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イー・アクセス決算、ADSL・ISP事業が順調に推移。ADSL加入も純増傾向


 イー・アクセスは11日、2006年3月期(2005年4月~2006年3月)の決算説明会を開催した。ADSL・ISP事業が順調に推移したほか、モバイル事業では2007年3月期に800億円の設備投資を行なうとした。


ADSL・ISP事業は過去最高の利益水準を達成。ADSL契約数は純増を維持

イー・アクセスの千本会長
 2006年3月期の売上高は603.5億円で、営業利益は93.8億円、経常利益は75.3億円、純利益は50.2億円で、EBITDAは201.4億円。いずれも数値はADSL・ISP事業とモバイル事業を連結したもの。ADSL・ISP事業における前年同期比との比較では、売上高が前年比4.2%増の603.5億円、営業利益が25.5%増の116.8億円、経常利益が26.0%増の101.7億円で、純利益は税金の支払いが今期より発生したため23.9%減の71.2億円となった。

 ADSL・ISP事業について、千本倖生代表取締役会長兼CEOは「過去最高の利益水準を達成できた」とコメント。「安定したキャッシュフローを生むビジネスになった」というADSL事業は、KDDIの直収電話「KDDIメタルプラス」向けのサービスやダイヤルアップユーザーの移行促進施策などによって、鈍化していた純増数が下半期で回復傾向に転じ、2006年3月末の加入者数は前年同比6.8万件増の191.8万件となった。解約率は他社のFTTHサービス拡販によって、第3四半期の1.70%から第4四半期は1.95%と上昇したものの、計画値の2.0%は下回った。

 ISP事業に関しては、2004年7月のAOL営業譲受からの累計営業利益が21億円に到達し、投資額を回収できたという。また、ネットワーク構造や販売チャネルの見直し、ADSL事業とのシナジー効果によって、利益率が着実に増加しているという。なお、AOL会員のブロードバンド比率は2006年3月末で29%。

 ADSL・ISP事業における2007年3月期に向けた取り組みとしては、ADSL事業では数万件程度の純増を目指し、高利益水準を維持したい考え。ユーザー施策としては提携ISPとサポート連携を強化するほか、低速メニューから5Mbpsメニューへの無料アップグレードを実施する。サービスエリアも2006年3月末の約1,450局から2007年3月末までに約1,600局に拡大させるとしている。なお、北海道総合通信網(HOTnet)からADSLホール事業の譲渡を受けた新規サービスエリア4局は6月に追加する予定だという。

 加えて、当初はイー・モバイル向けとなるがバックボーン事業を開始し、新たな収益源開拓を目指す。ISP事業に関しては接続ビジネスからコンテンツビジネスへの強化を図るとしている。


2006年3月期実績 ADSL・ISP事業の加入者推移

モバイル事業では音声サービスでもHSDPA対応端末を提供

種野社長

端末展開ロードマップ
 イー・モバイルを通じて展開するモバイル事業に関して千本会長は、「我々はこの1年間、モバイル事業について全力で走ってきた」と振り返った。「2007年3月のデータサービス開始まで10カ月となったが、土地買収や契約、ADSL・ISP事業でのバックボーンネットワーク増強など、モバイル事業をサポートする状況を整えてきている」と語った。

 千本会長はまた、「既存事業者を買収するのも1つの手段ではあるが」と前置きした上で、「新しい、しかも3.5世代という最新のネットワークをゼロから立ち上げるのは非常にエキサイティング」と同事業に対する意気込みを示した。

 音声サービスの開始時期は2008年3月期の予定で、加入者数は2012年3月期に500万人の獲得を目標にする。財務面では2010年3月期にEBITDAの黒字化を、11年3月期に当期利益の単年度黒字化を目指し、12年3月期には年間売上高3,000億円を達成したいという。

 設備投資費は2012年3月期までに累計約2,500億円。このうち、2007年3月期には東名阪ネットワークの構築を目的に全体の3分の1にあたる807億円を投じる。エリック・ガン代表取締役副社長兼CFOは「将来の利益を考えてると、先行投資の赤字は仕方がない」とコメント。ただし、イー・モバイルでは株式と借入枠で3,500億円の事業資金を確保しており、「これから株主の負担はほとんど発生しない」とした。

 種野晴夫代表取締役社長兼COOは、「今期の最重要課題はネットワークの構築で、主要サプライヤーに選定したエリクソンとともに、HSDPA技術を導入したネットワークを実現させる」という。また、データサービス、音声サービスともにHSDPA対応端末を投入するとしたほか、「ネットワークの整備が済んだ段階で、組み込み用途のモジュラータイプも提供していく」と述べた。販売面では家電量販店やGMSに加え、MVNOで提携するISP3社を中心に既存会員などへのアプローチが可能な販売チャネルを構築する。

 その上で、2007年3月期通期の連結売上高は560億円、営業利益はマイナス32億円、経常利益はマイナス63億円、当期純利益がマイナス13億円、EBITDAが69億円を予想。売上高を除いた数値では、モバイル事業で140~160億円程度の赤字をそれぞれ予想している。また、ADSL・ISP事業の設備投資額は130億円で、このうち60億円がバックボーン事業へ投資が行なわれる。なお、2007年3月期の配当は500円増の1,800円を予定し、四半期ごとに450円ずつ配当していくという。


事業展開スケジュール イー・アクセスの2007年3月期業績予想

千本会長「NTTのアクセス部門分割は現実問題として難しい」

新社長に就任を予定する安井社外取締役
 発表会では合わせて、現在社外取締役を務める安井敏雄氏が6月22日に開催される定時株主総会の承認を受けた上で代表取締役社長兼COOに就任することが明らかにされた。種野氏はイー・アクセス取締役となり、代表取締役社長兼COOとして兼務するイー・モバイルの業務に専念するとした。

 種野社長は、モバイル事業に関して「ADSL事業と比べるとスケールが大きく、6年間の合計で2,500億円を投じるが、積極的な投資であり良い赤字だと考えている」と発言。千本会長も「ADSL事業も立ち上げ時期は赤字だったが、3年間で赤字を解消した。モバイル事業も同じように3年目で赤字を、4年目で累積損失を解消したい」と述べ、「モバイル事業はスタートラインにたったばかりだが、今後は1兆円企業になれるよう頑張っていきたい」と抱負を語った。

 質疑応答では、竹中平蔵総務大臣の下で開催されている「通信・放送の在り方に関する懇談会(座長:松原聡 東洋大学教授)」で議論されている、NTTのアクセス部門分離に関する質問があった。千本会長は「個人的な意見」と前置きした上で「アクセス部門を社外に出すことは現実的には難しいのではないか」とコメント。「外からでも平等にアクセスできることが最低限のやり方であり、その中でサービスや人事面で不透明なことをやらないことが重要である」とした。


関連情報

URL
  イー・アクセス 投資家情報
  http://www.eaccess.net/ir/

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( 村松健至 )
2006/05/11 20:41

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