記事検索

コンビニコピー違法化、私的クラウド補償金も!? “私的複製”見直しへ審議


 私的使用のための著作物の複製を認めた著作権法第30条について、抜本的な見直しも見据えた検討が文化庁の文化審議会で始まる模様だ。同審議会のもとで著作権法制度の在り方に関して審議する「著作権分科会」の「法制問題小委員会」において、2011年度の検討課題の1つとして「権利制限規定の見直し」が挙げられており、すでに権利者団体やメーカー団体、ユーザー団体などにヒアリングを実施。第30条に関連する現状の問題点の把握・整理が進められている。

 各団体がそれぞれの立場でさまざまな問題点を訴えているが、主な論点としては「公衆用自動複製機器」の取り扱いがある。また、私的録音録画補償金制度の見直し(範囲拡大または廃止・再構築など)、ダウンロード違法化の強化(範囲拡大や刑罰化)といった意見も引き続き挙がっている。

「公衆用自動複製機器」の経過措置の見直し求める意見

9月21日に開催された、法制問題小委員会の第4回会合

 著作権法では、著作物は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、その使用する者が複製できる」(30条1項)とされている。

 ただし例外があり、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器)を用いて複製する場合」(30条1項1号)、「技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになった複製を、その事実を知りながら行う場合」(30条1項2号)、「著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」(30条1項3号)は、私的使用のための複製には含まれず、著作権侵害に当たる。

 このうち30条1項1号については経過措置があり、「当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする」(附則第5条の2)とされている。この経過措置により、例えばコンビニエンスストアなどで利用できるコピー機で書籍などをコピーするような場合、現在は著作権侵害に当たらないことになるわけだ。

 これは、同規定の制定当時、すでにこうしたコピーサービスが業者・利用者ともに普及していた一方で、コピーに関する権利の集中的処理体制が整備されていなかったことが背景にあるという。公衆用自動複製機器による複製に対して権利者が権利を行使することが困難であり、また、利用者による許諾手続きも事実上困難だったことを考慮したかたちだ。

 しかし、これについて社団法人日本書籍出版協会と社団法人日本雑誌協会では、1984年の附則追加からすでに27年以上経過しており、状況が規定の趣旨にそぐわなくなったとして、同附則を削除することを求めている。現在ではコピーに関する集中的権利処理体制として、社団法人日本複写権センター(JRRC)と一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)が十分にその機能を果たしていると説明するとともに、「営利を目的とした出版物の複製業者の行為は法律の趣旨を逸脱しており、権利者の利益を不当に害するおそれがある」「新しい複製・通信技術の進展に伴い、立法当時は存在しなかった文書・図書のデジタル複製による私的領域の範囲を超えた流用の蓋然性が大きくなっている」とも指摘。また、同附則がもたらす影響として、自炊請負業者のほか、自炊スペースと機材を提供する業者、自炊スペース・機材提供に加えて裁断済み書籍を貸し出す業者など、自炊関連業者の多様化も挙げている。

 一方、日本知的財産協会は、正当に取得した著作物を個人的に家庭内などでの使用のために複製するのであれば、自己で所有する複製機器で複製することと、公衆用自動複製機器で複製することは変わらないと指摘。30条1項1号じたいの削除を含め、公衆用自動複製機器の取り扱いについて議論すべきと述べている。

 このほか、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が自動複製機器に関して、クラウドサービスとの兼ね合いで言及。「現在では技術環境・利用環境の変化により、クラウドで行われるデジタルロッカーへの複製といったことも行われている。居宅内の記録機器に保存したコピーが居宅外のクラウド上に保存されるという違いがあるだけでその実質は同じであり、権利者に新たな経済的損失が生じているとも思えない」などとし、附則第5条の2も含め、30条1項1号を削除すべきとの意見を示している。

補償金をスキャナー/プリンター、クラウドへも拡大すべきとの意見

 私的録音録画補償金制度については、「私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であって政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない」(30条2項)と規定されている。

 補償金制度をめぐっては、これまでも数年にわたり議論されており、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)、一般社団法人日本レコード協会(RIAJ)、社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CPRA)などの権利者側団体が補償金制度の拡充や立て直しなどを訴えてきた。今回も携帯音楽プレーヤーなど政令指定されずに制度が形骸化していることを指摘。対象機器をPCのHDDやデータ用メディアも含めること、さらには現在の制度に変わる補償金制度を創設することなどを改めて求めている。

 さらに今回は、補償金制度の対象行為を「録音」と「録画」から拡大する必要性を指摘する意見もある。

 社団法人日本美術家連盟と一般社団法人日本写真著作権協会が連名で意見を提出。スキャナーやスキャンソフト、プリンターの高性能化・低価格化が進んだことで、画像の著作物においても家庭で精緻な複製を容易に作成でき、メモリの大容量化・低価格化が進んだことでそれらのデータ保存も安価で行えるようになった背景を説明。利用者の利便性を担保するために私的使用のための権利制限は必要であり、維持すべきとしながらも、補償金制度の対象行為を録音録画だけでなく、複製可能な機器に拡大し、一元化した広く薄い補償金制度を創設することを提案している。

