「違法音楽配信の根絶に大きな前進」JASRACなどが掲示板向けに新たな対策


 日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会(RIAJ)など音楽権利者団体・企業8者は4日、新たな違法音楽配信対策を推進すると発表した。違法音楽ファイルのアップロードが顕著な無料レンタル掲示板やISP(以下、事業者)に対して、違法音楽ファイルを特定するモジュール「Fluzo-S」の導入を共同で働きかける。

 モジュールは「著作権情報集中処理機構(CDC)」が開発したデータベース「Fluzo」を活用したもの。FluzoはJASRACをはじめとする複数の著作権管理団体の権利情報を集約しており、音楽配信事業者は各団体の管理楽曲情報に一括してアクセスできる。これにより、これまで負担だった権利処理業務のコストを抑えられる。

 Fluzo-Sを導入した事業者は、ウェブ画面で違法音楽ファイルの検索を行うと、Fluzoのデータベースと照合を実施。これにより、違法音楽ファイルかどうかを判断できる。違法と判明した場合は、事業者の利用規約に応じて該当ファイルを削除したり、アップローダーに警告を行ったりすることが可能となる。導入金額は月額5万円。

新対策のイメージ

 JASRACによれば、これまでの違法音楽配信対策は、権利者が違法音楽ファイルを個別に特定した上で、事業者に通知して削除を依頼する手続きが必要だった。このため、違法音楽ファイルがアップロードされてから削除するまでに多くの時間がかかり、事後的な対策とならざるを得なかったという。一方、Fluzo-Sを導入した事業者は、自らの判断で違法音楽ファイルかどうかを判断し、利用規約に基づいて削除を行えるのが特徴だ。

 この数年、携帯向け無料レンタル掲示板や特定のISPで違法音楽ファイルが配信され、警察は多数のアップローダーを摘発してきた。事業者側はアップロードされた違法音楽ファイルを速やかに削除していれば損害賠償責任の免責を得ることができるものの、一部の事業者は自社サービス上の違法行為の氾濫に危機感を募らせていると、JASRACは指摘する。Fluzo-Sについては権利者と事業者双方の負担を軽減するといい、違法音楽配信根絶に向けた大きな前進だとしている。

 この対策を発表したのはJASRACとRIAJのほかに、実演家著作隣接権センター(CPRA)、日本音楽事業者協会(JAME)、日本音楽出版社協会(MPA)、日本音楽制作者連盟(FMPJ)、株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)、株式会社イーライセンス。


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(増田 覚)

2012/6/5 06:00