レビュー

来年の確定申告に備えよう! クラウド対応青色申告ソフトを徹底比較

独立志向のサラリーマンと個人事業主のための確定申告短期連載・番外編

 個人事業主の皆さん、確定申告お疲れさまでした。大人の事情と筆者の都合で微妙な時期に掲載となった確定申告短期連載の最後は、クラウドに対応した青色申告ソフト(サービス)の比較をお届けしたい。

 個人的な印象だが、クラウド対応の青色申告ソフトが最も進化するのは確定申告の時期だと思う。各社、確定申告前からアップデートをし、ユーザーのアクセスも急増し、期間中も機能追加や不具合の修正などが行われ、完成度がグッと上がった状態だと思われる。

 今回比較するのは「やよいの青色申告オンライン」「やよいの青色申告15」「MFクラウド確定申告」「freee」の4製品だ。今年独立を考えている人、パッケージソフトからクラウドへの移行を考えている人、自分に最適なクラウド対応青色申告ソフトを探している人は参考にしていただきたい。

 「やよいの青色申告オンライン」「やよいの青色申告15」「MFクラウド確定申告」に関してはレビュー記事を掲載済みなので、細かな操作はそれらの記事を参照していただきたい。

初年度無料、話題のクラウドサービス「やよいの青色申告オンライン」を使ってみる
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20141226_681659.html
クラウドと連動した最強の申告ソフト? 「やよいの青色申告15」レビュー
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20150219_688544.html
個人事業主の確定申告、「MFクラウド確定申告」でどこまで楽できる?
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20150223_687515.html

 筆者が確定申告の時期に税金に関する原稿を書き始めたのは2008年だった。自分に最適な青色申告ソフトを探すため、知り合いの編集長に相談し、青色申告ソフトの比較記事を書くことにした。

 約1万円の青色申告ソフトを自腹で買いそろえたくなかったというのが本音で、編集長に各メーカーと交渉していただき、当時シェア1〜3位の製品を用意して比較する記事を書いた。その後も税金に関する記事を書き続け、多くの製品をインストールから申告書作成まで使う機会を得た。

 今回の記事は、今年独立を予定していて2016年に初めて確定申告する人や、白色申告から青色申告に切り替えた人。あるいは2015年に初めて確定申告をしたが、筆者のように「自分に最適な青色申告ソフトはどれ」と感じた人など、青色申告ソフトに不慣れな人を対象に比較を行う。青色申告ソフトの選び方で悩んでいる人は、自分に最適なソフトを見つける際の参考にしていただきたい。

自動取り込み、自動仕訳を比較する

 本来は初期設定の比較からスタートするべきかと思うが、初期設定はハッキリ言って地味。クラウド対応の青色申告ソフトで最も気になるのは銀行口座やクレジットカードのデータを自動的に取り込み、自動的に仕訳するアグリゲーション機能だろう。

 ということで、まずはデータ取り込みから比較していきたい。

 3社・4製品のうち、MFクラウドとfreeeは独自のアグリゲーション機能を搭載し、各口座のデータを直接取り込む形式だ。やよいの青色申告オンラインとやよいの青色申告15は、MoneyLook、Zaim、Moneytreeの3社の外部サービスを利用して口座データを取り込む、アウトソーシングの形式となっている。

 筆者が使用している口座は以下のとおり。多くの口座がサラリーマン時代から使用しているものでアグリゲーションサービスへの対応など考えずに開設したものだ。起業時に開設した三菱東京UFJ銀行の法人・個人事業主口座は、インターネットバンキングを使用していない。その理由は年間2万円を超えるコストが掛かること。現状は月末に数社から振り込みがあるだけで頻繁な入出金はなく、これまでは特に不都合はなかった。

筆者の口座環境
口座 概要
三菱東京UFJ銀行(法人・個人事業主口座) インターネットバンキング非使用
三菱東京UFJ銀行(個人口座) インターネットバンキング対応
ジャパンネット銀行 インターネットバンキング対応(事業使用なし)
MUFG(UFJ)カード 主に個人使用、ETCカードあり
ビュー・スイカカード 主に事業使用、Suicaは交通費専用で使用
WAON(電子マネー) ヤマト運輸専用で使用

