EVERNOTE、新サービスと国内企業との連携に関する説明会
Evernoteサービスを手掛ける米Evernote Corporationは9月29日、フィル・リービン(Phil Libin)CEO来日に合わせて都内で記者説明会を開催。新サービスのEvernote TrunkやEvernote Site Memoryについて説明するとともに、Evernoteと連携する製品やサービスを提供する国内企業の紹介を行った。
●数カ月使い続けたユーザーは離れない~蓄積する情報の価値
米EvernoteのCEO、フィル・リービン(Phil Libin)氏 |
リービン氏はまず、Evernoteサービスについて「人間の記憶のグローバルプラットフォームになりたいと考えています。わたしたちが提供するこのプラットフォームで、どこにいても蓄積した情報にきちんとアクセスできるようにしたい」とコンセプトを説明。
続けて、これは「弊社だけでできることではない。だからこそパートナーとの協業が重要だと考えている」として、パートナー戦略の重要性を強調した。
また、Evernoteサービスの位置づけについては、「モバイルモバイルアプリケーションの世界には3つの重要なセグメントがある。まずは音楽、映画、ゲームなどに代表されるエンターテイメント、それに、友人や会社の同僚などとコミュニケーションをとるためのソーシャルなサービス。そして、もうひとつがインフォメーションの世界だ」と述べ、Evernoteはこのインフォメーションのサービスにあたると述べた。
その上で、「Evernoteのゴールは、インフォメーションのジャンルで、コンシューマにとって最重要のサービスとなることだ。このセグメントで超優良企業になりたいと考えている」とした。
「インフォメーションのサービスでは、他の2つに比べて非常に重要な特徴がある。記憶の蓄積となるので、長く使えば使うほど価値が出てくる。映画などは長く見れば価値が高まるかというとそういうわけではない。情報は蓄積することによって価値が高まる。この蓄積による価値をビジネスパートナーと共有したいと考えている。」
●時間の経過とともに収益が上がるわけ
リービン氏はここで、Evernoteサービスの特徴を示す数字を上げた。2008年の3月、3万1000人がEvernoteの会員になったが、翌月このうち50%が戻ってこなかった。2カ月め、実ユーザーはさらに1~2割減ったという。しかしその後、2カ月後からはユーザーの数は減らなかったという。「数カ月間Evernoteを使ったユーザーは、その後もEvernoteから離れない。これらのユーザーは現在も使い続けている」。
現在はひと月に約35万人が加入しているが、この傾向はほとんど同じだという。
次に、2008年3月に加入したユーザーからの売上をグラフで示した。2008年3月に加入した3万1000人のうち1万人が残り、この残ったユーザー1万人からの売上げは当初月700ドルだった。なお、この売上げは、プレミアム会員の月5ドルの収益によるものだ。2年後には、同じユーザー1万人から月1万ドルの収益が上がっているという。
リービン氏は、「情報の世界は時間が経てば経つほど、本人にとって価値が高まる。それを示す数字と言える。たとえば、2年前の3月の時点から、ユーザーは一切増えなくても売上げは増えるということがわかる」と述べ、こうしたビジネスモデルはこれまでにない希有なものだと強調した。
2008年3月に登録した3万1000人のユーザーのうち、数か月後に残った1万人は現在に至るまで使い続けている | 2008年3月に登録したユーザーのうち、使い続けている1万人から上がる収益。2010年7月には月1万ドルに達した |
●ユーザー動向
リービン氏は、続いてEvernoteのユーザー数について説明。現在世界で約450万人のユーザーがいるが、Evernoteユーザーは最初の100万人に到達するまでに446日、100万人から200万人到達までに222日、200万人から300万人までが133日、300万人から400万人までは108日と、加速度的にユーザーが増加していることを示した。現在は毎日1万1000人が新規ユーザー登録を行っているという。
国別では、2年半前にサービスを開始した米国のユーザーが57%で、次いで、半年前に日本語版サービスを開始した日本のユーザーが18%を占めると述べた。日本のユーザーは3位以後のその他の国20カ国を合わせたよりも多く、日本は非常に重要な市場だと強調した。このため、日本では他の国では行っていない現地サポートスタッフも配置しているという。
