本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーにレポートします。ご期待ください。(編集部)
■CNドメイン大暴落?【8月8日】
中国では、CNドメインがドットコムバブルのように取得されている今日この頃、ドメイン取得代理業者同士の値下げ競争は激しくなる一方だ。現在の相場は、.cnドメイン1つが500~600円と言われているが、中には約250円(17元)を切る価格で販売する業者も。ちなみに、CNドメイン数は6月末時点で119万だ。
■広東省の企業がスパムメール配信で罰金7万円強【8月15日】
8月は、「中国初」がキーワードのインターネット事件がもう1件あった。世界的見地からスパムメールの発信元を見てみると、中国は米国に次いで多くの割合を占めているが、中国の中でもスパムメールの発信が多いと言われる広東省で、初めてのスパムメール配信による処罰が行なわれた。被告は広東省の香港と接する深セン市の1企業。
中国では、2006年3月末から中国信息(情報)産業部が「インターネット電子メールサービス管理方法」を施行。6月には中国信息(情報)産業部がスパムメール送信打撃に動いた。今回の顛末はそうした施策の一環と思われる。
気になる行政処罰は罰金7万円強(5000元)。ちなみに、スパムメールを原因とする行政処罰での罰金額の上限は45万円弱(3万元)だ。見せしめとなった感もある今回の処罰だが、この罰金額でスパムメール業者がたじろぐかどうか。今後のスパムメール発信数が減るかどうかに注目だ。
■中国初のブログの内容が名誉毀損であるとした訴訟の審議開始【8月18日】
北京の海淀法廷で審議が開始された。北京市海淀区というと、中国最大のR&Dセンターであり、また中国最大の電脳街のある「中関村」があるが、それゆえか、インターネットが絡む審議ではよく北京の海淀法廷が舞台となる。
さて、原告は40歳のブロガー。対して被告は21歳のブロガーだ。原告は被告に対し、ブログの該当記事を削除し、ブログ上で謝罪文を書いた上で「精神損失費」1万元(15万円弱)の賠償を請求している。被告は「既に3回も謝っているじゃないか! いったいいつまで謝る必要があるんだ!?」と法廷で訴えている。ちなみにこのニュースの原文では、40歳のブロガーを「年寄りブロガー(老博客)」と表記してが、中国ではインターネット利用者のほとんどが35歳以下に集中しているため、こうした表現になっていると思われる。
■吉林省にてネットカフェ保険誕生【8月20日】
ネットカフェはネットを利用する場として市民権を得ているが、一般化したネットカフェでのいざというときの災害時にバックアップするため、吉林省ネットカフェ協会では8月よりネットカフェ保険の運用を開始した。保険が適応されるのは近隣での火災や飛行機の墜落などによる外部からの災害で、ネットカフェ内からの発火による火災や、PCなどの機器の故障、窃盗の被害などには適用されない。保険適応額はたとえば外部からの災害で死者が出た場合、被害者の代理人に最高150万円弱(10万元)が支払われる。
■ポータルサイトMOP.comが音楽サービスで著作権違反の疑い【8月21日】
裁判沙汰といえば、こんな事件もあった。中堅のポータルサイト「Mop.com( http://www.mop.com/ )」の運営する音楽サービスが著作権法に違反しているとして、北京の企業「北京泰得互動科技有限公司」がMOP.comに対し、北京泰得互動科技有限公司の運営するサイト「DoFaLa( http://www.dofala.com/ )」内の版権のある曲4曲のデータを許可なく2次使用しているとして、10万元(150万円弱)の賠償を求めた裁判だ。
音楽の著作権侵害については、最近では検索サイト「百度」や「Yahoo!中国」でも訴訟騒ぎが起きている。Mop.comだけでなく、また規模を問わず、多くのポータルサイトのサービスの柱が音楽配信なのだが、日本の音楽も含め、外国の曲も聴けたりするなど、著作権的にグレーなサイトが多いのが現状だ。今後もこうした音楽サービスでの訴訟沙汰は続くと思われる。
■中国産ウィルスで、ネットバンク利用時のトラブル増加【8月22日】
中国のメガバンクはいずれもネットバンクサービスを持っており、特に上海など先進的な都市で徐々に市民に利用されるようになってきている。ところがネットバンクサービスの人気に水をさすようなウィルスが猛威を震っている。
中国産と噂されるウィルス「魔波」こと「Worm.Mocbot.a/Worm.Mocbot.b」だ。これに感染すると、ハッカーのリモートコントロールを許してしまうそうで、これによりネットバンクのユーザーとパスワードのアカウント情報を傍受され、お金がいつのまにやら勝手に振り込んでしまうという事件が後を絶たないそうだ。
そこで別のニュースとなるが、9月1日よりメガバンクのひとつ「中国工商銀行」のネットバンクサービスに「合言葉カード」なるカードが登場する。このカードを使うことによって、動的にパスワードを生成し、ログイン時に生成して記憶したパスワードを自動入力する。逆に合言葉カードを利用しないネットバンク利用者に対しては、合言葉カード利用者よりも1日の利用金額の制限額を少なくしている。
■“自称”中国ナンバー1成人向けサイト運営スタッフを逮捕【8月24日】
成人向けサイトは、政府指定のNGワード付き政治話と並び、中国では禁止されているサイトになるのだが、北京に近い山西省で、成人向けサイト運営スタッフ9人らが地元警察に逮捕されたと地元山西省メディアが報道した。
報道によれば、山西省公安局ネット監理部門は、2005年6月に自称“中国人第一成人向けサイト”の「情色六月天」というサイトを発見した。同サイトのコンテンツをダウンロードするには、日本円に換算しておよそ年間3,000~4,000円を払って会員にならなくてはならないが、この価格は多くの人々に受け入れられ、終身会員として6万円を支払った利用者もいるという。警察はサイト運営者の犯人探しを始めた。
警察は、7月には同じ作者が作ったとおぼしき成人向けの3サイトを発見。合計で60万人以上の会員を集めていたという。捜査の結果、「情色六月天」を含めた計4サイトは同じ組織が作ったものということが判明。調べてみると、4サイトのPVは合計1,164万、会員数は61万人以上にも上ったという。容疑者らは、米国内のサーバーを利用したり、ドメインを次々と替えるなどして、警察の目から逃れ続けてきたのだそうだ。
■改造P2Pソフト使用で、中国での使用者締め出し【8月25日】
中国では、フリーウェアにしろ映像音楽コンテンツにしろダウンロードはP2Pにより行なわれている。様々なファイルを公開するサイトは、最終的には利用者がP2Pソフトを使ってダウンロードする仕掛けとなっているのだ。
さて、中国で人気のP2PソフトにeMuleというものがあるが、eMuleをチューンアップした非公式のソフト「Vagaa」が中国国内で出現した。多くの利用者がこれを使ったことから、本来はeMuleで利用されるはずのサーバーの負担が急増。このため、eMuleを使ってファイルを提供するサイトは、Vagaaの利用を事前に判断し、中国からのVagaaのアクセスを全てはじくようにシステム変更を行なった。
このニュースを報じた中国のニュースサイト「天極网」では、記事の最後で「負荷がかかるサーバーのことも考えて、今後のVagaaの利用は控えるように」と呼びかけている。
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山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2006/09/06)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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