使用する口座とクラウド対応青色申告ソフトの相性

 データの取り込みから記帳までのステップは、口座の登録、データの取り込み、取り込んだデータの仕訳の3ステップだ。ここで重要なのは自分が使用する口座の相性だ。大前提は、自分が使用する銀行口座やクレジットカードが、インターネットバンキングやWEBサービスを行っていること。その次は、青色申告ソフトがその口座に対応していることだ。仮にクラウド対応青色申告ソフトが1000社の銀行やクレジットカード会社に対応していても、自分が使用する銀行やクレジットカード会社がそれに含まれていなければ、取引データを自動取り込みすることはできない。

 筆者の使用する口座環境で差が出たのはWAONだ。MFクラウドと弥生(Zaim、Moneytree)はWAONの取り込みができたが、freeeと弥生(MoneyLook)はWAONに対応していなかった。ただしfreeeもnanacoには対応しているので、それほど大きな問題ではないだろう。

弥生(Moneytree)はWAONに対応
MFクラウドもWAONに対応
freeeはWAONに対応していない。nanacoやモバイルSuicaには対応している
上からZaim、Moneytree、MFクラウド。ヤマトのメール便の履歴を取り込める

 カード系以外ではECサイトの取り込みも差が見られた。Amazonの購入履歴にはMFクラウドとfreeeが対応している。Amazonから直接データを取り込めると、購入品の明細がデータとして残るので仕訳を行う際に役立つ。Amaozonでクレジットカード決済をすれば、クレジットカードの明細にAmazonで買ったことと、日付・金額の履歴は残すことができるが、購入したものが本なのかPCなのかといった明細は記録されない。

上がMFクラウド、下がZaim(弥生)。MFクラウドは明細まで取り込むことができるが、ZaimではAmazonで買ったことしかわからない

 これらの対応の差は、あくまで筆者の口座環境と執筆時点(2015/3/17)のものだ。銀行やクレジットカード会社が異なれば違う結果となるし、数週間後、数カ月後には対応状況が変わっていることもあるだろう。ご自身の口座環境との相性をそれぞれ確認していただきたい。

 上記以外にも、MFクラウドは電子証明書によるログインが必要な法人口座から、直接データを取り込む機能に対応した。従来、メガバンクの法人口座とクラウド対応青色申告ソフトは相性が悪いと言われていたので、これは画期的な機能だと思われる。スタートは三菱東京UFJ銀行の法人口座「BizSTATION」への対応で、今後、電子証明書ログインが必要なそのほかの銀行にも対応を拡大するとのこと。該当する口座の利用頻度が高い場合は対応状況をよく確認したい。

クラウド型会計・確定申告ソフト「MFクラウド」、電子証明書ログインが必要な法人銀行口座に対応
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150217_688696.html

過去データの取り込み可能期間は銀行、クレジット側に依存

 初回のデータ取り込みで気になるのは、過去の取引データをどこまでさかのぼって取得できるかだ。これは銀行やクレジットカード会社に依存し、クラウド対応青色申告ソフトによる差はほとんどない。

 筆者が主に使用している三菱東京UFJ銀行の個人口座は、前月の1日までしかデータが取得できないので、3月に取得できるのは2月1日以降のデータとなる。ほとんど使用していないジャパンネット銀行は、過去5年の取引データを公開している。この点ではジャパンネット銀行の方がクラウドとの相性はよい。ただし、取り込み可能期間は初回の取り込みでは重要だが、継続的に取り込めば、さして問題にはならない。

 クレジットカードの新しい取引データの取り込み期間は、クラウド対応青色申告ソフトの仕様により差がある。クレジットカードは締め日と引き落とし日が設定されていて、筆者が主に使用しているビューカードは「月末締めの翌々月4日引き落とし」が基本となっている。

