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「江戸料理レシピデータセット」公開、天明5年刊行の料理本から卵料理107点をデジタル化
現代向けにアレンジしたレシピも「クックパッド」で公開
2016年11月24日 20:00
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)と大学共同利用機関法人人間文化研究機構国文学研究資料館(国文研)は24日、江戸時代の料理本に書かれた調理手順をデジタル化した「江戸料理レシピデータセット」を公開した。あわせて、現代語訳および現代のレシピ形式に編集したデータを「クックパッド」で公開する。
NIIと国文研は、今回のレシピデータセットの原典を含む古典籍700点の画像データと書誌データなどを「日本古典籍データセット」として11月10日に公開。同17日には古典籍で使われている“くずし字”の字形データによる「日本古典籍字形データセット」を公開した。両データは「人文学オープンデータ共同利用センター準備室」のサイトで閲覧できる。字形データは現時点で約8万字が登録されており、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「表示-継承4.0(CC BY-DSA)」の下で公開。今年度中に約40万字に拡大する予定だ。
江戸料理レシピデータセットは、国文研が所蔵する江戸時代後期・天明5年(1785年)刊行の料理本「万宝料理秘密箱」中の「卵百珍」に記載された卵料理全107点が対象。くずし字で書かれている調理手順を翻刻した上で、20点を現代語訳し、さらにその中の5点を現在でも調理可能なレシピにアレンジした。このレシピは、クックパッド株式会社と一般社団法人日本家政学会食文化研究部会が運営する「クックパッド 江戸ご飯」で公開する。
当時のレシピは食材の名称が現代と異なったり、道具の入手が困難なほか、調理手順や材料の分量が明記されていないことがある。そこで、ただ翻訳するだけなく、江戸時代および現代の料理文化に詳しい専門家の協力を得て、現代のレシピ形式に合わせたデータ化を目指した。
例えば、「容器ごと水で冷やす」は「冷蔵庫で2時間程度冷やす」など、現代の道具を用いる手順に変えている。また、「葛粉」は「片栗粉」、と入手しやすい材料に変えたり、「卵10個」を「卵5個」へと現代の生活にあった分量に変更。記載された手順に従えば、誰でも手軽に江戸時代の料理を作れるとしている。なお、クックパッド側ではこれらのレシピが現代的に作れるかどうか、危険な操作・手順が伴っていないかなどの確認を行っているという。
今回のデータセットの活用方法は、2015年に開催されたアイデアソン「歴史的典籍オープンデータワークショップ~古典をつかって何ができるか!じんもんそん 2015~」において、古典籍を元にした料理法をクックパッドのユーザー同士で報告できると面白いと発案したのがきっかけ。
NIIコンテンツ科学研究系准教授の北本朝展氏は、「江戸時代の文化を現代に取り込むことで、日本の食文化への理解を深めたり、現代風のアレンジで和食の新たな可能性に気付く発見があるのではないか」と期待を述べた。