またプラットフォーム別では、6カ月前と比べたユーザーの増減をパーセンテージで示した。それによると、Windows Mobileが32%減、Palm Web OS 9%減と6カ月前から減少。BlackBerryは44%増、Apple iOSは124%増。最も増加したのがAndroidで613%増となった。このため、米EvernoteではAndroid対応スタッフを3倍に増やしたという。
ユーザー数の増加 | ユーザーを国別に分けたグラフ。米国以外では、日本がきわめて多いことがわかる |
プラットフォーム別に半年前からの増減を比較 |
●Evernote Trunkノートブックに学研や東急ハンズがコンテンツ提供
「Evernote Trunk」は、7月にリリースされたEvernoteのデスクトップクライアントとWebアプリケーションに組み込まれた「オンライン・カタログ」サービス。
Evernoteとの連携機能を持つハードウェアやソフトウェアが紹介されているほか、「ノートブック」という機能があり、出版社などのコンテンツホルダーは蓄積型の情報コンテンツを提供できる。ユーザーが見て気にいったコンテンツはボタンひとつでユーザーのEvernoteに取り込むことが可能だ。
国内での「ノートブック」コンテンツ提供として、学研の「大人の科学マガジン」、東急ハンズの「HINT FILE」が紹介された。なお、ノートブックの同期分のデータ転送は、転送量制限の対象とはならず、無料ユーザーの転送量制限40MBには影響しない。
リービン氏はTrunkサービスについて、「Trunkを通じて、パートナーからのイノベーションが期待できると考えている。2000以上のサードパーティがEvernoteとAPI連携した製品を作っており、そのうち250製品がすでに市場投入されており、うち約半数が日本のデベロッパーだ」と述べ、ここでも日本の重要性を強調した。
TrunkサービスはEvernote連携機能を持つ製品やサービスのカタログだが、ノートブックというコンテンツ配信機能も実装された | 大人の科学マガジンのテルミンを持って、こうしたおもちゃが大好きだと語るリービン氏 |
●Evernote サイトメモリー~Evernoteにクリップするためのボタン
Evernoteサイトメモリーは9月に発表された新サービスで、サイト運営者は小さなアイコンをサイトに埋め込み、読者がそのボタンをクリックすると、記事を直接Evernoteに持って行くことができる。
リービン氏は、「Evernoteに転送する内容や著作権はすべてコンテンツホルダーであるサイト運営者がコントロールすることができる」として著作権管理に関してEvernote側はタッチせず、コンテンツホルダーに任せることを強調した。
国内でEvernoteサイトメモリーを導入するサイトとして、NEC BIGLOBE、ITmedia、日経BPが紹介された。NEC BIGLOBEではレシピと温泉のサイトで10月に対応する予定。ITmediaは「@IT自分戦略研究所」サイトで今日29日からボタンを実装したほか、今後全媒体で展開していくという。
サイトメモリーは、サイトに埋め込むボタンで、サイトのコンテンツをEvernoteに取り込む機能を持つ。アフィリエイトプログラムも提供される | BIGLOBEの画面イメージ(実装は10月の見込み)。印刷するボタンの右隣にあるのがEvernoteサイトメモリーのボタン |
●アフィリエイトプログラムの開始~10月1日にパートナーセミナー開催
また、Evernoteでは、上述のサイトメモリーなどのサービスと合わせて導入できるアフィリエイトプログラムを開始した。
たとえばサイトメモリー導入サイトで、貼られたEvernoteボタンを押してEvernoteに新規で会員登録を行ったユーザーについては、登録ユーザーがプレミアム(有料)会員になった場合にそのユーザーからの最初の収益10ドルをサイト運営者に支払うというもの。
Evernoteでは、このアフィリエイトプログラムの導入を検討する企業などを対象にパートナーセミナーを10月1日20時より、デジタルハリウッド大学大学院の秋葉原メインキャンパス(秋葉原ダイビル7階)で開催する。
登録したユーザーからの最初の10ドルを支払うアフィリエイトプログラム | パートナーセミナーを10月1日に開催する |
関連情報
(工藤 ひろえ)
2010/9/29 18:41
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