 3月上旬にビューカードのウェブサイトを見ると、1月末締め3月4日引き落とし分は「確定済み」、2月末締め4月引き落とし分は「未確定」と分類されている。freeeは確定済みのデータを取得するので、1月31日が最新の取引データとなっているが、MFクラウドと弥生(Moneytree)は未確定のデータも取得するので、3月6日(5月4日引き落とし予定)まで取引データを取得している。筆者の環境で常に最新でデータを取得したい場合は、MFクラウドと弥生(Moneytree)が有利だ。

上はMFクラウド、下は弥生(Moneytree)。ビューカードの新しい取引データが取得できたのはこの2社

自動仕訳の精度を比較

 クラウド対応青色申告ソフトの最大の魅力は、取引データの自動取り込みと自動仕訳だ。各社の実力を比較してみよう。自動取り込みと自動仕訳の比較に際し、学習効果の影響を避けるため、やよいの青色申告オンライン、MFクラウド、freeeは新規でユーザー登録をし、やよいの青色申告15は新規事業所登録を行った。データ取得は三菱東京UFJ銀行の前月1日まで取得という条件を考慮して、2月28日とした。

 ここでトラブルが発生。筆者の経費の主役であるビューカードが2月27日から3月3日までサーバーメンテナンスでアクセス不能となっていた。確定申告のこの時期に長期のサーバー停止はあり得ないだろう、といった感じだ。3日にサーバーは復活し、それまで過去半年だった閲覧期間が1年に延長された。

この時期に長期のサーバー停止、「うそ、あり得ないだろ」と目を疑った

 このように銀行やクレジットカード会社が仕様変更をすると、アグリゲーションサービスはそれに対応するまでデータ取得ができなくなる。各社の対応をときどきチェックしていたが、最初にデータ取得が再開したのはMoneytreeとZaim。翌日にMFクラウド、数日遅れてfreee、最後はMoneyLookと、サーバー復活後4日から1週間ほどですべて対応が行われた。サーバー停止から起算すると1週間から10日、データ取得ができなかったことになる。

 ここ数カ月でMUFGカードは2回、ビューカード、Amazonもデータ取得ができない期間があった。こうした原稿が書けなくなるのは筆者特有の問題だが、確定申告の提出期限ギリギリでデータ取得ができないことに気付き、記帳作業がすべて手入力になったら悲劇だ。「クラウドだから楽勝」と安易に考えず、データ取得だけは早めに行っておきたい。

 さて、弥生のクラウド環境の説明をしておこう。やよいの青色申告オンラインとやよいの青色申告15は外部サービスであるMoneytree、Zaim、MoneyLookから取引データを取得する。800件ほど取得したデータをザッと確認すると、やよいの青色申告オンラインとやよいの青色申告15の自動仕訳の結果は同じとなった。

 ただし、Moneytreeから取得したデータ、Zaimから取得したデータ、MoneyLookから取得したデータでは、ときどき異なる自動仕訳がされていた。特にZaimは取得時に「トウキヨウデンリヨク→東京電力」と表記変更をするため、そのデータを受け取った弥生側で判断が分かれたと思われる。

iTunesストアは表記も仕訳も異なった(上がZaim、下がMoneytree)
水道光熱費は表記は異なったが仕訳は同じ。Zaimは見やすいがMoneytreeの方が情報量は多い

 筆者の環境ではMoneytreeが最も相性がよさそうなので、弥生(Moneytree、以下は省略)、MFクラウド、freeeで比較をしてみよう。まずは社会保険、生命保険、自動車保険、公共料金、通信費の自動仕訳を見てみよう。弥生、MFクラウド、freeeの3製品が同じ仕訳をしたのは国民年金(事業主貸)、トウキヨウデンリヨク、トウキヨウガス、中部電力、東邦ガス(電力、ガスは水道光熱費)、NTTヒガシニホン、KDDI料金(ネット回線は通信費)。

 コクホ ナゴヤシ(国民健康保険 名古屋市)は弥生だけ事業主貸と仕訳したが、MFクラウド、freeeは仕訳なしとなった。生命保険関係は弥生は事業主貸、MFクラウドとfreeeは保険料と仕訳。これは判断が分かれるところで、個人事業主が個人に掛けていれば事業主貸、会社が掛けている保険なら保険料が正解だろう。freeeがダイイチセイメイホケンを消耗品費と仕訳したのは明らかに間違いだ。

