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「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」警察庁が設置


 警察庁は「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」を設置し、子どもを取り巻く性・暴力に関する情報の氾濫や、ゲームやインターネットにのめり込むことの弊害について議論を開始した。

 この研究会は、生活安全研究会の分科会として設置。弁護士や学者、精神科医、ジャーナリスト、PTA関係者らで構成され、首都大学東京都市教養学部長の前田雅英氏が座長を務める。検討項目は、1)子どもを性の対象とするアニメ等について、2)インターネット上に氾濫する性・暴力情報について、3)子どものインターネット、ゲーム依存症について──などで、問題点を整理するとともに、その改善策を探るという。

 研究会ではすでに4月10日に第1回会合を開催しており、その配布資料や議事要旨が5月1日に同庁のWebサイトで公開された。配付資料には「児童買春・児童ポルノ事件の検挙状況の推移」「いわゆる出会い系サイトに関連した事件の検挙状況」などが含まれる。


児童買春事件のうち4割が出会い系サイトがらみ

 まず、児童買春事件の検挙件数を見ると、2000年に985件だったのが2002年に1,902件へと倍増したのをピークに、その後は減少傾向にあり、2005年は1,579件となっている。このうち、出会い系サイトに関連するものは2000年には40件に過ぎなかったが、2001年に379件、2002年に787件、2003年に791件と増加。その後は2004年に745件、2005年に654件と減少を示しているが、児童買春事件の検挙件数の約4割を占めている。

 児童ポルノ事件では、2000年に170件、2001年に152件、2002年に189件、2003年に214件、2004年に177件とほぼ横ばいで推移していたのが、2005年に470件に急増した。このうちインターネット利用に関連するものは2000年が114件、2001年が128件、2002年が140件と、比較的高い割合を占めていたが、2003年は102件、2004年は85件となり、過去3年間と比べて件数・割合ともに減少した。それが2005年には136件となり、全体に占める割合こそ減少しているものの、検挙件数自体は再び増加に転じた。


出会い系サイト事件のうち、児童買春や青少年保護育成条例違反が合計7割

 次に、児童買春以外の事件も含めた出会い系サイト関連事件全体で見ると、2005年の検挙件数は1,581件となる。同年の児童買春の検挙件数は654件だったため、出会い系サイト関連事件のうち児童買春が41.4%を占めていることになる。ただし、2004年から比べると、91件減少している。

 一方、2005年における青少年保護育成条例違反の検挙件数は460件(29.1%)で、2004年から83件増加した。また、出会い系サイトが契機となった児童ポルノ事件も53件(3.4%)で、こちらも30件増加した。このほか、児童福祉法違反も71件あった。

 被害者の年齢層を見ると、2005年の被害者1,267人のうち、18歳未満の「児童」が1,061人で83.7%を占めた。2004年より減少はしたものの、依然として高水準で推移しているという。


アニメやWebサイトが影響を及ぼしたと思われる事件を紹介

 このほか配布資料では、「バーチャル社会がもたらした弊害が指摘された事例」が示されている。子どもが被害者になった犯罪と、子どもによる犯罪の2項目について計13件の事件を取り上げ、それぞれ「バーチャル社会がもたらしたと考えられる弊害」を説明している。

 例えば、わいせつ目的の女児誘拐事件などではコミックやアダルトアニメ、Webサイトなどの影響が指摘されているほか、児童買春・児童ポルノ事件で「闇の職業安定所」というサイトを通じてモデルを募集していた事例などを紹介している。

 また、子どもによる犯罪としては、17歳の少年が高速バスを乗っ取り、3人を死傷させた事件におけるバーチャル社会がもたらしたと考えられる弊害について、「少年は、自室にこもって、インターネットにふけり、殺人や死体などの残虐な場面を見て、実際にやってみたい、犯罪を実行しようという気持ちを持つようになった」と説明している。


夏をめどに論点を整理、まずは現状把握が必要か

 第1回会合では、アニメやコミック、ゲーム、Webサイトなどの情報が影響を及ぼしたと思われる事件の紹介が行なわれ、各委員らにより意見が交わされた。

 PTA団体の委員は、毎年実施しているアンケート調査の結果から、テレビゲームをしている子どもの比率は50%前後という数字を紹介した上で、その中には常時やっている子どももいれば、時々やる程度の子どももいると説明。「どのように具体的な形で犯罪や非行につながっていくのかが、私ども保護者としてもよくわからないところが正直なところ」とコメントした。

 またある委員は、口コミやチラシという古典的な手法で小学生を誘い出して監禁した事件を取り上げ、インターネットやバーチャル的な問題だけではないと指摘した上で、「大人社会だけで出回っているだろうと多くの大人が勝手に思っている情報が、(子どもたちの世界にも)伝わっている。そういう意味では、情報の流通がかつてとは随分違っていると言える」とコメント。また、議論のあり方について「バーチャルの弊害を考える研究会ならば、誰よりも、どこよりもバーチャルなメリットについてよく理解する研究会でなければ、おそらく支持は得られないだろう。バーチャルイコール悪(という観点)からスタートすると、多分それは非常に支持を得にくいものだろうと思う」とコメントした。

 さらに、実際に教育現場にいた経験があるという委員は、出会い系サイトなどの現状について教師自身がわかっていないという現状を紹介した。「出会い系サイトはだめだと言いながら、(実際に中・高校生がアクセスしている)その出会い系サイトの具体的なサイト名さえ知らない、その中で行なっている具体的な恐ろしささえ知らない、その現状が教えられていない現状がある」という。

 研究会では今後、月1回程度のペースで意見聴取や議論を行ない、夏をめどに論点を整理する予定だ。


関連情報

URL
  バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会
  http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen29/Virtual.htm

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( 永沢 茂 )
2006/05/09 19:22

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