本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまでレポートしていきます。
■グーグル中国、検索市場のシェア奪還へ様々な動き
中国の検索市場において、グーグルは以前は百度と五分五分の勝負をしてきたが、最新の統計では百度とのシェアが開いてしまった。このため、1月はグーグルのシェア奪還のための様々な動きがあった。
グーグルは1月初旬には、まず中国で最も人気のダウンロードサイトの「迅雷」に2,000万ドルを融資し提携関係を結んだ。次に、中国最大の携帯電話キャリアの中国移動(ChinaMobile)のWAP上での検索サービスを提供することを発表。また1月末には、「最も賢い中文サーチエンジンを作る」と公言した。グーグルの中文検索開発のトップは「グーグル中国の100名以上の開発要員のほとんどを中文捜索のクオリティアップに費やしている。グーグルの中国語検索のクオリティは多言語版の4倍は良い」とコメントしている。
また複数の中国メディアで「グーグルがmp3検索サービスの立ち上げを画策している」という報道がなされた。真偽のほどは定かではないが、いくら中国化したサービスとはいえ、立ち上げたとなれば百度の「mp3捜索」サービスと同じように、著作権を無視したサービスとして頻繁に訴訟沙汰になってしまうことは容易に予想できる。利用者を集めるには有効だろうが、リスクも大きい諸刃の剣といえるだろう。
■YouTubeもどきのサイトの淘汰率は90%。コンテンツは違法化【1月5日】
YouTubeは昨年中国でもブレイクし、YouTubeにそっくりな中国語サイトが多数立ち上がった。その数は200弱とも言われているが、そのうちの90%が競争により淘汰されたと中国のメディア数誌が伝えた。淘汰されたサイトの多くが外国の投資など資本が充分に準備できなかったサイトであった。
多くのYouTubeもどきのサイトは生き残りをかけるために、コンテンツは中国政府が好ましくないと指摘しているアダルトコンテンツや暴力的なコンテンツを大量に載せた。中国ではそれらは政府の意向とは異なり人気のコンテンツであり、客寄せができるからである。しかしブログはもとより、ニュースサイトの記事ですら事前の許可なき転載が常態化する中国において、YouTubeもどきのコンテンツもまた、転載に転載が続き、どこのコンテンツも皆同じという状況となり、共倒れとなってしまった。
■反「悪意のあるソフト」連盟、米国をも視野【1月11日】
2006年、勝手にインストールされたり、アンインストールしにくい「悪意のあるソフト(旧名:ならずものソフト)」が槍玉に上がった。反「悪意のあるソフト」連盟は、様々な企業を相手にいくつもの訴訟を起こしたことが話題となり、注目を浴びた。そんな同連盟の代表が「次は米国を戦場にする」と中国のオンラインメディアの21世紀経済報道に対してコメントした。
中国では、これら悪意のあるソフトをインストールするポータルサイトなどを相手取った裁判では、5戦5敗と全敗という結果となった。しかし、米国では州によって悪意のあるソフトに関する法律が制定されていたり、あるいは立法化を検討中であったりする。実際にならずものソフトでの裁判で、ソフトウェアメーカーが利用者に賠償金を払った例がいくつもあるため「(米国の高い裁判費用さえなんとかなれば)勝率は9割以上」と同連盟の代表は息巻く。
21世紀経済報道によると、2週間以内に米国で訴訟を起こすそうだが、訴訟の対象は明らかになっていない。
■バーチャルマネーを盗んだハッカーに有罪【1月13日】
わずか10日の間に、オンラインゲームメーカー1社の提供する7タイトルのゲームのバーチャルマネー1,300元分をハッキングで盗んだとして、内陸の四川省成都市錦江区法院は、容疑者のハッカーに対して禁固8カ月、罰金1,000元、容疑者のノートPC没収の刑を言い渡した。本来はさらに厳罰が下るのだが、初犯であり、罪を認め反省の色もあるため刑罰は軽くなったと裁判官は語った。
今回被害に遭った成都でオンラインゲームを運営する企業は4月から同社のゲームにおいて何度もバーチャルマネーが盗まれていることに気づき、警察に通報。成都のオンライン担当の警察が調べたところ、容疑者を発見、4月21日に御用となった。
■セキュリティソフトベンダー、地震で海外企業が弱ったところに大攻勢【1月20日】
2006年末の台湾南海地震での海底ケーブル切断により、海外にサーバーを置くセキュリティソフトベンダーのセキュリティソフトはソフトのアップデートができなくなり、利用者が中国産ソフトウェアベンダーに駆け込んでいるようだ。