 自動車保険は車両費、保険料と分かれたが筆者の場合は車両費が正解。弥生はエスビーアイソンガイホケンをなぜか旅費交通費と仕訳した。電気、ガスはすべて水道光熱費となったが、カワサキシスイドウリヨウキンはfreeeだけ仕入高と仕訳された。

上から弥生、MFクラウド、freee。freeeだけ水道料金を仕入高と仕訳した

 レンタルサーバーとドメインで使用しているさくらインターネットは、筆者は通信費と考えているが、旅費交通費、雑費、仕入高とバラバラな仕訳結果となった。一番近いのはMFクラウドの雑費だろうか。マネーフォワード(MFクラウドの使用料)も筆者は通信費と考えているので弥生が正解、MFクラウドは仕訳なし、freeeは新聞図書費と仕訳した。

 以下、自動仕訳の結果に差があった項目だけ表にしたので、参考にしていただきたい。項目名は取り込みしたままの表記を張り付けている。表の「−」は仕訳がされなかったことを示す。同じく表の「×」はデータ取り込みができなかったことを示す。

【自動仕訳の精度比較】 社会保険、生命保険、自動車保険、通信費
項目 弥生(Moneytree) MFクラウド freee
社会保険
コクホ ナゴヤシ 事業主貸
生命保険
ダイイチセイメイホケン 事業主貸 保険料 消耗品費
ソニーセイメイホケン 事業主貸 保険料 保険料
アフラツクAPS 事業主貸 保険料 保険料
自動車保険
ミツイダイレクトソンガイホケン 車両費 車両費 保険料
エスビーアイソンガイホケン 旅費交通費 保険料 保険料
公共料金
カワサキシスイドウリヨウキン 水道光熱費 水道光熱費 仕入高
通信費
さくらインターネット 旅費交通費 雑費 仕入高
マネーフォワード 通信費 新聞図書費

 次はホームセンターなどのリアルショッピング系とネット通販系を比較しよう。ショッピング系で3製品が消耗品費と仕訳したのはホームセンターコーナンとニトリ。それ以外は判断が分かれた。MFクラウドはすべて備品・消耗品費と仕訳したが、弥生はドン キホーテだけなぜか旅費交通費と仕訳した。freeeはカーマホームセンターを地代家賃、ドンキホーテを外注費、イオンとカインズは仕入高と仕訳した。

 ネット通販で3製品が消耗品費と仕訳したのはNTT-Xストアのみ。MFクラウドがAMAZON.CO.JPを新聞図書費と仕訳したのは本を買ったと判断、iTunesストアを事業主貸と仕訳したのは「個人で楽曲を買った」と判断したと思われ、間違いとは言えない。弥生はイートレンド(Lenovo PCを購入)をなぜか旅費交通費と仕訳した。

 freeeはヨドバシ、ビックカメラ、ツクモを仕入高と仕訳した。最初は「何だそれ」と思ったが、PCや周辺機器、PCパーツを仕入れ、システム構築して納品すれば仕入高という仕訳もあり得る。しかし筆者の場合は消耗品費が正解なので、これらの仕訳はすべて修正登録しなければならない。

 MFクラウドとfreeeはAmazonの購入明細の取得が可能だ。freeeは明細は取得するもいずれも自動仕訳はされなかった。MFクラウドはWestern DigitalのHDD(Red)とサードパーティ製のライトニングケーブルは備品・消耗品費(=経費)、USB DAコンバータとアルバムは事業主貸(私物)と判断した。どのようなアルゴリズムで判断しているかは不明だが、その鋭さに感心する。

