自炊派ユーザーに人気~ソニーの電子書籍端末「Reader」発売


 ソニーは12月10日、電子書籍端末「Reader」を発売した。全国量販店や紀伊國屋の本店に展示コーナーを設けているが、発売初日は新宿の紀伊國屋本店で取材を受けたため、テレビクルーや新聞・雑誌の取材陣で一時は正面入り口がふさがってしまう盛況となった。

 ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門 メディア・バッテリー&AVペリフェラルマーケティング部 統括部長の磯村英男氏は、発売前の予約状況などの手応えは「期待通り」、予約数は「予想以上のスタート」と言う。

 

自炊派にはカードスロット搭載の「Touch Edition」が人気

ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門 メディア・バッテリー&AVペリフェラルマーケティング部 統括部長の磯村英男氏。発売初日の紀伊國屋書店本店(新宿店)店頭で

 Readerは5インチディスプレイ搭載の「Pocket Edition」(PRS-350)と6インチディスプレイ搭載で音楽再生に対応した「Touch Edition」(PRS-650)の2機種をラインナップしているが、予約段階では6インチディスプレイの「Touch Edition」が人気だ。

 液晶の大きい「Touch Edition」が人気となっている理由として磯村氏は、「最新のものをいち早く購入されるお客様は多機能・高機能なものを購入されるお客様が多いという傾向がまずあるのではないか」とコメント。また、ソニーではあまり想定していなかったが、6インチディスプレイのTouch Editionは、メモリースティック PRO デュオとSDメモリーカードのスロットがあるため、いわゆる“自炊派”ユーザーに受けているようだという。

 「自炊派からは、PDF形式のコンテンツがメモリーカードで読める手軽さから、自炊した電子書籍を読むのに最適と評価いただいているようだ」(磯村氏)という。


6年前ともっとも違うのは「コンテンツの豊富さ」

 電子書籍リーダー端末というアプローチの製品は実は新しいものではない。2004年にソニーはやはり電子ペーパーを採用した「LIBRIe」(リブリエ)を発売、松下電器(現パナソニック)も2004年に電子書籍リーダー端末としてモノクロの「ΣBook」、2006年にカラーの「Words Gear」を発売したが、2008年に事実上撤退している。

 両社とも携帯電話への電子書籍配信は継続し、以後電子書籍ビジネスのリーダー端末は携帯電話が主役となっていた。2004年当時との違いについて磯村氏は、「今回はスタート時に2万点のタイトルが用意できた。6年前とは比較できないほどのコンテンツが用意できた。これが最大の違い」だとコメント。電子書籍元年とも言われ、出版業界においても“電子書籍への対応は必然”という意識が広まった現在、コンテンツ提供側の理解と協力を得られたことが大きいとの認識を示した。

光学タッチスクリーン装備により、画面をタッチして指でページをめくったり、タッチペンでメモを書いたりが可能メモリースティック PRO デュオとSDメモリーカードのスロット搭載で自炊派に人気の「Touch Edition」

 

「ハードとソフト(コンテンツ)の両輪で、日本に電子書籍を広めていきたい」

 今回のReaderの特徴については、「電子ペーパー採用により、紙の本と限りなく近い感覚で読めることが最大の特長で、液晶のように発光しないため読んでいて目が疲れない。また発光しないため電力消費が小さく、1回充電すると2週間くらいはもつ」。(磯村氏)

 Amazon Kindleは日本国内のamazon.co.jpでは販売していないが、米国ではソニーの電子書籍端末とAmazon Kindleはシェアを競っている。Kindleに比べた優位点について磯村氏は、光学式タッチスクリーン装備により、指やタッチペンによるタッチ操作でページ送りやメモの記入ができる点を上げ、ボタン操作のみのKindleに比べより自然なインターフェイスで読書ができるとした。
 
 タイトルはスタート時点で2万点を用意。問題なく読めることを検証して配信しているため、公開時点では一部検証待ちのタイトルもあるが、検証が済み次第順次配信するという。コンテンツについては今後も新しいタイトルを次々にリリースしていく予定で、「紙と同時に発売するタイトルも増やしていきたい」という。

 ソニーとしての電子書籍への取り組みについては、「ソニーはハードとソフトの両輪ということで何十年もやってきた。Readerでもそれはまったく同じことだと考えている」とコメント。今後「みなさまのご協力をいただきながら日本で電子書籍の文化を広めていきたい」と新市場への抱負を語った。

Readerは紀伊國屋正面入り口を入ったところに展示されているため、一時は取材陣で正面入り口がふさがる状態に自前の愛用Reader持参で取材に答える磯村英男氏

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(工藤 ひろえ)

2010/12/10 13:33