解が不十分であるとの見方を示し、本件がその事実において異なっているとの見解を示している。さらにこの判例では、著作権侵害を助長する意図があったという証拠を無視することまで求めてはいないことを指摘している。


 特にP2P企業の責任を問うた3つの理由が示された。まず1番目として、Groksterは明確にNapsterの利用者に向けてマーケティングされたということだ。Morpheusを提供しているStreamCastの内部文書でも、頻繁にNapsterについて述べられており、Napsterが著作権侵害裁判で争っている最中にもMorpheusはNapsterのネットワークを通して配布され、Napsterと同じOpenNAPネットワークを採用していた。これらのことから、明確にNapsterの利用者を意識していたことがわかるとしている。

 2番目にGroksterは自らのソフトウェアで著作権侵害が行なわれていることを知りながら、フィルタリングツールや著作権侵害を防ぐためのメカニズムを開発しようとしなかったことを指摘。連邦控訴裁ではこの点をGroksterとStreamCastの過失と認定しているが、それを単なる過失と認定するだけでは足らないとしている。3番目にGroksterはこのソフトに広告を配信することで売上をあげていたことだ。使用されればされるほど、より多くの広告が送り出され、企業として多くの売上をあげることができるようになる。

 これらの事実ひとつひとつだけでは非合法的な意図を認めることはできないが、全体として見る時にそれが意味することは明らかだとして、最終的にGroksterらの責任を問うた。

 なお、判決の趣旨にあるように、あまりにも多くの著作権侵害がGroksterらのソフトで行なわれていることで、二次的な責任者としてソフトの配布元の責任が追求された。このため、実際に何件の著作権侵害例があるのかを確認することができず、損害賠償の算出などに関しては今後下級審で争われることになる。

 判決ではこれまでのようにP2P技術の詳細に特に踏み込むことはせず、むしろこの技術を使ってGroksterとStreamCastが使用したマーケティング戦略に焦点が当てられ、その結果として両者の法的責任を問うた。判決でもP2Pファイル交換ネットワークで合法的な利用が可能であることは指摘されている。弁護側は実際に著作権がクリアになっているファイルがこのネットワークを通してれて流れている様子を証拠として提出し、それらが認められてはいるが、最高裁では、これら弁護側の証拠が地裁や控訴裁で過度に評価されたとの意見を示す裁判官もいたという。

 今回の判決は今後、米国に本拠を持つファイル交換ソフトの企業や開発者に大きな影響を与えることは間違いない、さらに日本のWinnyを含む世界各国の類似ソフトにも影響を与えることだろう。


関連情報

URL
  米非営利団体のEFFが公開している最高裁判決全文(英文、PDF)
  http://www.eff.org/IP/P2P/MGM_v_Grokster/04-480.pdf
  関連記事:米連邦地裁がファイル交換ソフトの違法性を否定
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0428/p2p.htm

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( 青木大我 taiga@scientist.com )
2005/06/28 12:15

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