【自動仕訳の精度比較】 ホームセンター、ネット通販、AMAZON
項目 弥生(Moneytree) MFクラウド freee
ホームセンター系
カーマホームセンター 消耗品費 備品・消耗品費 地代家賃
ビバホーム 消耗品費 備品・消耗品費
カインズ ホーム 消耗品費 備品・消耗品費 仕入高
ドン キホーテ 旅費交通費 備品・消耗品費 外注費
イオン ジヤスコホカ 消耗品費 備品・消耗品費 仕入高
ネット通販系
ヨドバシカメラ(ツウハン) 消耗品費 備品・消耗品費 仕入高
ビツクカメラドツトコム 消耗品費 備品・消耗品費 仕入高
ツクモネツトシヨツプ エムブイ 消耗品費 備品・消耗品費 仕入高
イートレンド 旅費交通費 備品・消耗品費 通信費
AMAZON.CO.JP 消耗品費 新聞図書費
アツプル アイチユーンズ ストア 雑費 事業主貸 通信費
AMAZON
WD 内蔵HDD Red 3TB 3.5inch SATA3.0 ×取得不可 備品・消耗品費
【HanyeTech】 iPhone5 USB ライトニング ケーブル ×取得不可 備品・消耗品費
KORG 1bit USB DAコンバータ DS-DAC-10-SV ×取得不可 事業主貸
Ballada (AL+Blu-ray Disc) ×取得不可 事業主貸

 最後は交通費系、飲食系、そのほかの比較だ。ガソリンスタンドはENEOS、キグナスセキユは3製品とも車両費と仕訳された。宿泊系もホテルインサイド、ホテルルートインは3製品とも旅費交通費と仕訳された。順番に詳細を見ていこう。

 シヨウワシエルセキユ(昭和シェル)はメジャーなので弥生、MFクラウドは順当に車両費と仕訳した。freeeはなぜか仕入高となった。メジャーでないガソリンスタンドは、MFクラウドはタムラシヨウジ ムカエマチSS、セルフヨツカイチカワラダともSSやセルフという文字からガソリンスタンドと判断し車両費と仕訳された。弥生はSSには反応して車両費となったが、セルフには反応せず仕訳されなかった。freeeはどちらも仕入高となった。

 スーパーホテルロハス、トウヨコインは弥生、MFクラウドは順当に旅費交通費と仕訳されたがfreeeはなぜか仕入高、会議費となった。アナ(全日空)、ニホンコウクウ(日本航空)は、MFクラウドはどちらも旅費交通費と仕訳できたが、弥生はニホンコウクウが仕訳なし、freeeはアナを仕入高とした。

 レンタカーを旅費交通費と仕訳したのは弥生だけ。その弥生もオリツクスレンタカーは事業主貸と仕訳した。MFクラウドは車両運搬具、freeeは仕入高となった。ETC(高速道路)は弥生、MFクラウドはすべて旅費交通費と正しく仕訳された。freeeはETCの仕訳がおおむね旅費交通費となったが、一部は外注費、消耗品費、雑費、交際費とバラバラに仕訳された。おそらくETCの文字ではなく利用区間などの文字を見て判断したと思われる。

freeeはETCの仕訳がバラバラとなった

 飲み屋系の自動仕訳は、3製品とも苦手のようだ。チェーン店でない飲み屋は全滅。表のようにトウホウケンブンロク、ヤマウチノウジヨウ、ハナノマイ、ツキノウタゲなどそこそこ知られたチェーン店系も接待交際費と仕訳されなかった。

 その中でMFクラウドは名古屋雲龍ビルの高級焼き肉店「コギチャン」を接待交際費と仕訳した。もしかすると、筆者には縁がないミシュランガイドに載るような店なら接待交際費と仕訳されるのかもしれない。

 NHK、スカパー!、WOWOWを弥生は通信費、MFクラウドは雑費と仕訳した。freeeはWOWOWだけ新聞図書費と仕訳した。電子マネーのWAONでデータ取得したヤマト運輸は弥生、MFクラウドは仕訳なし。freeeはWAONに対応していないのでデータなし。なお、Zaim(弥生)だけが荷造運賃と正しく仕訳できた。弥生はデータ取得先を組み合わせることができるので、銀行はMoneyLook、クレジットカードはMoneytree、電子マネーはZaimといった感じで、相性のよい外部サービスを選択することが可能だ。

