第197回:MacBookでWindows Vistaが動く!?
Boot Campを使ったWindows Vistaインストールに挑戦



 Windows OSが動作するBoot Campの登場により、Intel Macに高い注目が集まっている。筆者もテスト環境としてMacBookを購入、Boot Campを使ってWindowsをインストールしている。今回、実用上の問題点も多いながらWindows Vista ベータ2の起動に成功したので、その方法を紹介しておこう。


通常のインストールではVistaの利用は不可

 Boot Campとは、アップルコンピュータがベータ版として提供しているソフトウェアで、Intel製のCPUを搭載したMacintoshでWindows XPが動作するというもの。Macinotosh上でWindowsを動作させるという試みはこれまでも有志が試みていたが、アップルコンピュータが公式にツールを提供したことで注目を集めている。

 Boot Campを利用してIntel MacにWindows XPをインストールする方法、キーマップの問題を解決する方法などはすでに数多く紹介されているが、次世代OSとなる「Windows Vista」ははたしてBoot Campで動作するのだろうか。マイクロソフトから英語版のWindows Vista ベータ2が開発者向けに公開されたこともあり、実際にMacBookにインストールできるかどうかを検証した。

 まず、Windows XPのインストールと同様にBootcampで通常通りのインストールを試みたが、結果から言えば、これは残念ながら失敗だった。インストーラーの起動とインストール作業まではまったく問題なく可能なものの(CTP版ではキーボードやマウスを認識せずインストール自体が不可能)、最終的なインストール完了後にWindows Vistaを起動できなかった。具体的にはブートローダの画面で「winload.exe」が見つからないというエラーメッセージが表示されているので、おそらくVistaからパーティションの構成を判断できずに起動に失敗している可能性が高い。

 Windows XPであれば、boot.iniを変更することで起動パーティションを指定することも可能だが、Vistaではブートローダの仕組みが変更されている。マイクロソフトの技術情報などを参考にVistaのDVDから起動し、System Recovery Optionsで「bcdedit」コマンドを利用したBoot Menuの構成変更も試みてたものの、あくまで筆者が試した限りでは、この方法でもWindows Vistaを起動することはできなかった。





Mac OS Xの利用をあきらめパーティションを削除

 いろいろ試行錯誤している最中、海外の掲示板で興味深い書き込みを見つけることができた。書き込みの内容によると、どうやらパーティションをすべて削除することでWindows Vistaが起動するらしい。前述したように、筆者の環境でもパーティション構成の誤認識からVistaが起動しなかったことを考えると、確かにパーティションをすべて削除し、Vistaのみの構成にしてしまえば問題を回避することができるはずだ。

 もちろん、パーティションをすべて削除すれば、Mac OS Xは起動しなくなってしまう。それならばMac Bookではなく、普通のWindowsマシンを利用すれば良いことになるので本末転倒な気もするが、Vistaが実際に動作するのかどうかを確認する意味はあるだろう。そこで、具体的に以下のような手順でインストールを試みた。

      1)Boot Campをインストール
       Windows XPをインストールする場合と同様にインストールと設定を行ない、Windowsをインストールする領域をハードディスクに確保する

      2)Windows XPのCDで起動
       最終的にインストールするOSはVistaだが、3)で紹介するパーティションの削除で、VistaのインストーラーからはMacのすべてのパーティションを完全に削除することができない。このため、Windows XPのCDで起動する

      3)パーティションをすべて削除
       Windows XPのインストーラーを進めると、インストール先のパーティションを選択する画面が表示される。ここですべてのパーティションを削除し、新たにVistaをインストールするためのパーティションを作成する

      4)Windows XPをインストール
       今回のテストでは、パーティションをすべて削除してもWindowsが起動するかを確認するために、ひとまずWindows XPをインストールした(場合によっては不要)

      5)Vistaをインストール
       VistaのDVDで起動し、3)で作成したパーティションにVistaをインストールする


 ポイントは、3)のXPのCDでパーティションを削除する点だ。Vistaのインストーラからでもパーティションをすべて削除することは可能だが、あらたに作成したパーティションが「Disk(0) Partition(2)」と表示され、見えていないパーティションが残ってしまっているように見受けられる(しかも、新たに作成したパーティションをインストール先として指定できない)。このため、必ずXPのCDでパーティションを削除するのが確実だ。

 また、今回は4)でWindows XPをインストールしているが、これはパーティションをすべて削除した状態でWindowsが起動することを確認するための作業であり、場合によっては不要と思われる。実際に検証していないので確実とは言えないが、3)でパーティションの削除と作成を行なった後、「F3」でXPのインストールを一旦終了。その後、[Option]キーを押しながらMacを起動して、XPのCDとVistaのDVDを入れ替えてインストールを開始すれば、同様にVistaのインストールができるのではないかと予想できる。

