趣味のインターネット地図ウォッチ

第159回

Google Earth上で地質図を見られる「シームレス地質図3D」 ほか

Google Earth上で地質図を見られる「シームレス地質図3D」

 昨年秋、地質図をGoogle マップやOpenStreetMap、国土地理院の「電子国土」などの上に重ねて見られる「地質図Navi」を試験公開した独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の地質調査総合センターが、今年に入り新たにGoogle Earth上で閲覧できる3Dの地質図「シームレス地質図3D」を公開している。

 同サイトにアクセスするとGoogle Earthの画面が開き、そこに地質図のレイヤーが表示される。この時、左メニューが表示されない場合はブラウザー左端のグレーの縦線をクリックするとメニューが表示される。メニューでは上部のスライダーで地質図の透過度が調整できるほか、表示する地質を選択することもできる。「堆積岩類」「火山岩類」「深成岩類」「変成岩類」などが選択可能で、それぞれ小分類に区分けされており、チェックを入れたり消したりすることで表示・非表示を切り替えられる。また、これらの地質図は基本版と詳細版の2種類が用意されており、それぞれ凡例の区分けが異なっている。

 このほか、断層・地層境界や凡例番号、活断層、道路・地名・建物の表示・非表示も切り替えられる。

 地図上のあちこちをクリックするとその地点にマーカーが表示されてウィンドウがポップアップし、「約1500万年前~700万年前にマグマが地下の深いところで冷えて固まった花崗岩質の深成岩、地質年代:中‐後期中新世、岩相:珪長質 深成岩類」といった解説が表示される。閉じる場合はウィンドウの中の「マーカー削除」ボタンをクリックすればOKだ。

 シームレス地質図3Dで表示される情報は、従来「20万分の1日本シームレス地質図」のサイトで提供されているものと同等で、2Dで提供されているものと比べて、視点を斜め上に切り替えることが可能な点が魅力だ。解説文の中にある専門用語の用語解説も収録されており、さまざまな視点から地質の分布を楽しめる。

シームレス地質図3D(基本版)
シームレス地質図3D(詳細版)
地質図上をクリックすると詳細情報が表示
断層の情報を収録
山の情報も写真入りで収録
用語解説
地名や施設名による検索も可能
断層・地層境界の有無も選択可能。これは境界無しの場合
境界を標示させた状態

国土地理院の「数値地図(国土基本情報)」と「電子地形図25000」、全国の最新の地図データが入手可能に

 国土地理院は、行政区画や道路、鉄道、建物などの地図・地名・標高情報などをまとめた地図データ「数値地図(国土基本情報)」をインターネット経由で刊行している。従来は近畿や四国などのエリアを提供していたが、4月に入って関東・東北・中部・中国についても提供開始し、これで全国のデータを入手することが可能となった。

 また、国土の基本図の画像データを購入できる「電子地形図25000」についても同じエリアを刊行し、こちらも全国のデータが入手可能となった。いずれのデータも財団法人日本地図センターから購入可能で、道路の開通などによるデータ更新がすぐに反映されるので常に新しい地図データが入手可能となる。

日本地図センターの購入ページ
購入するエリアを指定
ファイル形式はSHPとGMLから選べる

 数値地図(国土基本情報)は、GISを使って情報を選択したり、ほかの情報と重ね合わせたりできるベクトルデータで、メッシュ単位で約10km四方ごとにファイル化されている。データ項目は52項目で、2001年~2003年に刊行した「数値地図25000(空間データ基盤)」の4倍となる。価格は1エリアごとに170円で、都道府県単位でDVDでまとめて購入することも可能だ。

「数値地図(国土基本情報)」を国土地理院のビューアーソフトで表示
拡大したところ
上野・浅草周辺

 電子地形図25000は、数値地図(国土基本情報)をもとに作成される地図のラスターデータで、地図の中心の位置や出力形式、画像サイズ、等高線の色の指定、送電線の表記の選択などが可能。出力形式はPDF/JPEG/TIFFのいずれか、画像サイズはA4~A0までを選択可能で、画像は1画像あたり170円~680円。この電子地形図についても、DVDでまとめて購入することが可能だ。

 電子地形図25000ではさらに、4月22日から建物色の選択(ピンク、オレンジ、赤など)や、地形の陰影表現を付けたデータ作成も選択可能にする予定だ。従来の紙の「2万5千分の1地形図」ではデザイン選択の自由度がなかったが、こちらはかなり多彩な表現が可能となる。常に新しい状態でインターネットから購入できるのも便利だし、地図の中心位置を指定できる機能は登山に使う場合などに重宝する。

