東京都の青少年健全育成条例改正案、継続審査が決定


 東京都(石原慎太郎知事)が議案として都議会に提出していた「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」(条例改正案)について19日、都議会総務委員会において、継続審査とすることを決定した。

 条例改正案では、「青少年の健全な育成を図るため、児童ポルノの根絶等への機運の醸成等に関する規定を設けるとともに、インターネット利用環境の整備等に関する規定を改めるほか、規定を整備する必要がある」とし、青少年(18歳未満の者を指す)が利用するのに適した携帯電話端末を都知事が推奨する制度の導入、保護者が携帯フィルタリングを解除する際の手続きの厳格化、望ましいフィルタリングの水準についての規定、児童ポルノの根絶および「非実在青少年」の性交などを描写した漫画やアニメ(青少年性的視覚描写物)のまん延防止に向けた取り組みなどを盛り込んだ。

 しかし、フィルタリングの対象にするよう求めている情報の定義や、非実在青少年の定義などがあいまいであり、拡大解釈して恣意的に運用されるおそれなどについて、インターネット業界や出版関係者、学識経験者などから、表現規制につながりかねないなどの声が上がっていた。

 午後1時半から開かれた東京都総務委員会では、東京都予算に対する意見開陳の後、付託議案について審査が行われ、条例改正案について各会派からの意見が表明された。

 民主党は、条例改正案の理念には賛同しているが、その取り組みや施策については熟考が必要だと指摘。児童ポルノや青少年の性的描写物に対する新たな規定、インターネット利用環境の整備などの改訂規定には、慎重に議論して都民の誤解を払拭していく必要があり、保護者や事業者、作家など関係者の意見を広く聞く必要があるとして、条例改正案の継続審査を求めた。また、児童ポルノの根絶には機運の醸成だけでなく性的虐待を受けた子供たちの保護と回復のための対応も重視していくこと、インターネットの利用環境の整備はフィルタリングに頼るだけでなく、子供たちの情報モラルやリテラシーの向上、携帯電話のルール作りなど総合的な取り組みが必要だと指摘した。

 自民党は、インターネットや携帯電話に絡む青少年のトラブルの増加、児童ポルノなどの氾濫から子供たちを守るため、条例は早急に実施すべきであると主張。条例案に対しては、誤解に基づく反対などの意見があり、継続審査を求める声もあり、期限を付した条例案を継続審議とすることは理解できないが、条例改正を円滑に進めるためには継続審査もやむを得ないとして、継続審査に同意するとともに、早期の条例改正を求めた。

 公明党は、条例改正案は児童ポルノ撲滅を目指し、何人も児童ポルノを所持しない責務を有することを明記し、児童に対する性犯罪を肯定的に描いた漫画などを不健全図書として指定できるようにするものであり、条例改正案の成立を目指してきたと説明。条例改正案に対しては、文言が拡大解釈をされ、表現の自由が制限されるのではないかといった声が寄せられているが、文言の定義などについては審議の中で東京都側から明確な答弁があり、適正な効果を得られると考えているとした。一方、これまでの審議により、議会で過半数の賛成が得られないことが明らかになったとして、審査を継続して成立を目指していくこととし、各会派の理解を得られることを強く望むとした。

 共産党は、条例改正案は表現の自由の萎縮につながりかねないこと、漫画などの規制と青少年の健全な成長との関係が科学的根拠に基づいていないこと、都民の自発的な協力を得られにくい状況を作り出すことなどの点から、条例改正案には反対を表明。これまでの質疑を通じても、こうした問題点は払拭されておらず、慎重な審議を求めていくとした。

 都議会生活者ネットワーク ・みらいは、性情報が溢れ、子供も容易に触れられる状況は決して好ましいものではなく、特に児童ポルノは子供の将来に大きな傷を残すものであると説明。子供を性犯罪から守り、児童ポルノなどの規制を行っていくことは必要なことだと考えているとした。しかし、今回の条例改正案は内容があいまいでわかりにくいものが多く、拡大解釈への不安や行政の恣意的な対応への懸念があると指摘。条例の実効性を高めるためには、業界の協力も不可欠であるとして、細部を見直して議論を深めていくために継続審査を求めるとした。

 これらの意見を受け、委員会では「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」については、全会一致で継続審査とすることを決定。これにより、30日に開かれる本議会への条例改正案提出は見送られ、6月開催の議会に先送りされた。


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(三柳 英樹)

2010/3/19 14:46