第92回:アッカ・ネットワークスの40Mbps ADSL開通
上り3M前でも乗り換えの価値はあるのか?



 1月末の加入申し込みから約1カ月。2月の末に、ようやくアッカ・ネットワークスの40Mサービスが開通した。果たして、従来のサービスからの乗り換えを検討するに値するだろうか? その実力を検証してみた。





上り3Mが待ち遠しい

 2月6日から、40Mbpsサービスの本格提供を開始したアッカ・ネットワークス。開局スケジュールの関係で、まだサービスが開始されていない地域もあるようだが、筆者宅に関しては2月23日に工事が完了し、ようやく開通の運びとなった。昨年末の発表から考えると、サービス開始までに少々、時間がかかった印象がある。

 もちろん、現段階で同社が提供するサービスは、下りが40Mbpsに対応するのみで、注目されている上りの3Mbps化は、まだ予定すら明らかになっていない。上り3Mbpsのサービスは、事業者間協議によって、一時的に棚上げされたことなどを考えると、サービス開始までにはまだ時間がかかりそうだ。

 本命を下り40M/上り3Mのサービスと考えるのであれば、現状の下り40M/上り1Mのサービスは、ある意味、暫定的なものと言えるかもしれない。ただ、上り3M化の実現がまだ見えないことを考えると、現在利用できるアッカのADSLサービスとしてはハイスペックなサービスであることに変わりはない。





気になる速度は?

 このように、新サービスといっても、まだ、その実力の半分ほどしか見えないアッカの40Mサービスだが、やはり下りの速度は気になるところだ。クアドスペクトラムの採用によって、どこまで速度は向上したのだろうか?

 実際に筆者宅にて使用している回線の状況をまとめたのが以下の表だ。まずは、リンクアップ速度だが、従来の26Mサービスが10,784Kbpsだったのに対して、新たに開通した40Mサービスでは10,816Kbpsとほぼ変らない速度だった。実効速度も同様で、以前と比べても誤差と呼べる程度の違いしか表われなかった。多少、速度が向上するかとも期待していたのだが、残念ながらそうはいかなかったようだ。

表1:リンク速度比較
回線事業者回線種別ラインモードリンク速度
下り上り
アッカ26MAnnexI10,784kbps928kbps
40MAnnexI10,816kbps1,088kbps
イー・アクセス40MAnnexI12,928kbps1,152kbps
QuadSpectrum12,672kbps1,120kbps
表2:実効速度比較
回線事業者回線種別ラインモードspeed.rbbtoday.comBB Speed Checker
下り上り下り上り
アッカ26MAnnexI9.148269296-
40MAnnexI9.019278519765
イー・アクセス40MAnnexI10.9599310675989
QuadSpectrum10.6597110462965
 従来から利用していた26Mサービスと40Mサービスのリンク速度を比較。参考としてイー・アクセスの40Mサービスの速度も掲載した。なお、実効速度の計測に利用したBB Speed Checkerでは大きな差が見られるが、26Mサービスの計測をした時点から仕様が変更されたことが影響していると考えられる(上りも計測可能になった)

 筆者宅は、NTT収容局からの線路長こそ1.57km、伝送損失が28dBと、ADSLにとって決して悪くはない環境だが、さすがにクアドスペクトラムでの効果が期待できるほど良い環境ではない。実際、ADSLモデムの設定ページで情報を確認してみても、やはりクアドスペクトラムではなく、ダブルスペクトラムのAnnexIで接続されていた。


ADSLモデムで確認した40Mサービスの回線情報。ラインモードはG.dmt AnnexIとダブルスペクトラムで接続されていることがわかる

 同社がインターネット上で公開している技術情報を見ても、26Mサービスと比較して速度的なアドバンテージが見られるのは、線路長にして約1.4km、伝送損失で15dBとなっており、それ以上の環境では従来のサービスとまったく同じ速度になるという情報が確認できる。結果的には、この技術情報の通りとなったわけだ。

 念のため、ADSLモデムに表示されるキャリアチャートも比較してみた。若干、40Mサービスの方が各ビンでのビット搭載量が多いようにも見受けられるが、ほぼ同じ曲線を描いていることから考えても、速度的に大きな違いがないことに納得できる。

 唯一、特徴的なのは、上りの曲線で、40Mでは山が高く、26Mよりも多くのビットを搭載できていることだ。しかし、この差は上りの約100kbps向上という速度差にもきちんと表われているが、将来的に上り3M化が控えていることを考えると、それほど大きな意味はないかもしれない。



26Mサービス(左)と40Mサービス(右)のキャリアチャートを比較。上がNEXTで、下がFEXT。40Mの方が若干、ビンへの搭載量が多い部分も見受けられるが、ほぼ同じ特性を示していることから、大きな差はないと考えていい




現段階ではごく近距離向け

 今回の測定した結果から考えると、アッカの40Mサービスはクアドスペクトラムで接続されない限り、大きな速度の向上は難しいかもしれない。

 イー・アクセスやNTT東西のサービスなどの場合、24Mサービスと40Mサービスとでモデムの性能向上という技術的に大きな違いがあったことで、これが速度向上をもたらすことになったが、今回のアッカのサービスでは、このような従来サービスからの明確なアドバンテージがあまりないように見受けられる。

 もちろん、これは筆者宅という限られた環境で、しかも現時点での評価でしかなく、将来的にはファームウェアのバージョンアップなども考えられる。しかし、中長距離であっても、乗り換えによって大幅に速度が向上するようなサービスとは考えにくい。これから新規に加入するのであれば、26Mサービスと価格差のない40Mサービスを選ぶメリットはあるが、すでに26Mサービスを利用している場合は、乗り換えるべきとは言い難い。少なくとも、上り3M化開始のメドが立ってから移行を検討しても遅くはないだろう。


関連情報

2004/3/9 11:06


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。