中国ベンダーのキングソフト(中国語名:金山)、瑞星、江民のサポートセンターへ、シマンテックなど海外ベンダーの利用者がサポートを求める動きも見られた。地震の数日後、ここぞとばかりに中国ベンダーは1カ月無料お試しキャンペーンを打ち出し、海外ベンダーのソフト利用者の囲い込みに動いた。
一方、中国国外のセキュリティソフトベンダーでは、比較的人気のカスペルスキーも中国国外にサーバーを設置していた。このため、海底ケーブル切断の際は、ユーザーが定義ファイルのアップデートができないという状況に直面、急ぎ中国国内にサーバーを設置するという対策を発表した。
1月20日に発表された中国のオンラインリサーチメディアの中関村在線のセキュリティソフトベンダー人気ランキングによると、1位が中国ベンダーの瑞星科技(27.5%)、以下シマンテック(27.5%)、カスペルスキー(16.5%)と続いた。日本にも進出しているキングソフト(3.5%)は6番人気となった。
■淘宝網、オンラインゲームの発展がためRMT容認を継続【1月23日】
オンラインゲーム上のバーチャルマネーや装備やアイテムなどを現金で売買するというリアルマネートレード(以下RMT)について、中国では最近になって論議の対象となることが多くなった。1月には、オンラインショッピングサイトでの扱いについて話題となった。
中国で最も人気のC2Cオンラインショッピングサイトを運営する淘宝網は、「中国では米国や韓国ほどRMTが発達しておらず、RMTを禁止する法律はない。RMTに対しての法律が決まったら、我々もそれに従う」と取材したオンラインメディアの天極網に対してコメントした。
一方でC2Cオンラインショッピングサイトを世界で展開し、中国では淘宝網の次の位置に甘んじているeBayは、淘宝網と正反対のRMTを容認しない発言をしている。淘宝網は天極網の取材に対し「RMTは利用者同士のトラブルが起きたときに仮想の世界のモノだけに、現実に存在するモノの販売よりも対処が面倒だからなのではないか」とコメントしている。
■中国では珍しいポイントサイトスタート。換金できるからか、立ち上げから大人気【1月27日】
広告ムービーを見るとポイントが貯まり、ポイントが一定数貯まれば換金できるという日本ではよくあるシステムのポイントサイトが中国でも立ち上がり、開始から1カ月もたたずに30万人の会員を抱え込むことに成功したと、中国のメディア財経時報は伝えた。ポイントサイトの名は「頂網」といい、同サイトではおよそ30秒の広告を見るたびに100ポイントを取得し、1,000ポイント貯まると現金7元(100円強)相当となり、50元以上のポイントが貯まると現金との交換ができる。
当記事のはじめに、YouTubeもどきのサイトが多数淘汰され、投稿動画に広告ムービーを付帯させるビジネスに陰りが見え始めたが、このようなポイントシステムを利用する動画広告の出現で、新たな広告システムが中国に普及するかもしれない。一方で類似サイトが立ち上がれば、YouTubeもどき市場と同じ運命となるかもしれない。
■マイクロソフトが上海にMSN研究開発センターを設立へ【1月31日】
中国のオンラインメディア天極網によると、マイクロソフトは2,000万元を投資して上海にMSNのオンラインサービスに関する研究開発センターを設立することが、関係者の話で明らかになったと伝えた。同社の同様のR&Dセンターは米国外では初となる。
現在のところその目的は定かではないが、中国ではMSNのサービスは、チャットソフトのMSN Messenger、ポータルサイトのMSN中国、フリーメールのHotmailいずれも中国の同業者のサービスの後塵を拝している。研究開発により、人口超大国の中国で多くの支持を得るためサービスを中国人向けに手直しするかもしれないし、また台湾南海地震で海底ケーブルが断線し、MSNのサービスが利用できなくなったことを反省し、中国にMSNの各サービスを提供するためのサーバーを置くのかもしれない。
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山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2007/02/13)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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