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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
2007年3月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまでレポートしていきます。

 なお、本連載中ではとくに断り書きがない場合、リンク先は中文サイトとなります。ご注意ください。


中国独自の無線LAN規格「WAPI」製品が多数リリース予定【3月6日】

 既存の無線LAN規格に中国独自のセキュリティ技術を組み込んだ、中国無線LAN規格の「WAPI」。このWAPI普及促進のため設立された「WAPI産業連盟」が3月6日に設立1周年を迎えた。設立1周年に合わせた形で、WAPI産業連盟のオフィシャルサイトでは、2007年にWAPI製品が多数リリースされるというプレスリリースが発表された。

 WAPIの無線LAN拡張機器、WAPIを利用したシステム、ソフトウェアなども含めて全部で30あまりのWAPI製品がリリースされる。たとえば、レノボの中国専用モデルうち大企業向けのビジネスノート「昭陽」シリーズでは、全製品にWAPIが組み込まれるという(現状昭陽シリーズでWAPIを搭載したモデルはない)。ちなみに、現在WAPIが搭載されているのは、ソニーのVAIOノートシリーズの一部モデルのみだ。

 WAPIは、2003年に中国政府が制定した中国独自仕様の無線LANセキュリティ規格で、Wi-Fiとは互換性がない。中国は、2004年にはWi-fiなどWAPIに準拠しない無線LANを搭載した製品について中国内での販売禁止措置を取るなどの強攻策を行なおうとしたが、インテルをはじめとした米国メーカーの強い反発を受けて未遂に終わった。

 また、ISOにおけるIEEE-802.11互換の無線LAN国際規格制定作業において、中国はセキュリティ規格としてWAPIを盛り込む修正案を申請。2006年にIEEE-802.11iと同時にISO加盟国による第1回投票が行なわれたが、賛成票多数だったIEEE-802.11iに対して、WAPIは反対票多数という結果となった。ISOを舞台とした国際無線LANセキュリティ標準をめぐる米中対決の第1ラウンドでは、大差で敗退した格好だ。



ユニバーサル、ワーナーなどレーベル11社、Yahoo中国を提訴【3月6日】

 ユニバーサル、ワーナー、EMI、SONY BMGとその関連会社のレーベル11社は、Yahoo中国が無断で音楽コンテンツを配信したとして、Yahoo中国の親会社であるB2Bサイトを運営するアリババ(阿里巴巴)を相手に該当サービスの停止と550万元(約8,300万円)の損害賠償請求を起こした。

 今回訴えたレーベル11社によると、2006年4月よりYahoo中国において、レーベル11社が権利を有する中国語と英語の229の音楽を無断で視聴サービスやダウンロードサービスで提供、歌詞や着信メロディも無断で公開した。11社は、これらの無断公開により被った経済的損失の賠償を求め提訴したもの。


CNNIC、CNドメイン1元登録キャンペーンを期間限定で開催【3月9日】

 CNNIC(China Internet Network Information Center、中国互換網絡信息中心)は、中国信息産業部、国務院、中国科学院などからの支持了解を得て、CNドメインの取得費用を初年度に関して1元(15円強)だけとするキャンペーンを実施した。

 対象となるドメインは「.cn」「.com.cn」「.net.cn」「.org.cn」「bj.cn」「sh.cn」などで、北京IDC網のサイトで取得できる。同サイトでも大々的に1元キャンペーンを宣伝している。キャンペーンは5月31日まで。

 現在、CNドメインはおよそ180万で世界第4位。中国の専門家は、このキャンペーンをきっかけにしてドメイン数で世界の3強に踊り出ようとしていると分析する。また中国のリサーチ会社「iReserch」は2007年初頭にドメインに関する調査を発表したが、2006年のドメイン市場規模は4億1,000万元(約62億円)で、今後2007年には5億4,000万元(約82億円)、2008年には7億2,000万元(約110億円)、2009年には9億4,000万元(約145億円)と毎年130%を超える高い成長を予測している。


出会い系サイトと公安部が協力、誠実な出会い系サイトを構築【3月12日】

 中国で著名な出会い系サイトが、中国初の中国公安部と提携した“誠実な”出会い系サイトに生まれ変わる。この出会い系サイトは中国公安部の提供する中国人民が登録されたデータベースを利用した身分確認システムで、ユーザー情報が正しいかどうかを確認する。

 従来の出会いサイトは身分証明書、学歴証明書をファックスで送るシステムを採用していた。このため、これら書類を偽造し身分を偽る利用者が少なからずいた。公安部との提携により、身分の偽装ができないシステムであることから、中国メディアはこのサイトを“誠実”と形容している。