 さらにCPRAは、「権利者に影響を与えるデジタル方式による複製は、すでに個別の機器、媒体にとどまらず、それらが組み合わされたり、またソフトウェア、通信等、その他の手段と複合的に組み合わされることにより広範に行われており、そうした実態を継続的に広く捕捉し得る制度として、補償金制度を再構築すべき」と述べている。複製行為を伴うクラウドサービスの利用にも補償金が必要との意味にもとらえることができ、JEITAが言及した「デジタルロッカー」の件もふまえ、クラウドサービスと第30条との関係の議論が注目される。

違法ダウンロードへの刑罰導入、ダウンロード以外の海賊版複製の違法化求める意見

 いわゆるダウンロード違法化は、前述の30条1項3号により2010年1月に施行されたばかり。権利者に無断で配信されている音楽や映像を違法と知りながらダウンロードする行為を、私的使用目的のための複製から除外・禁止したもので、刑事罰はない。

 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は以前からの主張どおり、ダウンロード違法化の対象を、録音・録画物に加えて、ビジネスソフトや各種ツールアプリケーションなど、プログラムの著作物も含めるべきと訴えている。

 ACCSは、ファイル共有ソフト「Share」で流通しているプログラムの著作物についての調査結果も報告している。2010年12月17日17時から24時間にわたって取得した流通ファイルのキー情報612億1319万件からランダムに抽出した2万件について、ファイル名を目視で確認したもの。

 これによると、多くを占めているのは「アダルト」(30.20%)、「アニメ」(18.40%)、「同人」(10.57%)、「映像」(9.62%)、「コミック」(9.11%)といったもので、プログラムの著作物に分類されるのは「アプリ」が1.04%、「ゲーム」が1.28%にとどまっている。

 アプリについては、アプリケーションソフトの名称である207ファイルを目視で確認。上記比率から、調査時にはアプリが6万3356ファイル流通しており、このうち許諾なく流通していると想定されるファイルが4万8664ファイルと推計している。

 また、同じくゲームについては、ソフトの名称である256ファイルを目視で確認したところ、3680タイトルが流通していることが判明。調査時におけるゲームプログラムの流通タイトル数を112万6324タイトル、ファイル数を7万8353ファイルと推計している。機種別の内訳では「ゲームボーイ系」(48.78%)と「DS系」(40.19%)が多かった。

 なお、ゲームをプログラムの著作物に含めている一方で、ゲームの内容によっては「映画の著作物」に該当すると考えられるものもある。これについては、現行でも「録画」ということで違法ダウンロードとして禁止されるとの見方を、ACCSでは以前、示していた。

 このほか違法ダウンロード規制の強化については、刑事罰を導入するための法改正を、RIAJや一般社団法人日本映画製作者連盟が求めている。特に日本映画製作者連盟においては、ダウンロード違法化を規定した30条1項3号だけでなく、30条1項1号、30条1項2号の行為についても刑事罰を設けるべきと主張している。

 また、日本映画製作者連盟のほか、一般社団法人日本映像ソフト協会は、ダウンロードに限らず、海賊版などの権利侵害物を、それと知りながら入手し、デジタル方式で録音・録画する行為も、私的使用のための複製から除外し、違法とすべきと主張している。

個別の権利制限規定は限界、第30条のトータルな見直しが必要か

 法制問題小委員会は、7月4日の第2回会合、7月7日の第3回会合と2回にわたって各団体からヒアリングを実施。上記の論点のほか、コピーコントロールなどの技術的保護手段を回避して行う私的複製行為について、バックアップ目的など一定の範囲内で認めること、あるいは「その使用する者が複製できる」とされている私的複製について、利用者の「手足」として業者が複製することを認めることなどについても肯定・否定の意見が出されており、詳しくは文化庁のサイトの法制問題小委員会のページに掲載されている意見書を参照可能だ。

 先週9月21日に開催した第4回会合では、これらヒアリングをもとに論点の整理を行った。権利制限規定についてそれぞれの立場からさまざまな意見が出されたわけだが、今回は第30条の趣旨に立ち返り、じっくり議論していく必要性があるという。権利制限だけでなく、支分権の問題も含め、「複製技術やビジネスモデルもふまえて議論を始めましょうということ。すぐに見直すというよりは、原点に立ち返るプロセスがようやく始まっているのではないか」とのスタンスが委員から示された。従来、緊急的な課題に対してその都度、権利制限規定を追加するなどして対処してきたが、今回挙がった論点に対して個別に対処しても整合性がなくなるとしている。

 このほか2011年度の法制問題小委員会では、電子図書館の法制面での課題についても、大きなテーマとなっている。第4回会合では、「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」がまとめた「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」の概要が提出され、国会図書館が行う資料のデジタルアーカイブを地方の公共図書館などからアクセスできる環境を整備することや、同じく国会図書館の蔵書の全文テキスト検索サービスの必要性などが示された。


関連情報


(永沢 茂)

2011/9/26 19:00