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第377回:新型Atom採用でバッテリー搭載
高性能NAS Thecus「N4200」


 台湾のNASベンダーであるThecus(シーカス)社から、新型Atomである「Atom D510」を採用したNAS「N4200」が登場した。4ベイでRAID 6対応、また有機ELディスプレイやバッテリーを搭載するなどの特徴を持つ製品だ。

信頼性重視のユーザーに


Thecusの「N4200」。スモールビジネス向けに位置づけられているミドルレンジのNAS

 NASに何を求めるか。この答えは人によって異なるだろう。手軽なストレージと考えれる人もいれば、価格と容量を重視する人もいるだろう。また、データの保存用途だけではなく、視聴することにもこだわればDLNAやインターネット経由のリモートアクセスなど、ホームサーバー的な機能も要求されるだろう。

 今回、Thecusが発売した「N4200」は、とにかく信頼性にこだわったNASと言える。もともと同社は、スモールビジネス向けの製品として、HDDを最大4台搭載できる4ベイモデル「N4100PRO」や最大5台搭載できる5ベイモデル「N5200」というRAID対応製品を発売していたが、今回の「N4200」も同様の市場を主な対象とした製品となっており、「N4100PRO」の上位モデルと位置づけられている。

 「N4100PRO」とハードウェア的な違いは、筐体のデザインが一新されたほか、CPUが「AMD Geode LX800」から「Atom D510(デュアルコア/1.66GHz/TDP13W)」へ変更してパフォーマンスの向上を図った点。加えて、背面に専用リチウムイオンバッテリーを内蔵することが可能になった点だ。

 これまでのNAS製品は、UPS(無停電電源装置)の利用に対応した製品は存在したが、筐体内部にバッテリーを内蔵できる製品は、エンタープライズ向けは別として、おそらく初の製品と思われる。これに加えて、RIAD 6/10対応によるデータ、2個のLANポート搭載によるネットワーク、Thecus独自の「デュアルDOM(Disk On Module)」によるシステムと、それぞれ冗長性が確保されており、高いレベルでのデータ保護が期待できる製品となっている。このことから、NASに信頼性を求めるユーザーは気になる製品と言えるだろう。


本体側面 背面

万が一のときに便利なディスプレイ


上部に有機ELのディスプレイ、左側にHDDとLANの状態を表示するLEDを採用

 それでは、実際の製品について見ていこう。まずは外観だが、最初に目につくのはフロントの有機ELディスプレイだろう。

 従来モデルにもフロントディスプレイを搭載した製品は存在したが、本製品では日本語も含めた多言語表示やアイコンによるメニュー表示に対応している。そして、このディスプレイからNASの動作状態を確認したり、IPアドレスの設定などが可能になっている。また、本体前面の左側にはHDDやLANのLEDも搭載されており、HDDやLANの動作状況などはここでも確認できるようになっている。

 実際のところ、ディスプレイは初期設定やトラブル発生時程度でしか使わないことが多いのだが、具体的にどのような状況であるかを本体のみで手軽に確認できるのは便利だ。

 例えば、オフィスで利用しているケースで、休日にNASからビープ音がけたたましく鳴り響き、自分あてに電話がかかってきたとしよう。メールで状態が逐一送信されるようにしておけばいいが、通常は面倒な設定を省いたおかげで、その場にいかないと状況がわからないことが多い。

 しかし、ディスプレイがあれば、電話で通話相手に状況を確認してもらうこともできるし、簡単に対処できる場合であればその場で指示も可能だ。HDD故障などでは急な休日出勤も仕方がないかもしれないが、電源ケーブルが外れているだけであれば「電源抜けてるからつないで」の電話のひと言で済むだろう。

 いざというとき、誰にでも状況がわかるようにNASの状態が表示されるというのは安心だろう。


正面のディスプレイには現在の状況や設定などが表示されるだけでなく、ボタンを利用してIPアドレスなどの設定も可能となっている


設定の様子

電源断で自動シャットダウン。復帰作業も自動で


付属のバッテリー(15.2v/1000mAh)

 続いて、本製品の最大の特徴でもあるバッテリーについて見ていこう。背面を見ると、USBやeSATA、LANなどのポート、電源コネクタ、大型のファンに加え、2つのスロットカバーがあることがわかる。

 このうち、上部はマザーボードに搭載されているPCI-e 1x用のスロットとなっているが(サポート機器は公表されていないが、おそらく10GBイーサネットなどで使うと推測される)、その下のスロットがバッテリー用となっている。ここに付属のバッテリーを滑り込ませるようにして差し込むと、電源供給が停止した場合の非常用電源として利用することができるわけだ。


差し込むようにして本体にセットする 内部の様子。差し込んだバッテリーは基板を介してマザーボードや電源に接続される

 設定に関しては特に何もする必要はなく、バッテリーを差し込むだけで良い。この状態で、おもむろにACアダプタの電源ケーブルを引き抜くと、前述したフロントのディスプレイに「アラーム AC損失」と表示される。

 ディスプレイ表示と同時にビープ音が鳴り、さらにNAS上で動作しているすべてのサービスが自動的に停止する。電源断を認識した時点で、まずファイルへのアクセスを停止するわけだ。

 その後、ビープ音を鳴らし続けながら1分ほど待機してから、シャットダウン処理を実行し、完全に動作を停止するという動作になる。

 もちろん、ビープ音が鳴っている間に電源が復帰すればシャットダウンは回避され、通常動作に戻る。また、シャットダウン後、電源が復旧すれば、本体も自動的に起動を開始するようになっている。