Zaim(弥生)だけヤマト運輸を荷造運賃と仕訳した
【自動仕訳の精度比較】 交通費、飲食、その他
項目 弥生(Moneytree) MFクラウド freee
交通費系
シヨウワシエルセキユ  車両費 車両費 仕入高
タムラシヨウジ ムカエマチSS 車両費 車両費 仕入高
セルフヨツカイチカワラダ 車両費 仕入高
スーパーホテル ロハスクマモト 旅費交通費 旅費交通費 仕入高
トウヨコイン アイオイ 旅費交通費 旅費交通費 会議費
アナ インターネツトチケツト 旅費交通費 旅費交通費 仕入高
ニホンコウクウ コクナイセンチケツト 旅費交通費 旅費交通費
バジエツトレンタカーヒメジ 旅費交通費 車両運搬具 仕入高
オリツクスレンタカークマモトエキ 事業主貸 車両運搬具 仕入高
ETC 旅費交通費 旅費交通費 旅費交通費/外注費/消耗品費/雑費/交際費
飲食系
サツポロライオン 接待交際費 接待交際費 旅費交通費
トウホウケンブンロクシンジユクオムニ 水道光熱費
センネンノウタゲ ゼロイチゴ シンジユクニ 接待交際費 仕入高
ヤマウチノウジヨウ086ユリガオカミナミグチ 旅費交通費 仕入高
ハナノマイ ニシシンジユクテン 仕入高
ツキノウタゲ ゼロイチサン カナヤマミナミグ 消耗品費 仕入高
ヤキニクコギチヤン 接待交際費 ×取得期間外
その他
ワウワウ シチヨウリヨウ 通信費 雑費 新聞図書費
NHK放送受信料 通信費 雑費 通信費
スカパー視聴料等 通信費 雑費 通信費
ヤマト運輸 ×取得不可

 筆者の口座環境と筆者の生活環境(使用するお店など)で比較すると、自動仕訳の精度はMFクラウドが最も高く、わずかの差で弥生、freeeは残念な結果となった。あえて点数を付けると10点満点中、MFクラウドは9点、弥生は8点、freeeは5点といったところだろうか。

 ただし、クラウド対応青色申告ソフトは学習機能を持っている。常時使用する取引は学習をさせれば正しく仕訳されるはずだ。行動パターンが一定の人は、学習機能を使用すれば自動仕訳の精度はそれほど問題にならない。使用するネット通販もガソリンスタンドも飲食店もバラバラという人は、自動仕訳の精度が高いクラウド対応青色申告ソフトを選択した方が修正の手間はなくなるだろう。

初期設定

 青色申告ソフトを初めて使用する人は「何をしたらいいか」が分からない。

 やよいの青色申告オンラインはトップ画面に操作の流れが表示される。口座を登録、科目設定、残高設定と画面に沿って進めば初期設定は完了する。

やよいの青色申告オンラインは画面に流れが表示される

 やよいの青色申告15は初期設定、導入設定をウィザード形式で行うことができる。得意先の登録も、ウィザードに沿って入力すれば売掛金の補助勘定科目に得意先が自動的に設定される。

やよいの青色申告15はウィザード形式で初期設定を行う
得意先を登録すると売掛金の補助科目が設定される

 初期設定のハードルがやや高めなのがMFクラウドだ。青色申告ソフトの中では「何をしたらいいか」が分からないので、使い方ガイドや操作ガイドのPDFを見て全体の流れを理解する必要がある。とはいえ、初期設定は最初だけなので、ガイドや掲載済みのレビュー記事などを参考にすれば特段難しいものではない。

MFクラウドの初期設定は、ガイドを見ながら自力で行おう

 今年、操作性を大幅に向上させたのはfreeeだ。画面左下に会計freee確定申告ナビという機能が搭載され、全体の流れを理解しやすくなった。基本情報の入力、口座登録、現金取引の入力、固定資産、按分、申告書作成と作業の流れが表示され、関連ページへリンクが張られているので「何をしたらいいか」が理解しやすい。

freeeはナビ機能が搭載され操作の流れが格段に分かりやすくなった

経費の手入力

 クラウド対応青色申告ソフトの魅力は取引データの自動取り込み、自動仕訳なのだが、すべての取引を自動化するのは難しい。現金で支払いをした取引などは手入力を行わなければならない。

