本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまでレポートしていきます。
■「キラーソフトQQ、Windows Vista非対応」に話題が集まる
中国でも1月30日より正規版Windows Vistaの発売が開始されたが、中国でのPC普及の牽引役となったインスタントメッセンジャー(以下IM)「QQ」がWindows Vistaで利用できないことが話題となった。Windows VistaのRC版が出回った時点ですでに話題となっていたが、製品版が発売されてもなおQQが利用できず、中国のネットユーザーはMicrosoftに怒りの矛先を向けている。もちろん、QQに限らずWindows VistaとWindows XPはOSカーネルから別物なので、QQがWindows Vista対応の製品をリリースしない限りこの問題は解決しないのだが、中国のネットユーザーだけでなく、中国のIT系WebメディアまでがMicrosoftを敵視するような記事を書いている。
あるWebサイトの調査によると、Windows VistaにQQが対応していないことについて「Windows VistaリリースでQQが利用できないうちにMSN Live Messengerのシェア奪還することが目的」とする内容の回答が回答全体の71%にも及んだ。
Microsoftは「それは(QQのベンダーである)騰訊の問題」とコメント。騰訊は、IMのQQ、そしてQQインストール時に同時インストールされるタブブラウザのTencentTraveler(略称TT)について2月中にWindows Vista対応版をリリースすると発表したことで、騒ぎは収束しつつあるようだ。
■ライセンス無視のオンラインゲーム事業に1億元の賠償請求【2月2日】
神州奥美網絡有限公司(以下神州奥美)が、上海浩方在線信息技術有限公司(以下上海浩方)に対し、オンラインゲームメーカーのBlizzard Entertainmentからライセンスを与えられていないゲームサーバーを中国各地で立ち上げ運営しているとして、上海の浦東知識産権庭に提訴した。上海浩方は中国のオンラインゲームパブリッシャーの雄「上海盛大」の関連企業。
訴えられた上海浩方はStarCraftやCounter-StrikeやWarCraft3などのゲームを運営し、6,200万人ものユーザーを得て、その結果神州奥美は1億2,000万元(18億円強)の損害が出たという。そこで神州奥美は上海浩方に運営中のサーバーを撤収させ、公開で謝罪するとともに1億元(15億円強)の損害賠償を行なうよう求めた。
上海浩方が訴えられると、すぐに上海盛大は神州奥美に対し名誉毀損で逆に提訴した。
■お祈りパンダウイルスの作者、捕まる【2月3日】
感染すると、焼香するパンダのアイコンに変わる「熊猫焼香(日本名はお祈りパンダ)」ウイルスが2006年末から猛威を奮い、中国で人気のインスタントメッセンジャーソフトQQを通して100万以上のPCに感染する大騒ぎとなったが、このお祈りパンダウイルスの作者が2月3日に逮捕された。また同時にそのウイルスの亜種を作成し配布した4人も逮捕された。犯人の湖北省武漢市の男性は希望するIT系企業に就職できなかったことへのうさばらしで作成したという。
後日獄中から熊猫焼香ウイルスを消去するワクチンプログラムを容疑者は作成。大手ポータルサイトにそのプログラムが配布された。
逮捕後、容疑者の「ウイルス開発後、業者から声がかかってウイルスを買ってくれた」というコメントから、ウイルスをばらまく業者の存在が明るみに。中国メディアはウイルス散布業者の存在に警鐘を鳴らした。
逮捕されるまでは、偽の容疑者が容疑を自白するコメントを書き込んだり、ウイルス作者発見に懸賞金10万元がかけられるなど毎日のようにIT系ネットメディアに話題が出た。
■中国各地でゲームのチートで実刑判決が下る【1月30日、2月10日】
チートプログラム(チート=不正な操作を行なう)にまつわる著作権侵害の裁判の判決が1月30日に行なわれた。中国でこの問題に関する法的判断が下されるのはこれが初めて。広東省深セン市南山法院は、チートプログラムを販売した5人に対して、主犯格に1年6カ月、残り4人に1年1カ月の実刑判決を下した。
対象となったゲームは、深センに本社がありチャットソフトのQQで知られる騰訊が2005年にリリースした「QQ幻想」。リリースして間もなく騰訊はチートプログラムの存在に気づき、深セン警察に通報。2006年1月27日に犯人は御用となった。
また2月10日には、オンラインゲーム「伝奇3G」のチートサーバー2台を公開し、それを利用するためのプリペイドカードを販売し不法所得したとする中国人3人に、北京市海淀区人民法院は「著作権を侵害し、不法にインターネット上で出版活動を行なった」として、主犯格に罰金5万元、懲役2年6カ月の実刑判決を下した。
問題のプリペイドカードは1カ月10元、半年50元、1年80元、無期限100元という価格設定で281万元、日本円にして4,350万円以上もの収益を得たという。
中国に溢れるチートプログラムや前に紹介した承認なきゲームサーバー、それにバーチャルマネーといったオンラインゲームに絡む問題に対して、国家新聞出版総書や中国信息産業部や国家工商行政管理総局、国家版権局などが制定した「関于開展対"私服"、"外挂"専項治理的通知(承認なきゲームサーバーやチートプログラムの処理についての通知)」に記されている。ちなみに上記の中国語で書かれた"私服"とは承認なきゲームサーバー、“外挂”とはチートプログラムのことを意味する。
