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楽天の三木谷浩史代表取締役社長(右)と東京電力の勝俣恒久取締役社長
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東京電力は19日、フュージョン・コミュニケーションズの株式を楽天グループに譲渡すると発表した。同日、楽天メディア・インベストメントと譲渡契約を締結した。東京電力の保有するフュージョン株式10万6,527株(54.27%)を6億7,300万円で譲渡する。
フュージョンは2000年3月、IPベースの電話サービスを手がける会社として日商エレクトロニクスが設立。2001年4月、県間通信に専用のIP網を使うことで全国一律料金を実現した市外電話サービスを開始し、その後、市内通話でも一律料金を実現した「050」番号によるフルIP電話サービスにも参入した。
2004年7月には、東京電力グループのパワードコムと電話事業を統合。パワードコムが手がけていた「東京電話」をフュージョンが引き継ぐ一方で、パワードコムがフュージョンの筆頭株主となった。ところがパワードコムは2006年1月にKDDIに吸収合併され、その際にフュージョンは、同じくパワードコムの傘下だったドリーム・トレイン・インターネット(DTI)などとともに東京電力へと譲渡された。なお、当時、譲渡先としてはイー・アクセスも交渉に乗り出していたことが明らかになったが、合意には至らなかった。
● フュージョン買収でオフライン顧客を「楽天経済圏」に取り込む
19日には楽天、東京電力、フュージョンの3社が合同で記者会見を開催した。
楽天の三木谷浩史代表取締役社長は、フュージョン買収の意図について、楽天市場や楽天トラベルなどの各サービスで構成される「楽天経済圏」を拡大するためと説明する。
「これまで、楽天カードやポイント施策を通じて、ネット外の経済を取り込んできた。今回の買収により、オフラインのユーザーとのコミュニケーションが可能となり、楽天経済圏への参加人口を増やせる。VoiceとWebによる新たなビジネスモデルを実現したい。」
また、フュージョンの加入者300万人と楽天の会員3,700万人がお互いのサービスを利用することにより、両社の収益拡大につながると指摘。さらに、楽天のオペレーション力でフュージョンの収益力を高めるとともに、フュージョンのIPネットワーク技術を楽天のサービスに活用する考えも示した。
東京電力の勝俣恒久取締役社長は、フュージョンを売却した理由について「3,700万人の会員を有する楽天に株式を譲渡することで、フュージョンの顧客や収益性の拡充につながり、事業の可能性が大きく広がると期待している」と説明。通信事業から撤退することに関しては、「FTTHを含めて社会インフラの形成には寄与してきた。総合的な収支についても、投資したものを十分に回収できた」とこれまでの取り組みを評価した。
● 楽天メッセンジャーとIP電話を融合
フュージョン買収後のサービス展開では、インスタントメッセンジャー(IM)「楽天メッセンジャー」とIP電話を利用した成果報酬型広告(Pay Per Call)などを検討する。同サービスは、保険や不動産など説明が必要とされる高額商品について、問い合わせがあるごとに広告費を徴収するというモデルだ。
さらに三木谷社長は「ジャストアイディア」と断わりを入れた上で、楽天メッセンジャーに050番号を付与して、楽天メッセンジャーから一般の電話網への接続を可能にするサービス展開を紹介。サービス開始時期は未定としながらも、楽天のサービスの中核となるとの考えを示した。
また、楽天市場の購入者に050番号を付与することも検討中だという。「購入者が店舗側に050番号だけを提供して、カード番号やメールアドレスを入力しない仕組みを実現すれば、セキュリティを高められる」と述べた。
関連情報
■URL
東京電力のニュースリリース
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07061901-j.html
楽天のニュースリリース(PDF)
https://www.release.tdnet.info/inbs/36130330_20070619.pdf
フュージョン・コミュニケーションズ
http://www.fusioncom.co.jp/
関連記事:日商エレクトロニクス、IPベースの通信会社を設立
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2000/0517/fusion.htm
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( 永沢 茂/増田 覚 )
2007/06/19 17:00
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