 ここでは、切手を現金で購入した場合の入力方法を比較してみよう。

 やよいの青色申告オンラインは「よく使う取引」をクリックすると取引例が表示される。その中から「切手・はがき・封筒の購入」を選択。取引手段は現金を選択し金額を入力する。

「よく使う取引」の中から「切手・はがき・封筒の購入」を選択
取引手段と金額を入力

 やよいの青色申告15は簡単取引入力を使用し、「現金取引」「経費支払」「切手代・はがき代を支払った」を選択。摘要、日付、金額を入力する。

簡単取引入力で「現金取引」「経費支払」「切手代・はがき代を支払った」を選択し摘要、日付、金額を入力

 このように弥生は、切手という具体的な名称を選択することで作業ができる。記帳された内容は勘定科目が通信費となる。取引の勘定科目を知らなくても複合仕訳の記帳を行うことができる。

 MFクラウドは支出の現金にチェックを入れ、取引の内容のプルダウンメニューから通信費を選択する。金額、日付、摘要などを入力すれば完了だ。

現金にチェックを入れ、取引の内容のプルダウンメニューから通信費を選択
金額、日付、摘要などを入力

 freeeは勘定科目のプルダウンメニューから「設備関連の支払い」「通信費」と選択する。通信費には電話代、ネット回線代が含まれるので「設備関連の支払い」にくくられていて、切手から設備関連を想像できないとやや探しにくい印象だ。勘定科目が選択できたら、金額を入力、品目・部門・メモタグに切手代を登録する。

勘定科目のプルダウンメニューから「設備関連の支払い」「通信費」と選択
金額と切手代を入力

 MFクラウドとfreeeは、切手の勘定科目が通信費であることを知らないと記帳が難しい。簿記の知識や仕訳の経験がある人には難しくはないが、初めて青色申告ソフトを使う人には、弥生の「よく使う取引」「簡単取引入力」は大いに役立つだろう。

固定資産の登録、家事按分

 取引データの自動取り込みと手入力が完了したら、決算に向けて、固定資産の登録と減価償却の設定、家事按分となる。やよいの青色申告オンライン、やよいの青色申告15、MFクラウド、freeeとも同じ明細を固定資産として登録し、定額法と即時償却で減価償却を行ったが、特に操作性に差は感じられなかった。

 同様に水道光熱費の電気、ガス、水道をそれぞれの比率で家事按分をしてみたが、これも4製品の操作性に差は感じられなかった。

申告書作成

 最後の確定申告書作成は、計算が必要な生命保険料控除と配偶者控除、扶養控除の入力で比較してみよう。

 生命保険料控除は旧制度と新制度が混在し、上限額が異なったりして複雑化した。保険会社から送られてきた証明書に書かれた金額から、自動計算されることが望ましい。配偶者控除、配偶者特別控除は奥さん(配偶者)の所得により控除額が異なる。配偶者控除が38万円ということを知っている人はそこそこいると思うが、段階的に控除額が変わる配偶者特別控除の額を記憶している人は少ないと思われる。扶養控除も、子どもの生年月日で特定扶養親族となると控除額が増える。このあたりも、誕生日を入力すると自動的に計算されるのなら、負担は減るだろう。

 やよいの青色申告オンラインは、新旧の保険を選択し金額を入力すると生命保険料控除の額が自動計算される。配偶者控除は奥さんの所得額を入力すると、配偶者控除か配偶者特別控除かを自動的に判断し控除額が自動計算された。扶養控除別画面で入力した子どもの誕生日から特定扶養親族と判断し、63万円の控除が自動計算された。

新旧の保険料を入力すると生命保険料控除の額が自動計算される
奥さんの所得額を入力すると、配偶者特別控除と自動的に判断し控除額が自動計算された

 やよいの青色申告15も、旧制度の保険、新制度の保険のそれぞれの控除額を自動計算し、生命保険料控除を正しく算出してくれた。配偶者控除も奥さんの所得額から配偶者控除と判断し、38万円の控除額が自動計算された。扶養控除も子どもの誕生日から特定扶養親族と判断し、63万円の控除が自動計算された。このあたりはパッケージソフトでは当たり前なので、弥生製品は安定感が感じられる。

