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「Googleに負けているとは思わない」、DeNAとZMPが「ロボットタクシー」を実現するための合弁会社

 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は29日、自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCar」シリーズや、センサーシステムの開発・販売、移動体メーカー向け自動運転技術の開発を行う株式会社ZMPと合弁で、世界初のドライバーレスタクシーである「ロボットタクシー」のための新会社を設立する。

(左から)DeNA執行役員新規事業推進室長の中島宏氏、ZMP代表取締役社長の谷口恒氏

 ロボットタクシーは、ZMPが研究開発を行っている自動運転技術を用いたドライバーレスのタクシーサービス。「レベル4」と呼ばれる、運転手不在の完全自動運転を目指している。ZMP代表取締役社長の谷口恒氏は、「従来のタクシーをITに置き換えるもの。ITで配車するUberなどが海外では人気だが、ロボットタクシーは次の世代のサービス」と述べた。また、既存の自動運転技術は車を購入した人向けの支援機能だが、ロボットタクシーは運転できない人に移動の自由を提供するものだとしている。

 ZMPでは2008年から自動運転技術の研究開発を行っており、自動車メーカーや大学などに研究開発用プラットフォームを提供している。すでに愛知県名古屋市の守山で公道実験を行っており、ドライバーが運転席に座って万が一の際に備えつつ手足を使わず走行する「レベル3」の状態で、時速60kmで2kmの区間を走行している。

 DeNA執行役員新規事業推進室長の中島宏氏は、「自動運転技術の競争からユーザー体験領域の競争に移る。エンタメの要素などが入ればDeNAの強みが出てくる。ユーザーへのサービス提供であればGoogleに負けているとは思わない」と、ロボットタクシーに自信を見せた。「自動送迎ビジネスだけでない、エンタメ、観光、住空間、物流、ヘルスケアサービスなど広がりのある事業」だとしている。

 また、「自動運転の技術が現実のものとなると、レンタカー、自家用車、タクシー、貨物車の概念が融合する。呼んだら来る車はマイカーなのか、レンタカーなのか、タクシーなのか分からない」と、ロボットタクシーによって車の概念が変わると述べた。ビジネスモデルはまだ決めておらず、固定するつもりもないという。海外展開やさまざまなパートナーとの提携も視野に入れており、国や地域の状況などを見ながら柔軟にビジネスモデルを組み立てる。

ロボットタクシーは、ミニバン車両をベースに展開する。高齢者でも乗り降りのしやすさを狙う
完全自動運転により、レンタカー、自家用車、タクシー、貨物車の概念が融合するとしている
中島氏は、今後は自動運転技術の競争からユーザー体験領域の競争に移るとしており、ユーザーに提供するサービスならGoogleに負けているとは思わないとしている
ビジネスモデルは国や地域など状況に応じて柔軟に変化させるという

東京オリンピックの2020年までにロボットタクシーを実用化したい

 具体的なサービスのスケジュールについては、実験地区での自動運転技術の実績を積み上げた上で、特別区域で限定的にサービスを実施する予定だという。実運用に向けたサービスレベルの向上が図れたところで、展開可能な地域から正式なサービスとして運用する。2020年の東京オリンピックまでにはサービス開始したいとしているが、後述するようなレベル4に関する法令上の問題もあり、完全無人による自動運転にはこだわらず、柔軟に対応するとしている。

 また、社会受容性も重要だとしており、安全性や法整備が整ったとしても、一般ユーザーが「怖い」といった受け入れがたい状況だと普及は難しいと指摘。そのため、安心安全で楽しいサービスであると一般ユーザーに認知してもらう必要があるとしている。なお、自動運転車が起こした事故の責任の所在については、法整備されていない段階だとして明確な答えは避けつつ、一般販売と異なりサービスモデルとして展開するため、責任分担を「相手」「ロボットタクシー」に整理できるとしている。

 なお、莫大な保険料を支払って自動運転実験を行っているGoogleと異なり、日本ではレベル3までであれば既存の保険適用内で、かつ車検が通る程度の改造であれば自動運転の実験を認めているという。各自治体の責任のもとで実験を行う必要があるため、自治体と警察の両方の協力が必要になるが、日本は自動運転技術の実験に対して“ゆるい国”だと説明。ただし、ジュネーヴ交通条約および道路交通法第70条において運転手不在での車の走行を認めておらず、レベル4の公道実験は行えない。国際条約の修正が必要なため、行政だけで解決できる問題ではないが、世界的に自動運転技術の盛り上がりが見えるほか、内閣府の近未来技術実証特区検討会において、2020年代後半にレベル4を目指すという記述もあり、レベル4の実現は不可能ではないとしている。

サービス開始までの想定スケジュール
自動運転車が起こした事故の責任所在についてはサービスとして提供することで明確に区分できるとしている

 DeNAが自動車産業に進出する理由について、中島氏は「非常に大きい規模を誇る産業。自動車販売やタクシー、整備、保険などトータルで50兆円以上。インターネット企業のDeNAにとっては魅力的」と説明。また、GoogleやAppleがインフォテインメント産業に参入を強めていることや、Uberなど自動車産業に立脚しながら単独で時価総額数兆円に成長する企業が出現していること、とある自動車メーカーの幹部が語った「巨大な自動車産業が、遅れてきたIT革命にさらされている」という言葉を紹介。自動車産業にITを基軸とした変革があり、DeNAにとってビジネスチャンスと判断したとしている。

中島氏は、自動車産業の付加価値が、ハードウェアからソフトウェアに移行すると指摘。携帯電話の歴史になぞらえ、自動車産業について「iモード前夜あたり」と述べた
1960年代のモータリゼーションを例に挙げ、自動車産業だけでなく不動産やハウスメーカー、物流といった周辺産業も深くかかわってくるという
DeNAが得意とする協業やM&Aによる事業立ち上げ、インターネット企業としてのサービス創出、ネットワーク処理能力を事業に活かす
DeNAでは夏までにオートモーティブ事業として4つの事業を展開するという

(山川 晶之)