4カ月で800億円弱を仲介した賭博代理サイトに有罪判決【3月13日】

 2005年8月に開設された違法な中国大陸外の賭博サイトの利用を代理で行なうサイトが、開設後わずか4カ月間に52億5,000万元強(約800億円弱)を動かし、その後管理人ら6人が逮捕され、この日裁判所により判決が下された。

 上海盧湾法院はこのサイトの元管理人ら6人に対し、主犯格に懲役7年、罰金600万元(9,000万円強)の支払いを、その他の5人に懲役4年6カ月から1年、罰金100万元(1,500万円強)から2万元(30万円強)を支払うように命じた。800億にも上る巨額の金が動いた事件というのは中国では今まで例がないという。


中国国家版権局ら、海賊版問題でP2Pプラットフォームにもメス【3月17日】

 中国国家版権局や中国国家新聞出版総署などが、年内にもP2Pプラットフォーム上で流通する海賊版コンテンツやアダルトコンテンツなど問題のあるコンテンツについて取り締まることを宣言した。

 中国ではP2Pというと、ダウンロード専門サイトにおいて、Webブラウザで目的のファイルを探し、ダウンロードには専用ソフトを立ち上げP2Pを利用するという形態が一般的だ。この点で、専用ソフトだけで全てをこなすWinMXやWinnyとは異なる。そうした中国的形態の著名なP2PダウンロードポータルサイトはAlexaでベスト100に入る人気で、そうしたダウンロードポータルの1つ「迅雷」は、最近google中国と提携関係を結んだ。しかし、これらダウンロードポータルサイトでは、実際に様々な海賊版ソフトなどが多数アップされている。

 中国メディアは、この政府による取り締まり宣言をニュースで紹介するとともに、海賊版コンテンツの取得方法が海賊版CD販売店の店頭からP2Pダウンロードポータルサイトに利用を移行しているという市民の声を紹介した。P2Pダウンロードポータルのコンテンツ摘発により、海賊版コンテンツの流通量が減るのか、また一般市民の知的所有権についての意識の底上げとなるのか、結果が待たれるところだ。


中国のネットゲーム依存症の青少年は403万人に【3月19日】

 中国における未成年者のインターネット利用者は2,356万人。うち403万人がネットゲームなどに熱中し引きこもりとなっている、いわゆる「ネットゲーム依存症」であることが統計調査で明らかになった。現在、中国ではネットゲーム依存症が社会問題となっている。その対策の一環として、中国青少年ネットワーク協会心理発展研究院が中国全土の都市を巡り講演を行なうなどしているのだが、この問題はまだまだ解決する様相を見せない。


オンラインゲームベンダー社員、アイテム作成と売買で実刑【3月27日】

 中国オンラインゲームベンダーの雄「盛大(Shanda)」の社員が、同社の人気ゲーム「伝奇」において、1万元(15万円強)近い高価な価格でRMT(リアルマネートレード)されるアイテムや武器を大量生産し、わずか11カ月の間に200万元以上(3,000万円以上)を不法に得たとして、裁判所の上海市浦東新区法院が同社社員3人に対し、最高5年の実刑判決を下した。

 主犯格の同社社員は、同社のゲーム管理センター運営部副経理という肩書きを持つ。ゲームデータに触れられる仕事上の権利を濫用してデータを改竄、レアアイテムを大量生産したという。裁判所の判決では、データを改竄したとした著作権侵害ではなく、職務濫用の罪で有罪判決を下した。

 主犯格の同社社員はこの判決を不満とし上告する予定だという。


チャットが人気の中国でチャット記録が証明書類に認定【3月29日】

 中国産インスタントメッセンジャー(IM)のQQをはじめとしてMSN Messengerなど中国ではIMが人気だ。このIM人気を受けて、中国商務部はオンラインショッピングでの取引で利用したIMのログを証明書類として認定することを「ネット上の交易についての指導意見」で規定した。

 中国においてオンラインショッピングは近年急激に沿岸部大都市圏を中心に普及してきており、商人の国といわれる中国で、青年層を中心に多くの人々が個人商となり、本業で働く傍ら、副業でオンラインショッピングサイトに個人商として店を出している。ますます利用が増加するに連れて取引時のトラブルも増大した。その結果、被害者救済策として、取引において使用したIMのログを証明書類として認める規定の発布に至ったというもの。


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  http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
  中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
  ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html

(2007/04/06)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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