旧制度の保険、新制度の保険のそれぞれの控除額を自動計算し生命保険料控除が算出される
配偶者控除は所得から、扶養控除は誕生日から自動的に算出される

 MFクラウドは生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除に計算機能はない。生命保険料控除は旧制度、新制度の計算方法を自分で調べて、控除額を自分で入力する。最高12万円の上限額を超えるとアラートが表示されるが、それ以外は間違っていてもそのままスルーで確定申告書に反映されてしまう。

旧生命保険は10万円を超えたので控除額は5万円。新制度の介護医療保険は8万円を超えたので控除額が4万円。合計9万円が正解だが、間違って入力した12万円がそのまま反映されてしまう

 配偶者控除も同様に控除額を自分で入力する必要がある。扶養控除も同様に誕生日から自分で判断する必要がある。こちらも間違った金額を入力するとそのまま確定申告書に反映されるので注意が必要だ。

配偶者控除の控除額は38万円だが、42万円と入力するとそのまま反映される。扶養控除も63万円が正解だが、70万円と入力するとそのままスルーとなった
生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除とも間違った金額がそのまま確定申告書に反映された

 freeeも、昨年はMFクラウドと同じように間違った金額がそのまま申告書に反映されていた。生命保険料控除は旧制度、新制度に保険料を入力すると、正しい控除額が自動計算されるようになった。一歩前進だ。

保険料を入力すると
自動計算され正しい控除額が自動的に記入された

 配偶者控除と扶養控除は、残念ながら自動計算されない。MFクラウドと同じく奥さんの所得や子どもの誕生日から自力で控除額を算出して入力しよう。

配偶者控除は計算機能、アラート機能がなく間違った金額がそのまま反映される
扶養控除も自分で正しい金額を入力する必要がある
生命保険料控除は正しい金額が反映されたが、配偶者控除、扶養控除は間違ったまま反映された

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 やよいの青色申告オンライン、やよいの青色申告15、MFクラウド、freeeの4製品の比較は以上だ。データの自動取り込み、自動仕訳はMFクラウドが1歩リード、手入力の初心者向けインターフェイスや申告書作成の自動計算などは、弥生の2製品に分がありそうだ。freeeは全体の流れを示すナビ機能を搭載したり、生命保険料控除の自動計算に対応するなど、初心者向けの機能が充実しつつあるので、今後の進化が期待できる。

 Macで使いたいとなれば、やよいの青色申告15以外の3製品。現在パッケージソフトを使用していてクラウドへの乗り換えを考えている人は、弥生の2製品とMFクラウドが違和感なく移行できそうだ。freeeは独特の世界観で作られているので、簿記の経験やほかの青色申告ソフトの経験があると最初は違和感を覚えるだろう。同じ理由で、将来業績を伸ばし会計事務所に依頼をすることを考えているなら、freee以外の3製品の方がハードルは低そうだ。

 先々独立を考えている人には、やよいの青色申告オンラインとMFクラウドをお勧めしたい。やよいの青色申告オンラインは現在無料キャンペーン中。MFクラウドは機能限定だが無料プランで口座データの取り込みを行うことができる。銀行口座やクレジットカードの過去取引の取得期間の制限がある人は、すぐに申し込めばより多くのデータを取り込むことができる。

 同じくやよいの青色申告15が使用しているMoneytree、Zaim、MoneyLookも無料なので、口座登録をしておけば過去データを残しておくことができる。もし今年後半でやよいの青色申告15(あるいは16)を購入しても、Moneytree、Zaim、MoneyLookにデータがあれば1年分の銀行取引を自動取り込み可能だ。

 確定申告を終わらせたばかりで来年のことなど考えたくない、というのは筆者も同じだが、来年の確定申告は今年の2015年の1月から12月分なので、すでに1/4を消化している。クラウド対応青色申告ソフトの魅力=アグリゲーション機能なので、データ取得だけは1日も早く対応を考えてほしい。

(奥川浩彦@ アイピーアール)