Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

「補償の必要性が十分に議論し尽くされていない」JEITAがパブコメ公表


 電子情報技術産業協会(JEITA)は16日、私的録音録画小委員会の中間整理に関するパブリックコメントで提出した意見を公表した。権利者への補償の必要性について議論が尽くされていないことを批判しているほか、技術的にコピー制限されているコンテンツの複製に対する補償も不要であるとしている。補償金制度の対象機器・記録媒体の範囲を拡大することや、メーカーを補償金支払い義務者にすることについても反対意見を表明している。

 権利者への補償の必要性に関しては、「いまだ十分議論が尽くされておらず、補償金制度の見直しの前提として、広く国民の意見を踏まえて必要性を判断すべき」と指摘。中間整理では「仮に補償の必要性がある場合」として補償金制度のあり方について言及しているが、この点について「補償の必要性がないと判断されれば補償金制度自体が廃止されることになる」として、「仮に」の議論は不要であるとした。

 また、私的録音録画によって生じる権利者の経済的不利益と著作権保護技術の関係では、「著作権保護技術が利用されている場合には補償は不要」と主張。中間整理では、著作権保護技術が利用されている場合でも、私的録音録画が完全に禁止されていない以上は補償が必要であるという意見が掲載されているが、「技術的コントロールという形でいったん権利行使している以上、さらに補償金を与えることは、技術的にコントロールされた複製についての逸失利益を補填することとなる」として、法律が二重の権利行使を認めることになると批判した。

 補償金制度の対象機器・記録媒体の範囲については、録音録画機能が付属機能かどうかにかかわらず、著作物の録音録画が行なわれる可能性がある機器を対象にすべきという考え方に反論。現行法では、主に録音録画用として提供されている「専用機器・記録媒体」が補償金の対象となっているが、汎用機器にまで範囲を拡大することについては、「補償金制度は、私的録音録画に用いる専用機器・専用記録媒体を対象とするからこそ機能できたのであり、汎用的な機能を有する機器・記録媒体については、そもそも補償金制度の考え方には馴染まない」としている。


補償金の支払い義務者をメーカーにする根拠は存在しない

 さらに、補償金の支払い義務者をメーカーにすべきかどうかという点についても、「根拠は存在しない」として異を唱えている。現行では、補償金込みの価格で対象機器・記録媒体を購入するというかたちで、消費者が負担している。一方、メーカーは「協力義務」として、消費者が支払った補償金を著作権者に納めている。中間整理では「製造業者の負担する協力義務は支払義務と『同じ』」として、支払い義務をメーカーに負担させてもよいのではないかという意見が記載されているが、JEITAでは、「契約上他人が負担する者の債務が、債務者のそれと『同じ』であるなどとは法律的には考えがたい」と反論。消費者とメーカーの義務は異なるとして、支払い義務をメーカーに負担させる正当化根拠は存在しないと訴えている。

 また、「機器や記録媒体によって利益をあげていることが、製造者に支払義務を負担させる正当化の根拠」と主張する意見に対しては、「製造業者が協力義務を負担するに至ったのは、機器や記録媒体の販売によって利益をあげているからではなく、他に適当な請求・徴収する手段がなかったからにすぎない」と反論。仮に支払い義務を負わせる根拠を「利益」に求めるならば、「現行法の拠って立つ『著作物等の利用の責任は、その受益者たる利用者が負うのが原則的な考え方』」を根本から変更することになるとした。

 さらに、支払義務者をメーカーにすることについては「返還制度の問題点の本質部分をさらに拡大する」と指摘。「仮に製造業者に支払義務を認めると、機器や媒体のすべての購入者はその価格を負担することになる。そうなると、私的使用目的の複製を全く行なわない者(企業等が購入者の場合もここに含まれる)から返還請求権を奪うことになる」としている。

 なお、中間整理では「製造業者等が支払義務者である場合については、私的録音録画行為があったときに初めて金銭債務が発生するわけではないので、利用者は補償金支払い済みの機器等、すなわち私的録音録画を適法にできる権利付きの機器等を購入したことになり、仮に購入者が私的録音録画を行なわなかったとしてもその権利を行使しなかっただけであり、私的録音録画に使用される可能性が低い機器等を補償金の対象からはずすこと、補償金の額で調整することなどの工夫をすれば、必ずしも不公平にはならない」という意見も掲載されている。これに対しては、そもそも私的録音録画を行なわない法人の財産権をどう考えるかという点や、「補償金支払い済みの機器等」となるのは支払義務者が利用者である場合も同じ点であることを鑑みれば、論理的な反論であるとは思われないとしている。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会中間整理に関する意見(PDF)
  http://www.jeita.or.jp/japanese/hot/2007/1116/071116.pdf

関連記事
「ダウンロード違法化」などにパブリックコメントを募集、文化審議会(2007/10/17)
JEITAが私的録音録画問題への見解を説明、「パブコメに多くの意見を」(2007/10/30)
「JEITAはコピーワンス緩和合意を破棄するのか」権利者団体が公開質問状(2007/11/09)


( 増田 覚 )
2007/11/16 19:20

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.