ある統計によると、中国のゲーム利用者の6割以上がチートプログラムを利用して遊んでいるという。
■人気チャットソフトの非公認の互換ソフト開発企業に罰金刑【2月6日】
中国の人気インスタントメッセンジャー(以下IM)「QQ」のサーバーに無断でアクセスし、QQのIDも利用できるという、QQ互換のIMを開発したPICAに対し、北京市第一中級人民法院は「正当でない競争」を理由に200万元をQQの開発元の騰訊に支払うよう命じた。
騰訊が請求していた賠償額は500万元だったが、裁判所は情状を酌量して200万元の罰金とした。情状酌量の具体的な理由について、法廷では語られることはなかった。PICAはQQの著作権侵害そのものを否定する立場を取り、200万元の罰金を不服として上告する見込みだ。
■出会いサイトで知り合ったカップルの合同結婚式【2月12日】
中国にも出会いサイトは多数ある。ある出会いサイトで知り合った13のカップルが上海のホテルで合同で挙式を挙げたと、中国のメディア上海青年報は伝えた。13のカップルは総じて知り合ってから3カ月から6カ月でゴールインしたという。
多くの女性が上海人で、男性は上海以外に住む。男性陣はこのために遠路はるばる鉄道やバスで何時間も何十時間も時間をかけ上海にやってきて挙式を済まし、それを済ませると仕事があるため故郷に戻るバスや鉄道に再び乗り込んだ。
上海青年報の記者による独自アンケートによるとネット利用者の6割が、記事のような結婚は危険で受け入れられないと回答している。結婚紹介所で心理分析を行なう専門家によると、結婚まで辿り着く可能性は3割程度だという。
■春節に学生がゴールドファーマー志願【2月21日】
春節(旧正月)というと、故郷に戻り親戚が一同に会するのが通例となっているが、一部の在学中の学生が大型連休の春節の間、依頼された他人のオンラインゲームのキャラクターを成長させる仕事、いわゆるゴールドファーマーとなっていると中国メディアの北京青年報は伝えた。
北京青年報では、一時的にゴールドファーマーとなって稼ぐ大学生のインタビュー記事を掲載していた。その大学生によると、「仕事をくれる人の大多数は高給取りのサラリーマンで、春節の間は会社を休むので代わりにやってほしい、と依頼がくる」そうである。彼は春節の1週間に200~300元(約3000円~4,500円)を得た。
また、この北京青年報の取材で、北京市のネットカフェでは兼業でゴールドファーマーの“農地”を提供していることがわかった。月給は最低500元。さらに食事と住む場所を提供する。誰もが故郷に帰るはずの春節に働けば、給与は10%アップとなるそうだ。
■オンラインショッピングサイトで販売される目に見えないあれこれ【2月22日】
中国のオンラインショッピングサイト、とりわけ最大手の淘宝網では、ネット個人商がモノ以外にも、情報や、代理サービス、翻訳など様々なサービスを販売しているが、中国のメディア京華時報は同誌記者が発見した「口実」を販売する店を紹介した。
言い訳を販売する店では「生活上の口実」「約束の口実」「プロポーズの口実」など様々な商品が販売されている。価格は言い訳によって違う。同誌記者が商品のひとつを購入し「友達から金を借りたい」と売主にメールで相談すると、それからしばらくして同誌記者に最適な口実がメールで送られてきたそうだ。
バレンタインデー前には淘宝網で、彼女のいない男性向けに彼女貸し出しサービスも複数出品された。バレンタインが過ぎた2月末の時点でも同サービス出品者を確認することができる。ある出品者のページでは、「値段は100元(1,500円強)より。新品。販売個数は1,000個。配送は普通郵便で10元、EMSで20元」と定型フォームに書かれている。
■ネット賭博禁止のお触れでQQのRMTも事実上禁止に【2月26日】
中国公安部、同文化部、同信息産業部、同新聞出版総署がネット賭博を禁止する通達を行なった。人気チャットソフトのQQで使われるバーチャルマネーQQ幣と、現金との交換(RMT:リアルマネートレード)が事実上禁止になった。
というのもQQのアカウントで利用する麻雀などのオンラインテーブルゲームは、QQ幣とは別のゲーム専用バーチャルマネーを使い遊ぶシステムではあるが、1 QQ幣で10,000ゲーム用バーチャルマネーに交換できるシステムとなっている。そしてQQ幣と現金のRMTができる以上、結果的にゲーム用バーチャルマネーもQQ幣を介して現金に交換できるシステムとなってしまっている。QQの開発元の騰訊は「国家の決定したルールに従う」とコメントし、今回の政府の通達に追随する考えを表明した。
この日、香港株式市場に上場しているQQの開発元の騰訊の株価が約7%急落した。
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山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2007/03/05)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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