第296回:手のひらサイズの無線LANルータ
IEEE 802.11b/gに準拠したNECアクセステクニカの「Aterm WR1200H」
NECアクセステクニカから、無線LAN内蔵ノートやゲーム機などでの利用を想定した小型の無線LANルータ「Aterm WR1200H」が発売された。コンパクトなサイズと手軽さが売りである新製品の使い心地をレポートしよう。
NECアクセステクニカから発売された「Aterm WR1200H」は、まさに手のひらサイズという表現がピッタリな無線LANルータだ。
デザインは、すでに発売されているAterm WR8500Nを踏襲しつつ、そのデザインをギュギュッと圧縮したようなイメージで、見た目では1/4くらいにまで小型化されているような印象さえ受ける。
実質的なサイズは27×85×110mmで、従来のAtermWR6670S/WR7870S比で約60%の容積を削減となっているが、恐らくデザインと、アンテナが内蔵されていることがより「コンパクト」という印象を強くしているのだろう。
手のひらサイズと呼べるほどのコンパクトなサイズ。アンテナ内蔵でスッキリとしたデザインに仕上がっている |
Aterm WR8500Nとの比較。デザインをそのままにギュッと凝縮した印象。イメージとしては1/4ほどと言っても良いほど |
無線LANルータを持ち運ぶというニーズはあまり一般的ではないものの、その気になればカバンに入れて持ち運ぶこともできそうだ。
価格も手頃で、本体のみの実売価格が7,800円前後。IEEE 802.11b/gのカード(WL54GC)子機セット、もしくはUSB子機(WL54GU)セットモデルが8,800円前後となっている。
●IEEE 802.11b/g用と割り切り
小型で安いと機能が劣るのかと不安に感じるかもしれないが、そんなこともない。
もちろん、ハイエンド製品となるWR8500Nなどと比べれば、無線LANはIEEE 802.11b/g準拠の2.4GHz対応のみであり、インターネット接続環境を自動判別する「らくらくネットスタート」、フィルタリング機能なども省かれている。ハードウェア的に見ても、背面のポート構成がWAN×1、LAN×3と、LANポートが1ポート削られているのは確かだ。
しかしながら、無線LANルータとしての基本的な機能は、Atermシリーズから受け継いでおり、ルータ関連の機能はほぼ同等、無線LANの接続をボタンで自動的に行なうことができる「らくらく無線スタート」、空きチャネルを自動選択する「オートチャネルセレクト」などの機能も搭載している。
設定画面は一世代前のAtermシリーズとほぼ同等。ただし、付加的な機能が省かれている |
言わば、付加価値的な機能をそぎ落とし、IEEE 802.11b/gによる手軽な無線LANインターネット接続を提供する製品といったところだろう。
個人的には、無線LANは空いている5GHz帯をデュアルチャネルのIEEE 802.11nで使いたいところだが、一般的には、ワイヤレスでWebを閲覧し、メールが送受信できれば十分という人の方が圧倒的に多い。そういった割り切りができるならお買い得な製品だろう。
なお、パフォーマンスについてもさほど速度は高くないものの、アンテナ内蔵としては電波感度も良好で、筆者宅での利用に関してはつながらないということはなかった。
フロア | GET | PUT |
1F | 19.97Mbps | 21.31Mbps |
2F | 12.17Mbps | 14.78Mbps |
3F | 3.15Mbps | 4.31Mbps |
※サーバーにはAMD Sempron 2600+、RAM2GB、HDD400GB、Windows Home Server搭載機を使用 ※クライアントにはLenovo ThinkPad X61、Intel Core2Duo T7500、RAM4GB(3GB)、HDD120GB、Intel PRO/Wireless 4965AGN、Windows Vista搭載機を使用 ※IISのFTPサーバーを利用し、コマンドラインからFTPによる転送を実行。安定通信時の5回の値を平均 |
●インターネット接続の設定をもっと簡単に
実際に使ってみた印象としても、やはり手軽で安心して利用できる。
付属のCDをPCにセットし、ユーティリティをインストールすれば、音声ガイド付による「らくらく無線スタート」の設定が開始され、PC内蔵の無線LANでも手軽に無線LAN接続が可能となる。
サイズの関係で、本体のボタンが簡易的なものに変更されてはいるが、設定方法としては、設定開始後にボタンを1回、クライアントからの認識後にもう一回ボタンを押すだけと非常に簡単だ。
らくらく無線スタートで設定は簡単 |
ただし、個人的に気になったのは、その後のプロセスだ。パッケージには、「つなぎ方ガイド」という大判の設定シートが同梱されており、ここでつなぎ方や設定の流れに加えて、インターネット接続の設定も紹介されているのだが、ルータとアクセスポイントのどちらを選べば良いのか、回線種別によって接続方法を使い分ける方法の部分が若干難しい印象を受けた。
試しに、妻に、このシートと本体を渡して設定にチャレンジさせてみたのだが、説明がよくわからないという理由もあるが、何よりシートの画面が小さくて見えないという理由で、実際の設定にたどり着く前にギブアップされてしまった。
回線種別による分岐など丁寧にインターネット接続の方法が紹介されているが、いかんせん画面が小さく見にくいのが難点 |
本製品の場合、サイズがコンパクトで、価格も手ごろ、また詳しくは後述するがゲーム機での利用も想定されているため、従来製品よりもさらに初心者の人々が利用する可能性が高い。
無線LANの設定に関しては初心者でも安心してできそうだが、その後のインターネット接続の説明に関してはもう少し整理して、わかりやすくした方が良さそうだ。
ハードウェアや価格的な制約があるのは十分理解できるが、むしろこの製品にこそ「らくらくネットスタート」を搭載して欲しかったと感じた。
ウィザード形式でインターネット接続を設定できるが、上位機種に搭載されている回線判別機能(らくらくネットスタート)は搭載されないのが残念 |
●ゲーム機での利用を想定
さて、これ以外で本製品で特徴的なのは、ゲーム機での利用が想定されている点だ。
と言っても、WR8500Nなどで採用されているマルチSSIDの機能が搭載されているわけではない。WR1200Hでは、SSIDは1つしか設定できないが、このセキュリティ設定が標準でWEP(128bit)に設定されている。
無線LANのセキュリティ設定が標準でWEPになっており、ゲーム機の接続にも困らない | PSPから接続したところ。ニンテンドーDS、Wiiなども手軽に接続できる |
これにより、WEPにしか対応しないニンテンドーDSも、標準設定のまま「らくらく無線スタート」で手軽に接続できるようになっている。もちろん、そのほかのゲーム機の接続にも対応しており、Wii、PS3、PSPなども手軽に接続可能だ。
本体のスイッチによってアクセスポイントモードで動作させることも簡単にできるようになっているので、もしかするとゲーム機専用のアクセスポイントとして、個別に購入するという用途にも適しているかもしれない。
この場合、インターネット接続なども考慮しなくて済むため、前述の初心者が戸惑うような設定もせずに済む。場合によっては、標準設定をアクセスポイントモードにして、ゲーム機専用として販売しても良さそうだ。
以上、NECアクセステクニカのWR1200Hを検証してみたが、ルータというよりは、アクセスポイントとして手軽に利用するのに適した製品と言えそうだ。IP電話の関係で、すでにルータが家庭に存在するという人も多く、PCも無線LAN内蔵というケースが多いことを考えると、この機能でこの価格、さらにこのサイズなら十分にお買い得な製品と言えるだろう。
関連情報
2008/6/10 11:06
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