趣味のインターネット地図ウォッチ
第158回
QRコードとGPSを活用した落し物発見サービス「リターンタグ」ほか
(2013/4/4 06:00)
「電子国土Web.NEXT」が機能強化、検索サイト「地理空間情報ライブラリー」も公開
国土地理院が試験提供している次世代地図サービス「電子国土Web.NEXT」の機能がいくつかの点で改良された。1つめは標高データの試験配信だ。電子国土Web.NEXTには、地図上を右クリックすると、その地点の標高値が表示される機能があるが、このたびこの元データとなっているタイル状の標高データおよび標高APIを公開する。タイル状の標高データは基盤地図情報(10mメッシュ標高)をもとにしたもので、標高データを事前に準備することなく、ソフトウェアから動的にデータを読み込んで処理することが可能となった。また、指定した位置の標高値を取得するウェブAPIを公開することにより、国土地理院以外のシステムやウェブサイト、プログラムから同APIにアクセスして、標高値を取得して表示できるようになる。
2つめは、KMLファイルの透過度を調節することが可能になった。表示中にベクトルデータについても、スライドバーで透過度を変えられる。
3つめは地図画像のKML配信で、KML(ネットワークリンク)に対応したソフトウェアで地図画像を利用可能となる。これにより、Google Earthに電子国土Web.NEXTの地図を簡単に重ねて見られるようになった。国土地理院のウェブサイトから「電子国土KML(標準地図).kml」というファイルをダウンロードし、Google Earthで読み込むと衛星写真上に電子国土の標準地図が重ねて表示される。
タイル状の標高データや標高APIについてはユーザーに直接メリットはないが、今後このデータやAPIを利用した地図サイトやアプリが登場することが期待される。
また、国土地理院は、地理空間情報の検索・閲覧・入手が可能なサイト「地理空間情報ライブラリー」も提供開始した。同サイトのコンセプトはインターネット上で地理空間情報を提供する「仮想的な図書館」で、地理空間情報を分野別・機関別・提供形態別に調べられる。左メニューから項目を選ぶと、それに合致する提供サービスが右側に画像入りで表示される。また、キーワードや地名で情報を検索できる「地理情報クリアリングハウス」も用意されている。
さらに、国土地理院が保有する空中写真や地形図・地勢図、主題図、公共測量地図、国土基本図、地方公共団体が整備した大縮尺地図を閲覧できる「地図・空中写真閲覧サービス」も公開された。左メニューで地図の分類を指定すると、該当する地図のリストが下に表示されて、地図上に番号のアイコンが並ぶ。アイコンをクリックすと地図が表示される。ここで表示される地図は拡大表示が可能だが、解像度はそれほど高くない。あくまでも地図や写真の概要を確認するためのサイトという位置付けのようだ。
地図・空中写真閲覧サービスの公開とともに発表されたのが、土地の成り立ちを表す「土地条件図」が電子国土Web.NEXT上で見られるようになったこと。電子国土Web.NEXTの左メニューで「ライブラリー」タブの「主題情報」-「土地条件図」にチェックを入れると、右側の地図に土地条件図のレイヤーが表示される。
このほか、国土地理院が設置した基準点の成果を閲覧できる「基準点成果等閲覧サービス」もリニューアルし、従来よりも使いやすいインターフェイスとなった。このサービスには標準システムと詳細システムの2種類が用意されており、測量関係者でない一般の地図ファンが基準点の位置を調べたいと思った場合でも、わかりやすい標準システムの方を使えば簡単に基準点の位置を調べられる。
左メニューで調べたい基準点の種類にチェックを入れて「検索」ボタンを押せば地図上に位置を示すアイコンが表示される。アイコンは一等・二等・三等・四等が「I」「II」「III」「IV」とローマ数字で、1級・2級・3級が「1」「2」「3」とアラビア数字で記載されてるので区別しやすい。
国土地理院は、今後も地図などの上にユーザーの地理空間情報を簡単に重ね合わせて表示できる「マップアップリンク」の取り組みを推進するとのこと。もし何か気付いた点などがあったら、国土地理院に意見や感想などを送ると、今後の取り組みに役立つだろう。
URL
- 電子国土Web.NEXT
- http://portal.cyberjapan.jp/site/mapuse4/index.html
- 「電子国土KML(標準地図).kml」ダウンロードURL
- http://www.gsi.go.jp/common/000079743.zip
- 地理空間情報ライブラリー検索サイト
- http://geolib.gsi.go.jp/list
- 地図・空中写真閲覧サービス
- http://mapps.gsi.go.jp/
- 基準点成果等閲覧サービス
- http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/
QRコードとGPSを活用した落し物発見サービス「リターンタグ」
株式会社落し物ドットコムは、遺失物の拾得場所を落し主に伝える落し物発見サービス「リターンタグ」を提供開始した。タグはAmazon.co.jpなどで購入できる。価格は2枚入りで1280円(発売当初はキャンペーン価格で980円)。
