ニュース

Windows 10 Anniversary Updateで新しい価値を提供

日本マイクロソフトが説明会でアピール

 日本マイクロソフト株式会社は5日、Windows 10の大型アップデート「Windows 10 Anniversary Update」に関する記者説明会を開催した。

 Windows 10は提供開始から1年が経過した。6月末までには3.5億台以上のデバイスで稼働し、これまでのWindowsでは最も速いペースでシェアが広がっているという。また、「実際に利用したユーザーの評価も今までのWindowsの中で一番高い」と日本マイクロソフト株式会社の三上智子氏(業務執行役員 Windows&デバイス本部 本部長)は述べている。

 Windows 10への無償アップグレードについては、5月に通知画面を変更したところ、ウィンドウ左上の[閉じる]ボタンを押してもアップグレードがキャンセルされないことから、「勝手にアップグレードされた」といったフィードバックが多く寄せられたという。これを本社に伝えて交渉した結果、[閉じる]ボタンを押してアップグレードが行われなくなるよう、内容を変更したとのことだ。

 三上氏はこうした経緯について、「情報提供する立場からは大きく反省し、真摯に受け止め、経験を生かして愛されるWindowsを目指したい」とした。

 なお、サポート窓口への問い合わせは、通知画面を変更した5月過ぎに増加したことを受け、サポート体制を2.5倍にし、日本独自に利用されているアプリの検証なども進めたという。6月以降はさらに通常の4倍へサポート体制を拡充、SNSをはじめとしたオンラインでの情報提供や、チャットによる情報提供も行ったとのこと。

 通知画面を変更した6月以降は落ち着いたものの、7月29日のWindows 8.1/7からWindows 10への無償アップグレード提供終了が近づくにつれ、アップグレード方法についての問い合わせは、さらに急増。国内では、最後の1週間のアップグレード数が非常に多く、「アップグレードが最後に集中したのは日本の特性で、最終的にはグローバルに引けを取らない移行率になった」(三上氏)とのことだ。

 日本マイクロソフトでは、キャラバンカーが全国68都市を訪問、1.9万kmを移動した「Windows 10体験キャラバン」を3カ月間にわたって実施。体験会に足を運んだ三上氏は、「非常に多くの方が長蛇の列を作り、興味を持っていただいていることを肌で感じた」という。子供向けのコーナーもあり、何の説明もせずにお絵かきをし始めたのも印象的だったとした上で、今後もユーザーと直接交流できる機会を増やしていきたいと述べた。

 国内では8月3日より提供を開始した「Windows 10 Anniversary Update」では、新しいデバイスで新しい価値を提供し、法人での展開を加速するとし、「この2つの実現にはユーザーの声が不可欠」と語った。

 記者説明会で行われたデモでは、Windows 10 Anniversary Updateの新機能の数々が紹介された。ペンデバイスでの手書きをより快適で利用できる「Windows Ink」では、タスクトレイに「Windows Inkワークスペースボタン」を表示すれば、即座に各機能にアクセス可能になった。ペンでの入力もよりスムーズになったという。画面スケッチの機能では、ツールバーから定規やペンの色の変更などを利用しやすくなっている。また、Windows 10 Anniversary Update SDKにより、ほかのアプリやサービスにも実装しやすくなったとのことだ。

 指紋や顔での生体認証機能「Windows Hello」は、従来からWindowsのサインインや、「Windowsストア」アプリでのアプリ購入時の認証、サードパーティー製UWPアプリでのユーザー認証などで利用可能だったが、Windows 10 Anniversary Updateでは、標準搭載のウェブブラウザー「Microsoft Edge」で利用可能になった。

 これにより指紋認証を行うだけで、IDとパスワードの入力が必要なウェブサイトでの認証が可能となる。デモを担当した日本マイクロソフト株式会社の春日井良隆氏(Windows本部プロダクトマネージャー)はWindows Helloについて、「IDとパスワードを必要とするありとあらゆるもので利用できることを目指している」と述べるとともに、生体認証の標準化団体である「FIDO Alliance」とともに開発を進めているため、今後はほかのブラウザーでも採用を働きかけていくとのことだ。

 Microsoft Edgeでは、ブラウザーの基本的と言える機能のいくつかが、Windows 10 Anniversary Updateでようやく実装された。例えば、[戻る]ボタンから、直前に閲覧していたサイト以外に、それ以前のウェブサイトにも戻ることが可能になった。また、サイトのピン留めも可能になった。このほか、[お気に入り]を右クリックした際のメニュー項目に、[新しいタブに開く][名前の並び替え]が追加された。

 このほか、拡張機能に対応したのも大きなトピックだ。導入できる拡張機能は、Windowsストアで提供されるものに限られるため、当面はほかのブラウザーにある機能の一部が利用できる形にとどまるが、「主婦がショッピングに使うときと、会社のマーケターが使用するとき、ブラウザーに必要とされる機能は異なる」(春日井氏)とし、マウスジェスチャーや翻訳といった機能がデモされた。

 音声アシスタント「Cortana」についても、発話がよりスムーズになり、デモで聞いた限りでは、声自体やトーンが確実にリアルに近づいてきていた。日本の風習や文化も取り込んだとのことで、音声認識の精度も向上しているという。さらに、呼び掛けから音声で何度かのやり取りを行う「マルチターン」でも、受け答えの内容がより妥当になっている。ロック画面からの音声によるCortanaの呼び出しも可能になっている。

 このほか、日本語IMEでも予測精度が向上、手書きパネルでは従来、文字入力用のボックスが設定されていて一度に入力できる文字数を制限されていたが、何文字でも入力可能になったほか、日本語の認識精度が向上している。また、フリック入力用のキーボードは、従来の上下に動かすだけだったが、画面内を自由に移動可能になった。

 「メール」アプリもアップデートされ、国内31社のプロバイダーに対応した。また、今後はゲームタイトルをWindowsとXBoxで同時にリリースするという。Windowsストアで購入すれば、いずれの環境でもプレーが可能とのことだ。

 このほか、読み上げ機能をはじめとしたアクセシビリティでの強化や、障碍者向けの無償アップグレード提供についても紹介された。