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IPA、2015年度に未踏スーパークリエータに認定された10名とプロジェクトを発表
2016年6月2日 20:37
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2日、2015年度の未踏スーパークリエータ認定者の発表と各プロジェクトを紹介する記者説明会を開催した。
2015年度に採択された未踏クリエータ23名の中から、今回10名(8プロジェクト)がスーパークリエータとして認定された。これにより、IPAが2000年度から実施している「未踏IT人材発掘・育成事業」での認定者は282名になった。
17年前のプロジェクト開始時からかかわっている竹内郁雄氏は、2008年からは発掘育成に重点を移しているが、「人材育成への投資はどんなインフラ投資より効率がいい。それに参画している幸せを感じている」とコメント。「今年はスーパークリエータ認定が全体の43%で過去最高の比率となった。公募倍率が年々上がっていることからもこれは当然で、プロジェクトマネージャーは絶対評価で選んでいる」と述べた。
ここからは各プロジェクトを紹介していこう。「sigboost」は、ビジュアルプログラミング言語「Cycling’74」で作成された演算負荷の高いプログラムをFPGA向けに変換するためのサーバーと、出力されたバイナリイメージを実行できるハードウェアとのセットとなる。ハードウェアにより高速化され、演奏でのリアルタイム処理に耐える新しいタイプの楽器と言える。
「LIGHTNING UI」は、ソフトウェアのUIにおける問題点として、ユーザーにより操作が異なることと、UIの変更を続けながら最適化を行うのが難しいことから、過去の操作ログから次の行動を予測、ユーザーが次に求める機能ボタンなどへのアクセスを容易にするもの。現在のところ利用可能なアプリはPowerPointとなるが、ほかのアプリへの対応も可能とのことだ。
「心温計」は、体温計のようにユーザーの心の状態を手軽に定量化・可視化し、日々の生活を快適に過ごすことを支援するシステム。SNSの操作ログや身体行動、睡眠などのログを機械学習し、心の状態を可視化するもの。2015年12月から従業員50人以上の事業所に対して「ストレスチェック制度」が義務化されるなど、関心の高い課題に応えるものでもある。
「Lightmetrica」は、写実的な画像を生成するために映画産業やゲーム産業などで広く用いられているレンダリングのために開発された新しいフレームワーク。さまざまな手法を1つの枠組みに実装できる拡張の柔軟性と、機能拡張の容易さを併せ持つ。プラグインにより、レンダリング手法、交差判定、マテリアル、光源モデル、センサーモデル、テクスチャなど、レンダラを構成するほとんどの構成要素を拡張可能で、それぞれの要素の検証を自動的に行う機能もあるという。
「UMATracker」は、動物研究における個体追跡を動画をもとに自動化するためのソフトウェア。動物の位置座標を動画から抽出、難しかった複数個体の追跡も可能だという。動物行動解析ではこれまで、「手打ち」と呼ばれるこうした作業に多くの研究者が膨大な時間を浪費していたが、これにより薬理や病理への理解が迅速に進むことが期待できるという。
「Nano Deep」は、画像認識技術を備えた小型の動画撮影装置。撮影した動画の被写体を認識し、リアルタイムで文字として表示する。通常は膨大なリソースを要するディープラーニングの仕組みを、高度な処理が可能なFPGAに独自に組み込み、スタンドアローンで動作可能となっている。
「HackforPlay」はもともと、プログラムの画面を開いて任意のプログラムを実行し、“ハック”しなければクリアできないRPGとして開発されたという。これをもとに、新たに「改造ステージ」を作成してサーバーに投稿したり、さらに誰かが作ったものを書き換えて投稿できるプラットフォームとして開発されたもの。こうした仕組みにより、子供はゲームを遊ぶようにプログラミングを学習できるという。すでに子供向けの教室運営なども手掛け、今後も継続予定とのことだ。
「Eyecatch」は、ウェブUIの検証を支援するためのソフトウェア。まずEyecatchのサーバー上ですべてのページがレンダリングされ、コードの変更による見た目の変化を変化のあった箇所のみをもれなく確認できるため、効率の良い検証が行えるという。認証などを含め、ユーザーがブラウザーで行える操作の多くも検証できるとのことだ。ページ数の多い大規模サイトであればあるほど、より利用効果は大きい。