 このように、筆者宅のMacBookでは、上記の手順でWindows Vista ベータ2をインストールし、無事にVistaを起動できた。


Windows Vista ベータ2をインストールしたMacBook。ドライバやキーマップなどの問題はあるが、動作自体は非常に安定している




ドライバのインストールにも工夫が必要

 さて、これでMacBookでWindows Vistaが起動するようになったわけだが、実際に利用してみると問題点が多いこともわかった。

 まずは、ドライバの問題だ。XPの場合、Boot Campのインストール時に作成したドライバCDで、チップセット、ディスプレイ、サウンド、Bluetooth、無線LAN(正常に認識しないが……)などのドライバをインストールできるが、Vista上ではこのドライバCDが正常に動作しない。インストールは開始できるものの、途中でインストーラが無反応になってしまう。無反応な状態で強制的に電源をオフすることでディスプレイドライバは正常に認識されるが、そのほかのドライバはインストールされない。

 このため、ディスプレイ以外のドライバは手動でインストールする必要があるが、こちらも少々特殊な手順が必要だ。たとえば、サウンドに関しては、インテルのサイトからSigmatelのドライバをダウンロードしてインストールしてみたが、そのままではデバイスの起動に失敗し(コード10のエラーなので無線LANと同じ状態)、ドライバと一緒にインストールされる付属のユーティリティ(Intel Audio)の起動に失敗してしまう。

 そこで、再びBoot Campのドライバを利用してみることにした。BootcampのドライバCDはインストール開始後に、「C:\Program Files」にドライバをファイルをインストールする。前述したようにインストーラ自体は無反応になるが、「C:\Program Files」にドライバファイル自体はコピーされるので、インストーラを途中まで進めた段階で、このファイルを別のフォルダにコピーしておく。この状態でインストーラーを強制終了させ(場合によっては再起動)、デバイスマネージャからコピーしたドライバファイルを指定してサウンドのドライバを手動で更新した。これにより、問題なくサウンドが認識され、音が再生できるようになった。


サウンドドライバなどは、Bootcampで作成したドライバCDから個別にインストールする必要がある。ただし、無線LANなどはVistaでもやはり利用できない

 なお、Boot CampでWindows XPをインストールした場合、無線LAN機能が動作しない点が指摘されている。Vistaでもこれは同様で、コード10で起動エラーが発生して利用することができなかった。また、Bluetoothのドライバも手動でのインストールを試みたが、うまく認識することができなかった。


省電力機能はすべてはないが、最低限の設定を利用できる。Sleep、Resumeなども問題なく利用できた




実用上の最大の問題点はキーマップ

 このように、インストールが若干面倒なものの、主要なデバイスを認識させることは可能だった。アプリケーションに関しても、筆者が普段利用しているエディタ「Wz Editior」、日本語入力環境「ATOK」、ベータ版が公開されたOffice 2006、さらにはセキュリティ対策ソフト(Avast!の動作を確認。CAのeTrustもインストール可能だが動作が不安定))もテストとしてインストールしてみたが、いずれも問題なく利用できた。


AppleKを利用することでキーマップの変更も可能だが、「\」や「_」などの入力はできないため、実用上困るシーンも多い

 ただし、まだ最大の問題点が残っている。それはキーマップの問題だ。Windows XPの場合であれば、トリニティーワークスの「AppleK Pro」を利用して、XP上で「\」や「_」の入力、日本語入力の切り替え、右クリックの代替えが可能だが、この「AppleK Pro」は残念ながらVistaにインストールすることができない。Vistaでは署名のないドライバのインストールが制限されているようで、AplleK Proのインストール画面でインストールを実行しても無反応のままとなってしまう。


AppleKを利用することでキーマップの変更も可能だが、「\」や「_」などの入力はできないため、実用上困るシーンも多い

 その代わりに、ユーザーモードで動作する「AppleK」を利用することで「コマンド+スペース」による日本語入力の切替え、「Ctrl」+クリックやクリック&ホールドによる右クリックの代替えは可能だ。しかし、それでも「\」と「_」の入力は対応できないようで(詳細はトリニティーワークスのホームページを参照)、この2つのキーをどうしても利用することができなかった。このあたりは、Appleから正規のドライバが提供されるのを待つしかなさそうだ。





実用的ではないが動作は可能。今後のVista対応に期待

 以上、とりあえずMacBookへのWindows Vistaインストールを検証してみたが、かなり手間がかかり、キーマップなどの実用上の問題点も多い。しかも、冒頭でも触れたが、そもそもMac OS Xを削除するのであればMacにこだわる必要がないため、現状では、この方法で利用することにあまり意味はないだろう。

 ただし、今回、Intel MacでWindows Vistaを動作させること自体が可能であることは確認できたので、ブートローダの問題さえ解決すれば、Bootcampを利用してMac OS XとVistaのデュアルブートさせることにも不可能ではないのだろう。この点に光明が見えただけでも収穫があったと言える。現状はまだベータ版のVistaだが、正式OSとしてリリースされる頃にはBoot Campでの対応も期待したいところだ。


関連情報

2006/5/30 11:02


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。