第449回:大容量バッテリーを搭載したXi対応モバイルルーター NTTドコモ「L-09C」


 NTTドコモから、LTE方式のデータ通信サービス「Xi」に対応したモバイルルーター「L-09C」が発売された。Xi(LTE)の高速モバイル通信が可能な点も魅力だが、大容量バッテリーを搭載し、長時間利用が可能な点が特徴の製品となっている。その実力を検証してみた。

WiMAXとXiどちらにするか

 WiMAXにするか、Xiにするか? L-09Cの登場で、モバイルルーターを購入するときに、どちらを選ぶかがちょっと悩ましくなってきた。

NTTドコモのXi対応モバイルルーター「L-09C」。下り37.5Mbps/上り12.5Mbpsでの通信が可能となっている

 最大通信速度は、WiMAXが下り40Mbps/上り10Mbpsなのに対して、Xiは下り37.5Mbps/上り12.5Mbps(一部室内施設で下り75Mbps/上り25Mbps)とほぼ互角。

 対応エリアで言えばWiMAXが有利だが、L-09CはXiと3G(FOMA網)のデュアル対応となっており、「通信できる」エリアということであれば、圧倒的に広い。Xiのエリアも今年9月を目処にさらに拡大される予定だ。Xi対応エリアが広がってくれば、こちらも良い勝負になってくるだろう。

 コストについては、WiMAXは1年間の継続利用で月額3880円(UQ Flat)で機器の価格は1万2800~1万4800円前後となっている。これに対してL-09Cは少々複雑。端末価格は購入方法によって変動し、実質的に負担がかからないケースもあるようだ。一方、月々の料金は2年間の継続利用が前提となる「Xiデータプランにねん」の場合、従量制の料金プランとなっており、0~3177KBまでは1000円/月、その後、1KBごとに0.315円加算され、5GBまで6510円/月、その後、2GBごとに2625円加算される。

 つまり、上限がなくなるわけだが、5GBで当月の利用をストップする無料サービスが提供されるうえ、2012年4月までは、スタートキャンペーンということで、月額利用上限が4935円に制限されるようになっている(このほかmopera Uなどのプロバイダー契約が必要)。このため、コスト的には若干WiMAXが有利ではあるが、現時点では、さほど大きな差もないことになる。

 現状、速度やエリア、コスト的に、大きな差がないとなれば、物を言うのは端末としての魅力だ。果たして、L-09Cは、Xiを選択するだけの魅力を備えた端末なのだろうか?

 

サイズはスマートフォン並

 では、実際に製品を見ていこう。まずは、外観だが、目に付くのはその大きさだ。縦122×横64×厚さ15.9mmで、重さは約156gとなっており、最近のモバイルルーターとしては若干大柄だ。

 大きさとしては、スマートフォンと同等と言った印象で、裏返してテーブルなどに置いておくと、「どこのスマートフォンだろう?」と裏返したくなるほどだ。詳しくは後述するが、容積の大半をバッテリーが占めていることが影響しているが、コンパクトさを求めるユーザーには、少々気になるサイズと言えそうだ。

 と言っても、重量はさほど重くないので、ポケットに入れて持ち歩くことも不可能ではないうえ、鞄に入れて持ち歩く場合はまったく苦にならないので、気にするほどではないだろう。

正面側面背面

 デザインは、さすがXi対応端末といった印象で、高級感がある。ボタンの感触や表面の質感も高く、通信状況や電池残量なども表面のディスプレイに表示されるようになっているので、所有している満足感は高いだろう。

 感心したのは、起動の速さだ。モバイルルーターは電源ボタンを押してから使えるようになるまでに待たされることが多いのだが、このL-09Cは、電源ボタンを押してから、だいたい25秒ほどで通信可能な状態になる。

 しかも、本製品には、バッテリーを節約するために、側面のボタンを長押しすることで無線LANをオフにする機能が搭載されているのだが、この動作も非常にスピーディだ。無線LANオフに関してはボタンを押してからわずか2~3秒で、無線LANオンに関してはボタンを押してから7~8秒で通信可能な状態に復帰する。

 今後、スマートフォンでもテザリングが可能になることを考えると、モバイルルーターを利用するメリットは、バッテリー駆動時間の長さと手軽さになってくる。そういった意味で本製品は、この2つのポイントをしっかりと押さえている製品だと言えそうだ。

 

パフォーマンスは良好

 続いて、パフォーマンスについてだが、これはエリア次第と言える。

 Xiのサービスエリアであれば、10Mbpsを超える速度で通信できるため、外出先とは思えないほど快適な通信ができる。Youtubeなどでも、すぐに動画の再生が開始され、どんどんキャッシュされていくので、非常に快適に動画を再生することが可能だ。

都心部などXiのエリアであればLTEと表示されるXiエリア内なら10Mbps以上での通信も可能。非常に高速で、動画サービスなども快適に利用できる

 こういった高速な通信サービスが使えるようになると、動画配信サービスが、非常に身近な存在になる。外出先だからとファイルのダウンロードなどをあきらめる必要もなくなる。場所を意識せずに、いろいろなことができるようになるには、やはり通信速度が重要だということがよくわかる。

