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NTT、犬の散歩で引っ張られる感じを発生させる装置「ぶるなび」が劇的小型化

 日本電信電話株式会社(NTT)のコミュニケーション科学基礎研究所は、NTT京阪奈ビル(京都府相楽郡精華町)で6月5日・6日に開催する一般公開イベント「オープンハウス2014」において、手を引っ張られているような錯覚を発生させる装置「ぶるなび」の3代目となる「ぶるなび3」を展示する。

 従来機と比べて90%軽い親指サイズの装置で、引っ張る感覚の発生に成功。これにより将来的には、画面の地図を見なくとも“手を引っ張ってナビしてくれるスマートフォン”などへの応用も考えられるようになったとしている。

 ぶるなびは、装置に内蔵された重りを往復運動させた際の反動で、あたかも牽引力が発生しているように錯覚させる装置。ただし、単に往復運動させるのではぶるぶるしているだけになる。ぶるなびでは、往復運動の加速度を往路は速く、復路はゆっくりというように非対称にしているのがポイントだ。これにより、どこかに固定されているわけでもないのに、ぶるなびを持った手に対して一方向に引っ張られているような感覚が生まれる。

 このような原理のため、2007年発表の初代「ぶるなび1」では、相応の重りを内蔵する必要があり、装置の大きさは56×27×175mm、重さは250gというずっしりとしたものだった。その後、牽引感覚を起こす方向を平面のどの方向にも向けられる方式(2自由度)とした円形型の「ぶるなび2」を2011年に発表したが、これも直径126mm・厚さ55mm、重さが260gという大きなものだった。

 これに対して2014年発表のぶるなび3は劇的に小型化。ぶるなび1のような1自由度のタイプは大きさが18×18×37mm、重さが19g、ぶるなび2のような2自由度のタイプは直径40mm・厚さ21mm、重さ40gとなっている。どのような方法で人間の感覚に働きかければ引っ張られる錯覚をうまく生み出せるか、これまでの研究から効率のいい振動周波数などが判明してきたのだという。その結果、大きな重りがなくとも牽引感覚を発生させられるようになり、重りを往復させる駆動装置もスピーカーのような仕組みで小型化が可能になった。

 実は研究所内ではぶるなびの小型化は難しいとみられていたという。しかし、ぶるなび3のサイズになると、携帯端末と組み合わせた活用が現実味を帯びてくる。ARマーカーで位置を検出しながらぶるなび3で室内をナビゲーションする実験がすでに行われているほか、今回のオープンハウス2014では、バーチャル犬の散歩や魚釣りゲームへの利用シーンをデモで紹介する。画面上で逆の方向に行こうとする犬のリードを引っ張る(引っ張られる)感じや、魚を釣り上げる際の重みを体験できる。

(永沢 茂)