第205回:Skypeでテレビが見られる!?
ノバックの「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」



 ノバックから、Skype(スカイプ)を利用して外出先からテレビを視聴できる「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」が発売された。外出先からテレビを見られるようにする製品は多数登場しているが、その中でもおそらくもっとも手軽な製品だろう。早速、その実力を検証してみよう。





ネットワークはSkypeにおまかせ

「どこでもTV for Skype」パッケージ

 今回、ノバックから発売された「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」は、なかなか画期的な製品だ。製品自体はUSB接続のテレビチューナーユニットなのだが、Skype(ビデオSkype対応の2.0以降)との連携が可能となっており、外出先からテレビを視聴することが可能だ。

 Skypeでテレビと言われてもピンと来ないかもしれないが、ポイントはSkypeのビデオチャット機能だ。もともとSkypeにはビデオチャット機能が搭載されており、USB接続のカメラなどをソースとして自分の映像を送信してテレビ電話のように利用することが可能だが、この入力ソースを前述したUSB接続のテレビチューナーユニットを指定。この状態で自宅側のPCでSkypeを起動させた状態にしておき、さらに外部からの着信に自動応答するようにしておく。これで、外出先から自宅のSkypeのIDを指定して呼び出しをかけるとビデオチャットが自動的に開始され、ソースのテレビ映像が表示されるという仕組みだ。


NV-LF2000本体。本体にUSB接続端子を備える反対側にアンテナ接続用端子

添付品一式利用イメージ

映像ソースとしてUSB接続のチューナーを指定。これにより、自宅のPCで受信したテレビ映像が接続相手のSkypeに表示される

 もちろん、ソースとしてチューナーを指定するだけでは、自宅側のPCで選択されたチャネルの映像しか表示できない。そこで、チャンネルの変更はどうするのか? と疑問に思うかもしれないが、この対策もきちんと行なわれている。NV-LF2000には、Skypeとの連携を行うためのソフトウェアが付属しており、自宅側のPCに常駐させておくことで、Skypeとテレビチューナーユニットの間を中継する。

 具体的には、外出先からチャットウィンドウに「##4#」と入力すると、それが自宅側のSkypeに受信される。この文字列をPCに常駐したNV-LF2000のソフトウェアが受け取り(SkypeのAPIを利用して連携する)、実際にチューナーを制御してチャンネルを切り替えることになる。なかなか面白い仕組みを採用した製品と言えるだろう。


LF2000に付属のソフトウェア。SkypeからのコマンドをUSBチューナーに中継する役割を担う。映像入力の種類の選択とチャンネルのサーチくらいで複雑な設定は必要なく、常駐させておくだけで機能する

外出先のPCから自宅のPCに接続。チューナーの映像が表示され、テレビが視聴できる。チャットウィンドウに「##4#」などのコマンドを入力すればチャンネルの切り替えも可能だ




Skypeによってネットワークの問題を解決

 同様に外出先からテレビを見られる製品としては、本コラムでも以前に紹介したソニーのロケーションフリー、イニシアの「Clipsteam Live」、アイ・オー・データ機器「Slingbox」などが存在する。これらはいずれも独自のソフトウェアやハードウェアを利用する製品だ。これに対して、今回の「どこでもTV for Skype」はSkypeを利用するのが特徴となっている。では、Skypeを利用するメリットはどこにあるのだろうか?

 これは大きく分けて2つ考えられる。1つは技術的なメリットだ。自宅で受信したテレビ映像を外出先からネットワーク経由で観るには、自宅の場所(ネットワーク的な)の特定とNAT/ファイアウォール越えという2つのハードルをクリアしなければならない。前述した他社製品の多くは、ダイナミックDNSやUPnPといった技術を利用しているが、Skypeを利用すればこれらの技術を製品に実装しなくて済むことになる。

 もうひとつのメリットはコストだ。前述したようにDynamic DNSの運営をしなくて済み、UPnPなどの技術を実装する必要もないばかりか、クライアントソフトウェア自体がフリーのSkypeを利用しているため、このコストがまったくかからない。実際、「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」は実売で9,800円前後と1万円を切る価格帯で販売されている。他社製品の半額以下の投資で外出先からテレビの視聴環境が整うわけだ。これは、まさにSkypeを利用するメリットと言えるだろう。





画質は予想よりも好印象。ただしSkypeならではの現象も

 このようにSkypeを利用することで、低価格に、しかも手軽に外出先からのテレビ視聴環境を整えられる「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」だが、Skypeならではの欠点も存在する。画質の問題だ。

 これは決して「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」の画質が悪いという意味ではない。標準ではSkypeのウィンドウ内に小さく映像が表示されるようになっているが、ウィンドウ表示に切り替えてサイズを変更することも可能であり、全画面表示でテレビを見ることなどもできる。特に全画面表示時の映像の緻密さなどは、おそらく競合製品に比べて格段に緻密できれいだろう。


Skype内での表示に加えて、ウィンドウ表示や全画面表示も可能。画質自体はきれいだが、帯域によってはとぎれとぎれに再生され、スムーズさに欠ける印象

 ただし、これは映像のワンシーンを取り出した場合の比較であり、動画として見たときのスムーズさとなると話は別だ。もともとSkypeの映像はビデオチャットとしての用途に最適化されているために音声の伝送が優先され、動画としてのスムーズさはあまり考慮されていない印象がある。具体的には、映像が途中で瞬間的に止まったり、途切れたり、飛び飛びに再生される。

 ビデオチャットのような用途の場合、必ずしも映像のスムーズさというのは必要なく、むしろ音声に合わせて表情がすばやく切り替わるほうが都合が良い。これに対してテレビの場合、全体的な画質が若干ぼやけたような印象だとしても、映像が連続してスムーズに再生されることが重要と言える。実際、競合他社製品は、この方向で映像のチューニングが行なわれており、ネットワークの帯域に応じて映像のビットレートを落とし、バッファを多く取って、スムーズさが損なわれないように工夫されている。あくまでビデオチャットとしての用途が目的のSkypeでは、音声は帯域に応じたチューニングが自動的に行なわれるが、映像に関してはこのような制御が行なわれておらず、スムーズな再生ができない場合がある。

 今回、筆者宅ではBフレッツとTEPCOひかりの2つの光ファイバ回線を利用し、さらにサーバー、クライアントとともに有線で接続してテストを行ったが、それでも映像のスムーズさに欠ける印象があった(特に長時間視聴を続けるとどんどんスムーズさが失われる印象がある)。これがネットワークの帯域が確保できない場合では、さらに画質が悪くなってしまうことも十分に考えられるだろう。





価格を考えればお買い得

 このように、映像のスムーズさに若干の難点がある「どこでもTV for Skype(NV-LF2000)」だが、やはり価格の安さと手軽さを考えると、そのお買い得感は十分に高いと言える。真剣にテレビを見ようと思うとスムーズさに欠ける点が気になるが、ブラウザでホームページを見ながらテレビを見るとか、作業中にテレビを見るといった使い方なら、十分に実用に耐えうるだろう。個人的には、チャンネルの切り替えが素早いのが好印象で、ザッピングしながら複数のチャンネルの番組を見るのに適してる点が気に入った。

 なお、今回の製品は、同社が開設している「どこでもTV for Skype」のデモサイトで体験することが可能だ。デモサイトはつながりにくいが、国内、および海外にあるPCの映像を実際に視聴できる。個人的には、この価格なら画質的にも納得できる範囲だと考えるが、このあたりは個人差があるので、購入前にどれほどの画質なのかを体験しておくことをお勧めする。


関連情報

2006/7/25 11:02


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。