趣味のインターネット地図ウォッチ

第65回 「スーパーマップル・デジタル10」を使ってみました


 インターネット上の地図サイトが人気を集める昨今だが、その一方でパッケージの地図ソフトも依然として需要がある。モバイルPCにインストールすればインターネットに接続しなくても地図を見られるし、ユーザーの手で施設情報やルート情報をマッピングしたりと、カスタマイズの自由度も高いからだ。

 7月10日発売の昭文社の地図ソフト「スーパーマップル・デジタル10」も、パッケージソフトならではの機能が数多く盛り込まれている。今回はこのソフトについて詳しくレビューしよう。

 なお、「スーパーマップル・デジタル10」は、Windows Vista/XPに対応しており、「全国版」(1万5330円)、「関東甲信越版」(5880円)などのパッケージをラインナップしている。


スーパーマップル・デジタル10

ETC割引を考慮したプランニングが可能に

 「スーパーマップル・デジタル」はベクトルデータを使用した地図ソフトだ。今回のバージョンでも従来通り、建物の形状まで詳しくわかる高精細な地図画面はそのまま受け継がれている。個人的にも「スーパーマップル・デジタル」の地図画面は、地下鉄の駅の形状や位置がわかりやすく描かれているので好きだ。都内で活動する者にとって、ここは重要なポイントなのである。

 収録している地図の縮尺は500万分の1から最大1000分の1まで。主要な施設ややビルの名称などが細かく書かれている点も便利だ。通りや坂の名称、交差点名、駅名、鉄道路線名なども載っているほか、一方通行の方向を示す矢印や、右折禁止を示す矢印まで入っている。このような地図ソフトとしての基本機能については、バージョンを重ねてかなり熟成された感がある。

 ルート検索機能については前バージョンの「スーパーマップル・デジタル9」で大幅に進化して、一方通行や進入禁止などの規制を考慮したルートが検索可能になった。本バージョンではさらにプランニング機能が強化されて、2009年3月から開始したETC限定休日特別割引に対応。ETC割引を含めてどのルートで行くのが最も安いかを検討できるようになった。プランニングの結果には距離や時間、燃料費なども表示されるし、徒歩と鉄道を使ったルート検索も可能だ。


縮尺1500分の1の画面

ETC割引に反映したプランニング

Excelデータを取り込んで地図上にグラフを表示

 このような従来の機能に加えて、本バージョンで新たに加わったのが、Excelのデータを取り込んで地図上にグラフを表示する機能だ。グラフは分布図、円グラフ、棒グラフの3種類から選択できる。

 分布図は、店ごとの年商の額など数値の大小で円の大きさを変えられる。円グラフは、複数の数値の100%構成比をグラフ表示する。店ごとの売り上げ構成比や年齢層と地域との関連などをグラフ化するときに有効だ。棒グラフは、店ごとの売り上げの額などを比較するのに適していて、積み上げ棒グラフになっているので構成比もビジュアル化できる。

 用意するデータは、住所の列と、それに対応した売り上げや人数などの数値だ。施設情報や顧客情報などのビジネスデータを取り込んで、地域ごとのデータをグラフ化できるので、顧客の傾向などエリアごとの特性を分析するのに便利だ。また、住所録を取り込んで地図上にマッピングすることも可能で、簡易的なマーケティングツールとしても使用できる。グラフは透明度を変えられるので、地図上にグラフを多く並べても視認性は良好だ。


グラフ表示機能

GPSログの折れ線グラフで走行状況をチェック

 もう1つの新機能が、GPSのログを取り込んで、速度や高度をグラフ表示する機能だ。対応しているGPSログデータのフォーマットは、NMEA-0183(ASCII文字)、GPX Ver1.1(Shift-JISおよびUTF-8)、GARMINシンプルテキストの3種類。また、auの携帯電話で取得した「auあしあとデータ」も取り込める。

 自動車で使ったGPS機器のログを「スーパーマップル・デジタル10」上で展開すると、「時間・速度グラフ」と「距離・速度グラフ」では横軸が時間または距離、縦軸が速度の折れ線グラフが表示される。折れ線の傾斜角度で急発進しているかどうかをチェック可能で、運行状況を細かくチェックできる。昨年の原油高の影響やハイブリッド車の普及により、燃費への関心が高まっている中、なかなかタイムリーな機能と言えるだろう。

 「時間・高度グラフ」では、横軸に経過時間、左側縦軸に絶対高度、右側縦軸に出発地点からの相対高度が表示される。登山などで取得したGPSログを取り込むと、断面図のような形で標高の推移を表示可能だ。いずれのグラフも経路再生が可能で、運行の流れを追いながら細部をじっくり確認できる。


時間・速度グラフ

ウォーキングに便利な消費カロリー表示

 さらにユニークな機能として、消費カロリーの表示機能が挙げられる。これは地図に記入したルートや、GPSログで取得したルートの備考欄に「約102kcal(おにぎりに換算すると約0.6個相当)を消費します」などと表示する機能だ。換算する食べ物は「おにぎり」のほか、クッキーやハンバーガー、ラーメンなどさまざまな種類が選べる。

 消費カロリーと同時に、「『ぶらぶら歩く』と約38分かかります」と徒歩にかかる時間も表示される。徒歩スピードは「ぶらぶら歩く」(50m/分)に加えて、「普通に歩く」(75m/分)、「サッサと歩く」(90m/分)、「はや~く歩く」(120m/分)の4段階から選択できる。この機能を使えば、ウォーキングのコースをプランニングする際に手軽に消費カロリーを計算できるので便利だ。できればウォーキングだけでなくランニングの速度にも対応してほしかったが、これは次のバージョンに期待しよう。


消費カロリー表示

地図上の施設名からWikipedia検索

 Webとの連携も従来より強化されて、地図上の文字情報をWikipediaですぐに検索できるようになった。施設名を右クリックして「Wikipediaで検索」を選択すると、Webブラウザが起動してWikipediaの該当ページが表示される。この機能は実際に使ってみると意外に便利で、見知らぬスポットの情報も立ちどころに調べられる。

 例えば山梨県の韮崎駅前にあるショッピングセンター「ルネス」をWikipedia検索した場合、「ルネス」の解説ページがすぐに出てきた。検索エンジンでは検索結果が膨大な数になってしまうような微妙な名の施設であっても、Wikipediaなら目的の項目にすぐに行き着ける可能性が高く、施設情報を調べる上では使い勝手がいい。


右クリックでWikipedia検索が可能

観光情報サイトから各種コンテンツをダウンロード

 このほか、昭文社が運営するサイト「まっぷる観光ガイド」からさまざまな旅行情報をダウンロードすることもできる。「ビーチ特集」「プール特集」「花火大会特集」など季節ものの特集や、「日本の都市公園百選」「日本の道百選」「日本百名山ガイド」などのガイド情報に加えて、「路上駐車取締情報」なども用意されている。

 観光情報サイトの定番として豊富な情報量を誇る「まっぷる観光ガイド」との連携機能は、他社の地図ソフトにはない魅力の1つだ。これに加えて、本バージョンではグラフ表示機能や住所録の取り込み機能などビジネスユースを強く意識した機能が追加されており、インターネットの地図サイトとの差別化を図ろうという強い意気込みが感じられる。そういう意味で「スーパーマップル・デジタル10」は、パッケージならではの魅力を再発見できる地図ソフトと言えるだろう。


観光情報のダウンロードページ

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2009/7/9 11:04


碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース、コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。