電源が切断されるとディスプレイに状態が表示され、ビープ音が鳴る 電源断時のログ


電源切断と復帰の様子

 電源復帰で自動的に起動開始というのは当たり前のことではあるのだが、これができないと遠隔地の支店などに導入した場合、ビルの定期メンテナンス明けなどで、朝の余計な仕事が増えることになる。

 もちろん、バッテリーでの動作時間は1.5〜2分程度となるほか、即座にサービス停止するので、あくまでも緊急時のシャットダウン用という位置づけとなるのだが、これが小規模オフィス向けのNASに搭載された意義は非常に大きい。これであれば、本当の意味で管理担当者が不在の場合でも、NASを安心して運用できるだろう。

RAID 6でデータも安心、パフォーマンスも良好


フロントには4つのベイを搭載。JBOD、RAID 0/1/5/6/10での構成が可能

 データの信頼性に関しては、RAIDで確保できるようになっている。複数のHDDを1つのドライブとして使用できる「JBOD」や「RAID 0/1/5/6/10(Multiple RAIDも可)」に対応している。「RAID 6」や「RAID 10」で構成した場合は、ディスク容量は実容量の半分になってしまうが、2台のHDD故障にまで対応することが可能だ。

 試しに、容量1.0TBのHDD4台を「RAID 6」で構成(実容量2TB)した状態で、クライアントから5GBほどのファイルをコピーしている最中に、フロントパネルを開け、HDDを順番に2台引き抜いてみたが、問題なく動作させることができ、ファイルも無事にコピーできた。

 もちろん、ホットスワップにも対応しているので、引き抜いたHDDをそのまま戻せば、そのまま復旧させることができ、自動的にRAIDのリビルドも開始される。今回のケースでは、TB容量のHDDを利用したため、リビルドには4〜5時間かかるのだが、それでもユーザーは何も考えずHDDを交換できるのも大きなメリットだ。


RAIDの設定画面 移行できる組み合わせは限られるが、構成後のRAIDの移行もできる

 パフォーマンスに関しては、かなり優秀と言って良いだろう。以下のグラフはクライアントから本製品上の共有フォルダを、ネットワークドライブに割り当てた状態で「CrystalDiskMark2.2」を実行したときの値だ。参考として、以前に本コラムで取り上げた「Atom D510」ベースのWindows Home Server機の値も掲載している(環境が若干異なるため、参考値と考えて欲しい)。


クライアント:ThinkPad X200(CPU:Inetl Core 2 Duo P8600(2.4GHz)、チップセット:モバイルインテルGM45 Express、メモリ:ThinkPad純正(PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB×2)、ビデオカード:チップセット内蔵(GMA4500MHD)、HDD:Intel X25-M(Serial ATA 2.5、SSD、80GB)、LAN:Intel 82567LM 1000BASE-T、OS:Windows 7 Ultimate 64bit)
比較したWindows Home Server:D510MO+WHS(WD15EADSシングル、オンボード1000BASE-T)
※単位MB/s

 数値を見ると、リード・ライトともにかなり優秀な結果となっている。特に書き込みの速度が速い印象だ。また、RAID構成を変更しても、パフォーマンスにはあまり影響がないこともよくわかる。これであれば、容量さえ気にしなければ、RAID 6などの高度なRAID構成で利用することもじゅうぶん検討に値するだろう。

消費電力も低く抑えられており常用に最適


2.5インチHDDも装着可能

 機能面では、従来モデルからさほど大きな変更はなく、ファイルサーバー、FTPサーバー、iSCSI、メディアサーバー、iTunesサーバー、ダウンロードマネージャー、Nsyncによるリモートリプリケーションなどの機能を備えている。また、付属ソフトウェアによるクライアントバックアップ、外出先からも利用可能なWebアクセスなども利用可能になっている。

 新型Atom採用ということで消費電力も気になるところだが、Western DigitalのHDD「WD15EADS」を4台利用した構成時で、ワットチェッカーで計測してみたところ、アイドル時が33W前後、ピーク時が47W前後となった。

 本製品のHDDトレーには、2.5インチHDDを固定するためのネジ穴も用意されているので、2.5インチHDDを使えば、さらに消費電力を押さえることも可能だろう。前述した信頼性にしても、低い消費電力にしても、常時運用するための要件を備えたNASと言っていいだろう。


ファイル共有やメディアサーバーなどの多数の機能を搭載 iSCSIのボリュームを作成することも可能 外部からアクセス可能なポートを明けておけば、Web画面でのファイルアクセスも可能

 最後に注文をつけるとすれば、静音性と日本語対応に関する点だ。N4200は本体背面に搭載された9.2cmのファンで冷却されているのだが、「コー」という感じの小さくて低い音が常に聞こえてくる(ファンは内部のCPUにも小型のものが装着されている)。オフィスであれば気にならないと思われるが、家庭で利用する場合は、若干気になる可能性があるだろう。

 一方、日本語に関しては、もう少しブラッシュアップが必要だ。前述したフロントディスプレイなどでも見られるが、表記がたまに中国語の簡体字で表示されることがある。また、Webブラウザーからアクセスできる設定ページは、おそらく機械翻訳のせいか、ディスクの省電力設定画面が「ディスク“力”管理」となっていたり、ところどろこおかしな日本語表記に遭遇する。

 以上、使い勝手の部分に少々難はあるものの、ディスクやLAN、電源、システムと、さまざまな部分に信頼性を確保するための工夫がなされている点には実に感心させられる。価格はHDDが付属しない本体単体で8〜9万円前後とかなり高価なため、ほとんど停電の発生しない日本の個人宅では少々贅沢だが、ビジネス向けと考えると、かなりおすすめできる製品と言える。オフィスのデータ保存用にNASの導入を検討している場合は、ぜひ検討すべき1台と言えそうだ。


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2010/2/2 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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