デジタル私的録画問題に関する権利者会議および賛同団体は4日、私的録音録画補償金制度についての記者会見を開催し、補償金制度の見直しについて意見を表明した。会見では、4月3日に開催された私的録音録画小委員会において、補償金制度の暫定的継続と対象機器の検討を進めていくとした文化庁からの提案を尊重し、関係者との合意を目指していくと説明した。
また、小委員会の場においては、家電メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)の委員から「文化庁案に沿ってバランスの取れた解を見つけるために真摯に努力する」という発言があったことを高く評価するとして、6月2日に予定されている「ダビング10」の実施に向けて議論を進めていきたいとした。
● 小委員会でのJEITAの発言を「高く評価」、ダビング10開始に向け
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実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏
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4月3日に開催された文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第1回会合では、事務局の文化庁著作権課から今後の方針が示された。方針としては、将来的にはデジタル著作権管理(DRM)などの普及により補償金制度は縮小する方向にあるが、それまでの間は暫定的に補償金制度を継続していく必要があるとして、「音楽CDからの録音」と「無料デジタル放送からの録画」の分野について、補償金制度の対象となる機器の具体的な検討を進めていくとしている。
会見では、実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏がこれまでの経緯を説明。文化庁の示した方針については、「議論を収拾させるための段階的な結論として評価している」とコメント。補償金制度が将来的には縮小の方向とされたことについても、「消費者の利便性を損なうことなく、権利者の不利益が発生しないのであれば、我々にとっても大きな前進だと考えており、決して妥協でも挫折でもない」と説明。文化庁の方針を尊重して議論を早急に進め、補償金制度について一定の結論を得たいとした。
補償金制度を巡っては、権利者側と機器メーカー側の間で意見の対立があったが、4月3日の私的録音録画小委員会でJEITAの委員から「文化庁案に沿ってバランスの取れた解を見つけるため真摯に努力する」という発言があったことについて、「大きな変化であり、高く評価したい」とコメント。「『デジタル放送からの録画には補償金は不要』という従来のJEITAの主張からは、大きな変化があったと受け止めた」として、合意に向けて双方が歩み寄っていきたいと語った。
6月2日には、地上デジタル放送の新録画ルール「ダビング10」の運用開始が予定されている。椎名氏は、「総務省の答申でも、ダビング10の実施にあたっては権利者への対価の還元が前提であるとされている」として、ダビング10の実施には補償金制度について一定の合意を得ることが必要だと主張。実施予定まではあと2カ月しか無いため、完全に合意することは難しいが、開始までにはコンセンサスを得たいとした。
補償金制度の対象とする機器については、「方針では、CDからの録音と無料放送からの録画が補償金の検討対象として挙げられており、対象機器も実態に即したものに改善されると期待している」として、対象機器の見直しを求めていく考えを示した。
椎名氏は、「同じ録音・録画ができるのに、この機器は対象になり、この機器は対象にならないといった不公平な状況は望ましくない」と語り、方向性としては私的録音録画に使用されるすべての機器・媒体が対象となることを望んでいると説明。ただし、「iPodやハードディスクレコーダーなど、専用的な機器については概ね議論はまとまっていると思うが、PCのような汎用的な機器については議論があるだろう」として、実態調査に基づいて対象機器を検討する機関を設けるなどの方向性を検討していきたいとした。
関連情報
■URL
デジタル私的録画問題に関する権利者会議
http://www.culturefirst.jp/
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( 三柳英樹 )
2008/04/04 20:59
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