同サービスは、事前に登録したタグをさまざまなものに貼ることで、それを落としたり置き忘れたりしてしまった際に、拾得者からの連絡を受けることにより、落し主に代わって落し物の発見・回収を支援するサービス。リターンタグには「拾われた方はこちらへ」というメッセージとともに、連絡先のフリーダイヤルの電話番号およびQRコードが掲載されており、拾得者がスマートフォンでQRコードをスキャンした際に位置情報の送信を許可すると、拾得場所を落し主に自動的にメールで伝える。拾得場所はリターンタグのウェブサイト内のマイページ上で、Google マップ上で確認できる。
落し物が発生し、拾得者または交通機関・店舗、警察などから落し物ドットコムの窓口宛に拾得物発見の連絡が来た場合、落し物ドットコムにてリターンタグIDを照合して持ち主を特定する。回収方法は、落し物ドットコムの指定業者によって落し物を回収するか、または最寄り警察や施設に届けを出すかを、拾得者に選んでもらう。
タグに記載された個別のIDで持ち主を特定するため、落し主の個人情報を拾得者には伝えずに落し物を回収できる。落し物ドットコムが落し主に代わって御礼のメッセージを送り、希望があれば粗品としてリターンタグセットを贈る。ただし拾得者が遺失物法の手続きに従って、警察署に拾得届を提出して報労金の請求をした場合は、折衝は当事者間で行う。なお、拾得者と持ち主が同意した場合は直接受け渡しも可能だ。
今回、筆者が購入したリターンタグを使って、実際に紛失した際の状況を再現してみた。事前に落し物ドットコムにこの実験をする旨を伝えた上で、リターンタグをタブレット端末に貼り付けてウェブサイトからタグのIDを登録。その上で、外出先からiPhone 5のQRコードリーダーアプリで読み取ると、「現在の位置情報を利用します。よろしいですか?」という確認のメッセージが表示された。
ここで「OK」をタップすると、リターンタグの拾得者報告フォームが表示される。「落し物を拾っていただきありがとうございます」というメッセージとともに、発見ボタンを押して持ち主に落し物が見つかったことを伝えるよう促すメッセージや、警察や施設に届けるように促すメッセージなどが表示される。また、御礼の粗品を贈るために電話番号やメールアドレスを記入する欄もある。
なお、iPhone 5で位置情報の送信を許可し、拾得者報告フォームが表示された時点で、「登録されているタグがスキャンされてGPS測定にて位置情報を受信しました」という旨のメールが送信されてきた。ここに記載されているURLをクリックすると落し物ドットコムのサイトが表示されて、Google マップ上でスキャンした場所の位置が確認できた。
あとは拾得者が拾得者報告フォームに記載して拾得報告を送れば、その旨が落し主に送られ、落し物が回収される。拾得者報告フォームに書いてある説明は文章がわかりやすく、初めてこのサービスのことを知る人にも理解しやすいと思う。
リターンタグのサイトには「日本が誇る“落し物が持ち主に帰ってくる文化”を支援する落し物総合カンパニーを目指しています」と書かれている。拾ったものにこのようなタグが貼ってあれば、「あ、届けなきゃ」と善意を喚起させるきっかけとなるだろう。リターンタグの認知度が高まれば高まるほど、発見報告や回収もスムーズに行われるようになると思うので、今後の普及に期待したい。
URL
子供やお年寄りの居場所を確認できるAndroidアプリ「ミマモール」
株式会社ユニリングスは、Androidアプリ「ミマモール」を提供開始した。Google Playから無料でダウンロードできる。同アプリは子供やお年寄りなど、家族の居場所を確認するためのアプリ。同アプリをAndroidスマートフォンやタブレット端末にインストールしてアプリを起動させておくと、端末から位置情報を自動送信し、ウェブサイトの地図上でその位置を確認できる。
同アプリをインストールすると、ホーム画面がシンプルな画面となり、スマートフォンに不慣れな人も簡単に操作できる。使用するアプリをカスタマイズすることも可能で、不要なアプリを使えないように制限できるので、子供にも安心して使わせることが可能だ。
現在のところ、月額料金が無料のフリープランのみ提供されており、このプランでは位置情報を確認できる人数は1名まで。また、位置確認の間隔は約60分に1回となる。このほか、使用人数が2名で位置確認の間隔が約10分に1回のベーシックプラン(月額315円)と、使用人数が5名で位置確認の間隔が約5分に1回のプレミアムプラン(月額525円)の提供が近日予定されている。また、iOS版の開発も検討中とのこと。
ミマモールを運営する株式会社ユニリングスの代表取締役である星雅人氏は、東日本大震災の被災地である福島県南相馬市出身で、同氏はこの時の経験から、将来的にはミマモールを災害にも対応しうるサービスに発展させていくことを目標としているという。
筆者のAndroidスマートフォンにも入れて試してみたが、問題なく動作が確認できた。ウェブサイトの地図上でも端末の位置がきちんと表示されている。ちなみに背景地図として使用されているのはOpenStreetMapだ。
また、3G通信ができないタブレット端末でも、Wi-Fi接続で位置情報を送信できることが確認できた。余っている旧機種のスマートフォンを子供に与える際にこのアプリを入れれば、位置情報の確認ツールとして有効活用できる。無料プランでは位置確認の間隔が60分と長めではあるが、まずは一度使ってみて、家族の位置を確認できることの便利さを体験してみてはいかがだろうか。