「電子地形図25000」の購入選択画面
中心位置を指定すると右側にプレビュー画像が表示
富士山の山頂を中心にした場合
購入時のパラメータ一覧
紙の地図と同様の定型版も用意

 国土地理院はこのほか、11月14日~16日に開催される地理空間情報のイベント「G空間EXPO」の「Geoアクティビティフェスタ」のプレゼンター(出展者)の募集を開始した。同イベントは地理空間情報に関するアイデアや製品、技術、サービスなどの展示および発表(プレゼンテーション)を行うイベントで、個人レベルのアイデアから教育機関での研究成果、民間企業の製品・技術、NPOの取り組みなどを発掘することにより、新たな産業の創出を目的としている。

 会場は東京・お台場の日本科学未来館で、応募対象者は個人やグループ、学生、プロ、アマを問わないが、イベントが開催される3日間を通して会場において展示を行い、期間中に1回のプレゼンテーションを行えることが条件となる。対象となる展示内容は、G空間情報を活用したアプリやシステム、機器、端末、サービス、技術、地図成果、研究成果、活用事例等など。既存のサービスや製品、完成途中のものやアイデア段階のものでも応募可能だ。

 応募方法はプレゼンター応募用紙に必要事項を記入の上、事務局まで送付する。応募締め切りは5月31日。応募のあった課題の中から選定委員会による選考を経て、通過者をプレゼンターとして決定する。選考結果は7月上旬ごろに通知する。

Geoアクティビティフェスタの募集チラシ

ホンダ、通行情報をユーザーで共有できる「インターナビ リポート」提供開始、「逃げ地図」や「SAFETY MAP」も公開

 本田技研工業株式会社(ホンダ)は、iPhone/Android向けアプリ「インターナビ リポート」を提供開始した。iTunes App StoreまたはGoogle Playから無料でダウンロードできる。使用にあたってはホンダ車オーナー向けサービス「インターナビ・リンク」の会員登録が必要。

 同アプリは災害や気象、通行止めなどに関する情報を投稿し、ユーザー同士で共有できるアプリ。投稿した情報のカテゴリを選択し、アイコンをタッチするだけで簡単に投稿できる。投稿の際にコメントを付けることも可能だ。投稿可能な情報は、道路の混み具合や通行止め、事故、故障車、火災、工事、行事、気象、災害、運転注意、動物など。

「インターナビ リポート」
投稿画面

 また、同社はこれまで提供していたiPhone/Androidアプリ「インターナビ・リンク」および「Honda Moto LINC(ホンダ・モト・リンク)」において、津波・注意報が発令されたことを、アプリが起動していない状態でも通知する機能を搭載した。さらに、津波警報や注意報の通知後に、株式会社日建設計ボランティア部が制作した「逃げ地図」を表示する機能も3月末に追加した。

 逃げ地図は、日建設計のスタッフが現地の人々と一緒に避難地点や所要時間を設定し、手作業で地図上にまとめたもので、宮城県・岩手県・神奈川県など、合計7地域の逃げ地図が登録される。津波警報や注意報が同7地域に発令された時に、対象会員がその地域にいる可能性がある場合は逃げ地図連携ボタンが表示される。ボタンをタップすると逃げ地図が表示されて、現在地から徒歩でどの避難地点にどの経路で行けば最も早く到達できるかが地図上の道路の色分けにより一目でわかる。

 なお、平常時に逃げ地図を閲覧する場合は、iPhone/Androidアプリ「internavi Pocket」のメニューから「internavi Lab」を選択すると逃げ地図のコーナーにアクセスできる。

逃げ地図の解説
用意されている逃げ地図
逃げ地図(大船渡市三陸町越喜来)
逃げ地図(気仙沼市本吉町大谷)
逃げ地図(鎌倉市材木座)

 このほか、同社はインターナビの急ブレーキ多発地点データや交通事故情報に、地域住民から投稿される危険スポット情報をあわせて地図上に掲載した「SAFETY MAP」も3月29日に一般公開した。

 今回公開したのは埼玉県内のマップで、埼玉県警察本部から提供された交通事故情報やゾーン30(最高速度30km/hに制限されている区域)情報も利用している。同社はこれまでも、2007年12月よりインターナビ・フローティングカーデータをもとに作成した急ブレーキ発生個所データを埼玉県に提供し、道路整備効果の検証や道路政策の立案などへの支援を行ってきており、2012年度からは通学路の交通安全対策にも役立てられているという。今後は他地域についてもSAFETY MAPの拡充を期待したい。

SAFETY MAP
スマートフォン版のSAFETY MAP

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。