 一方、Xiのサービスエリア外でもFOMA網を利用して通信できるため、1~3Mbps前後の速度での通信ができる。このようなXiとFOMAの切替は、まったく意識せずに利用できるため、移動しながら使っていると、ディスプレイで利用ネットワークを見ない限り、どちらで通信しているのかがわからないほどだ。

 エリアに関しては、都心部(東京であれば環七の内側)であれば、ほぼXiで接続することができるが、都心部を離れると、ほぼFOMA網での接続となってしまう。9月以降のエリア拡大で、もう一歩(環八あたりまで)エリアが拡がる予定となっているが、その先となると、まだしばらくはFOMA網を使い続けることになりそうだ。

Xiのサービスエリア。東京であれば現状は環七の内側近辺まで。9月を目処にもう少しエリアが拡がる予定参考までにWiMAXのサービスエリア。エリア的には、先行の利がある

 なお、地方でも仙台などピンポイントでXiが使えるエリアもあるうえ、特定の駅周辺、空港、デパート、ショッピングモール、有名な待ち合わせ場所付近などもピンポイントでXiで接続可能になっている。

 もちろん、高速に通信するには、Xiのエリアでなければ意味がないが、実質的に「つながらない」ということがほとんどないため、エリアについてほとんど意識しなくて済むのは非常にありがたい。

 

実駆動時間は7時間前後

 続いて、バッテリー駆動時間をチェックしてみよう。冒頭でも軽く触れたが、本製品の背面カバーを開けると、やたらと縦に長いバッテリーが姿を現す。

 その容量は、3.7V/2700mAh、10.0Whとなっており、一般的なモバイルルーターの1.5倍程度の容量だ。その結果、Xiで連続6時間、FOMAで連続8時間の通信が可能となっている。

巨大なバッテリーが内蔵されている
充電用のUSBポート。フル充電には5時間かかる

 無線LANで接続したPCから一定間隔おきにPINGとHTTP GETを実行させながら、実際の駆動時間を計測してみたところ、FOMA網(残念ながら筆者宅はXi圏外だったため)で、7時間21分の連続通信を確認できた(7:56~15:17分)。カタログスペックと比べると、若干低い値だ。

 よくよく考えてみると、WiMAX対応モバイルルーターでは、3.7V/1700mAhクラスのバッテリーで実動7時間を超える製品もあるため、2700mAhで8時間、もしくは6時間というカタログスペック自体が短い印象もあるが、わずかながら、実動でこれをさらに下回ってしまったのは残念だ。

 もちろん、連続で7時間以上動作すれば、日常の利用には不足なく、電源をオン/オフしながら使えば1日十分に利用可能だ。また、標準で10分間無線LANの通信がないと電源をオフにする機能も搭載されているため、うまく利用すれば、電池切れに悩まされることもあまりない。

 しかし、あまりにも巨大なバッテリーを目にした後だと、どうしても期待を裏切られた印象がある。Xi(LTE)の通信モジュールの消費電力が大きかったり、その制御が詰め切れていなかったりと、いろいろな理由があるのだろうが、既存のモバイルルーターを凌ぐバッテリー駆動時間を期待したかったところだ。

 また、充電時間も長い。カタログスペックの充電時間はACアダプタで300分、USBで390分となっている。5時間となると、深夜に帰宅したユーザーは、翌朝までにフル充電できない可能性もありそうだ。

 バッテリー容量が大きいため仕方が無いが、一般的なモバイルルーター同様に3.5時間前後でフル充電できるようになってくれるとうれしいところだ。

 

Xiエリアで利用できるユーザー向け

 以上、NTTドコモのXi向けモバイルルーター「L-09C」を利用してみたが、本製品を購入するかどうかは、自分の活動エリアがXi対応エリアに入っているかどうかがポイントになりそうだ。

 FOMAエリアでの利用が主となると、もう少しコンパクトなFOMA用の既存製品もあり、WiMAXモバイルルーターも視野に入れて製品を選ぶことができる。大容量バッテリーと言っても、連続通信時間において圧倒的なアドバンテージがあるわけでもない。

設定画面はシンプル。ルーターとしての設定は無線LANの基本設定程度となる

 しかしながら、一旦、Xiのエリアに入ってしまうと、モバイル通信とは思えない快適さで通信できる。この快適さは、一度体験する価値はあるだろう。もちろん、バッテリー充電時間が長いこと、さらに設定がシンプルすぎる点など(ポートフォワードの設定などは搭載されない)、いくつかの点で若干物足りなさを感じる点はある。

 現時点ですぐにXiが利用したいなら他に選択肢はないが、L-09Cと同時発表されたバッファロー製のBF-01Cもこの夏には発売される見込みだ。BF-01Cは簡易NAS機能やDLNA対応のメディアサーバー機能も備え、有線LANポートを備えた充電クレードルも付属するなど、豊富な機能を備えている。9月に対応エリア拡大も予定されているため、いますぐ必要というわけではないのなら、BF-01Cを待ってから選択する方が良いかもしれない。

 なお前述した通り、4935円という月額料金は2012年4月30日までのキャンペーン料金となっている。L-09Cを購入するなら、いますぐ買って、まだ空いているLTE帯域を、料金を気にせず存分に使いたいところだ。


関連情報

2011/7/19 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。