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「違法アップロードの対応は極めて不十分」国内24団体がYouTubeに訴え

JASRACらとYouTube幹部が2度目の協議

 動画共有サイト「YouTube」上に掲載されている著作権侵害コンテンツへの対策を求めていたテレビ局やレコード会社など24の事業者・団体は7月31日、YouTubeの幹部らと2度目の協議を行なった。YouTube側からは、年内までに著作権侵害防止システムを開発する方針が示された。一方、24団体は、著作権侵害行為への対応がいっこうに改善されていないとして、同システムが実用化されるまでは、YouTubeの責任で著作権侵害行為を防止することを強く求めたという。

 今回の協議は、2007年2月に開催された23団体(当時)との初協議からの進捗状況を説明するため、YouTube側からの提案で実現されたもの。YouTube側からは、YouTubeとGoogleの幹部4人のほか、グーグル日本法人の村上憲郎代表取締役社長が出席。24団体としては、日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本放送協会(NHK)などの代表者が出席し、2時間半にわたって協議したという。

 この問題をめぐっては初協議の際、権利者側が著作権侵害の抜本的な事前防止策を導入することをYouTube側に要請。しかし、YouTube側は開発には時間がかかると回答し、「暫定的対策」として、違法なアップロードを警告する日本語の文章をYouTube上に表示することなどを約束するにとどまっていた。


フィンガープリント技術による著作権侵害防止システムは年内に完成

日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原端夫氏
 8月2日には、都内でJASRACや日本芸能実演家団体協議会など5団体の代表者が会見し、協議の内容を報告した。それによれば、YouTube側は、「規約を3回違反したユーザーのIDや投稿動画を削除している」「無断アップロードへの警告を日本語で掲示した」など、これまでの対策状況を説明。さらに、2006年12月から開発している「フィンガープリント技術」を利用した著作権侵害防止システムが、年内までに完成するとして、実用化されれば、現在、動画を削除するために権利者側が負担している人的・金銭的コストを大幅に削減できるとの考えが示されたという。

 フィンガープリント技術の詳細については明らかにされていないが、JASRACの菅原端夫氏によれば、あらかじめコンテンツの映像や音声の波形を電子的にパターン化し、これをYouTube上にアップロードされた動画と照らし合わせる技術と見られる。このパターンと一致した動画については、違法コンテンツであると識別されるという。なお、7月26日には、角川デジックスがYouTube向けの動画識別技術の実証実験に参加することを表明したが、この実験で用いられる識別方法と、フィンガープリント技術による識別方法は「同じものと思われる」(菅原氏)。

 ただし、フィンガープリント技術を実現するためには、コンテンツホルダーがYouTubeにデータを提供する必要がある。日本芸能実演家団体協議会の松武秀樹氏は、コンテンツホルダー側に開発費用がかかることや、フィンガープリントを利用させるための料金の問題も生じると指摘。「フィンガープリント技術が、世界的にすばらしいものであれば次の話をしたいのは事実」としたものの、現時点では否定も肯定もできないと語った。


YouTubeの責任で現在の著作権侵害行為への対応求める

日本芸能実演家団体協議会の松武秀樹氏
 YouTube側の報告に対して、日本映像ソフト協会の酒井信義氏は「現状ではフィンガープリント技術は実用化されていない。一方で、YouTube上では現在も違法アップロードが行なわれている」と強調した。また、松武氏は「YouTubeには多くのアニメ番組が投稿されていて、アニメ番組をDVD販売するなどのコンテンツ二次活用事業者に経済的損失が生じている」と指摘。菅原氏も「国内の動画共有サイトでは、ヤフーなどが事業者の責任で具体的な対策を講じている」と語り、YouTube側の責任で著作権侵害行為に対応してもらうことが、24団体としての共通の認識であるとアピールした。

 前回の協議後の会見では、菅原氏が「著作権侵害の状況が改善されなければ、法的措置も検討する」と発言したが、「現状は不満ではあるが、今のところYouTubeも対策を取ろうとしている」(菅原氏)として、現時点では法的措置をとる考えがないことを説明。さらに、権利者が安心できる著作権侵害防止システムを構築してもらうことで、YouTube側と友好的な関係を結びたいと話した。YouTubeとの協力関係については、松武氏も「実演家としては、パフォーマンスを伝えたいという気持ちはある。(YouTubeで)コンテンツをシームレスかつボーダレスで伝えることは大事」として、YouTubeとの提携について肯定的な姿勢を見せた。

 今後の協議スケジュールについては、「1日でも早く著作権侵害防止システムを構築して欲しい。ただし、いきなりフィンガープリント技術はこうなりました、というのではなく中間報告もしてもらいたい」(菅原氏)として、YouTube側の要請があり次第、協議の場を設ける考えを示した。

 なお、会見終了後に記者が「2月の協議から進展が見られないのではないか」と菅原氏に質問したところ、「著作権侵害防止システムの開発状況はシークレットということだが、もどかしい」と回答。ただし、角川デジックスとの実証実験が行なわれていることを挙げ、「徐々に進んできている」として、YouTube側の対応に期待していると述べた。


関連情報

URL
  ニュースリリース(JASRAC)
  http://www.jasrac.or.jp/release/07/08_2.html

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( 増田 覚 )
2007/08/02 21:19

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